We observed the facilities ~会議内容を整理しよう~
刺激があるから人生は楽しい…そうだろ?
【黒木勇斗語録・デビルメイクライ ダンテ】
「本日の会議はこれにて終了。みなさんおつかれさまでしたー」
「「「おつかれさまでしたー!」」」
『ああでもない』『こうでもないと』議題を鍋にぶっこみ煮込みに煮込んで三時間。
ほどよく煮詰まった内容をひとまとめにして、第一回ダンジョン開発会議は無事に閉幕した。
主だった決定事項は以下の通り。
◆ ダンジョンは平和な世の中で仕事にあぶれた冒険者に夢と生きがいを与える娯楽施設とする。
◆ 娯楽である以上、なるべくだけガチは避けて冒険者たちの最低限の安全面を考慮する。
冒険者が致死ダメージを受けた場合は安全装置を作動させ、ダンジョンからの強制排出を行う予定。
その場合、戦利品没収や一定期間再挑戦不可など冒険者側になんらかのペナルティーを負わせる。
ダンジョンで問題視されている蘇生屋の金銭トラブル回避。悪徳僧侶の対策として有効。
◆ ダンジョン侵入における滞在期間の設定。
冒険者の探索中の遭難や野盗による根城化を避けるため、ダンジョンに一定の時間制限を設ける。
侵入から一定期間が経過した場合、ダンジョンからの強制退出を発動させ対象を入り口に戻すこと。
ダンジョンの緊急メンテナンス時はダンジョン内すべての冒険者に強制退出を適用可能。
◆ オープン時、初期に解放するダンジョンは四つとする。
チュートリアル用のダンジョンひとつ、ラストダンジョンに侵入するための試練として複数の迷宮を用意。
ラストダンジョンとなる『迷魔城』は今後のメンテナンスで解放予定。LPの都合で今回は封印状態。
各ダンジョンをクリアすると報酬としてクリアシンボルを設定。複数集めると魔城に突入可にする予定。
新エリアを解放するシンボルは冒険者カードへ記載予定のため後日にギルドのリップルと打ち合わせ。
他、各ダンジョンのクリア報酬として粗品を進呈。
◆ モンスター・宝箱・トラップの設置などについては後日の会議で議論。
と、会議で決定した基本設定はだいたいこんなカンジ。
チュートリアル用のダンジョンは会議終盤に「ある程度のふるいおとししたほうがよくね?」というタマの 要望により急遽、複数のダンジョン攻略前の練習用ダンジョンとして設置することになった。
エリア自体はそこまで広くせず、迷いの森エリアをダンジョンに流用することでLPを節約。
まずここをクリアしないと新エリアの魔城城下町にはいけないというシナリオで設定した。
クリアしたら迷いの森から魔城城下町に転移し本編開始。今後はいちいち迷いの森を経由しなくてもいいように、フォートリアから直接ここにワープできるような移送施設を用意し、足回りの不満を出さないようにしとく。
タマとしては魔城近辺に作る予定の拠点に冒険者を一極集中させるより、自分ところの街の酒場や宿屋に冒険者を流したい思惑があるようだ。その意見についてはボクも賛成である。
なにせ城下町はまだ未設定。酒場と宿屋と行商広場の設置を考えているけど、オープンからやってくるであろう冒険者全てをカバーできるとは思えない。なるべくなら施設が整っているフォートリアの街を拠点のメインとしたい。
そうしたほうがあっちの観光資源も潤うからね。
ちゃんと協賛相手も儲かるWINWINの関係こそ理想。
死亡者ゼロのダンジョンというコンセプトはミルに快く受け入れてもらえた。
魔王のお遊びと言うと聞こえは悪くなるけど、テーマパークに徹することで平和的に冒険を楽しめるのは強みだ。
まだ魔王軍との戦いの爪痕が残っている現在、あんまりガチなダンジョンは王都に目をつけられかねないので、あくまでもコレはお遊びですよーという空気を前面に出してカモフラージュしたい思惑もある。
あんまり本気シリアス傾向でやると王都を刺激して近隣諸国から軍隊送られかねないからね。
あと蘇生屋、これも居座られるとウザイから商売あがったりにさせる。
前におにぎりが戦闘不能になったとき、めちゃくちゃにぼったくられたあげくに回復失敗して逃げられた恨みは忘れん。
ダンジョンの滞在に時間制限を設けたのは営業時間を厳守したいから。これに尽きる。
さすがに24時間戦えますかとボスルームにずっと待機とかやってられねぇっす。
初期設定のダンジョンはそんなに広くない。各階層に設置したショートカットをすべて解放しておけば、のんびりキャンプしない限り滞在時間半日でゴールできるように設計してある。
だから営業時間が終了したら自動的に全冒険者がダンジョンから排出されるように設定をしてもらった。
まともに行くと無理だけど、ちょっとずつ攻略を進めると走破タイムを縮められるというのは冒険心を煽る。
短時間プレイでも何度も挑戦したいと思わせる工夫。
これもダンジョンものでは必要な要素だ。
あと悪党の巣作り対策。
ダンジョンで怖いのはモンスターだけじゃない。スネにキズもつ輩が拠点を作って冒険者狩りをするケースもある。
ダンジョン経営者からすれば自前の迷宮を悪党の溜まり場や闇取引の現場にされては困るので、営業時間の設定は一種のセキュリティみたいなものだ。トラップにハマって遭難した冒険者の餓死対策にもなるからね。
複数のダンジョンに関しては、当初の予定通りに魔城の封印を開放するキーアイテムの獲得エリアの方針で行く。
このエリアをクリアすればラストダンジョンに突入する資格を得られるわけだ。
もちろんそう簡単にはクリアはさせない。オープンからしばらくは中層で詰まってもらう予定だ。
個々のダンジョンの基本コンセプトは以下の通り。
●ダンジョンA 設計担当者・ユート
全五階層の中規模スタンダード型。
二層までは初心者向け。三層から一気に難易度上昇。最下層にボス設置。
モンスター傾向、お宝配置、迷宮構造すべてバランス型の王道エリア。
●ダンジョンB 設計担当者・タマ
全一層の広範囲フィールドタイプ。
最初の町に繋がるチュートリアル用に設計。ここでダンジョンの基本を学ぶ。
練習ルートクリア後は、初心者お断りな安心と信頼のマジぶっころダンジョンルートを開放。
一方通行・テレポーター・ダークゾーン・回転床・ダメージ床・謎解き・罠罠罠!
いやらしい……(原文ママ)
●ダンジョンC 設計担当者・エスト
立体型タワー式全十階層。なんということでしょう!
回廊を減らしてボス部屋のみにすることでLPを大幅節約。
死亡遊戯方式で少年漫画のお約束を再現する匠の技が光ります。
各階層にボスキャラを設置して全滅させたらクリアのルームガーター制。
●ダンジョンD 担当設計者・ミル
地下階全七階層(B6とは別にボス部屋として地上階を1F設置)。
地下二階・地下四階・地下六階にそれぞれエリアボスを配置。
エリアボス攻略後に大ボスの待つ地上一階大扉の隠しルートを開放します。
トラップ・モンスター・謎解きに全対応。あまり難しくせず初心者でもそこそこに行けるよう設計。
このダンジョンのみエレベーターが設置されているので、それを生かせればいいなと考えています。
きのこたけのこ論争しかり、ショートケーキのイチゴ真っ先派ととっとく派しかり、こういうのは共同で設計をしようとすると絶対に揉めるので一人1ダンジョンを担当してもらうことになりました。
……実際、どのダンジョンを担当するかでいきなりエストと塔の奪い合いの喧嘩になったもんなぁ。
くっ、あのときグーを出していれば!!!
それにしても、こうしてあがった構想の内容を見ると、おもいっくそ個々のデザインに設計者の性格が出ますね。
ボクとミルちゃんは王道派、ただし中盤から急に難しくなる咬み応え重視派とのんびり楽しめる派の性格の差が明確。
タマもうアレだね。いかにしてトラップにハメて冒険者を苦しませるかのサツイが顕著でS気マンマン。
エストは分かりやすく各層ボス配置の単純明快構想。死亡遊戯形式はやっぱりロマンがあるよね。
もちろん簡単にはクリアさせないだろうから、なにかしら仕掛けを用意すると思われる。
本日まとめた会議の結果は以上。迷姫王のダンジョンオープン予定日まで残り半月。
ダンジョンの基本構想は出来上がったので、次はリップルたち冒険者ギルドとどうやっていくか考えないとなぁ。
実はコレがけっこうタイヘンだったりするのである。