Deep wood dungeon.s ~続・メイプル村の怪異6~
豪華なHNMLS→装備が充実→心が豊かなので性格も良い→彼女ができる
せこいLS→装備が雑魚→心が狭く顔にまででてくる→いくえ不明
【黒木勇斗語録・FINAL FANTASY11 ブロント】
私生活でも冒険中でも食事のひとときは尊い。
このときだけは辛い現実と危険な現状をささやかながら忘れられる。
ハラが減っては戦はできぬ。冒険は腹に力を込め英気を養ってこそだ。
「おいらの最期の晩餐がゴブリンの糞汁とかシャレんなんねーからな」
そんな食事中も警戒を絶やさないチックは完全に職業病。
彼はこれでいい。憎まれ口をたたきながら油断するなと構えてる。
当然といえば当然。ここは人面樹の森のど真ん中。
迷宮結界『魔宮』の探索は怪物の胃袋の中をウロつくようなもの。
安全地帯なんて言っても何処まで信頼できたものか。
この危機的状況で食事でまったりしてんなというチックの言い分は正しい。
「う~ん、いのひひなへおいひい」
でも不思議と引っ張られちゃうのである。
満面の笑顔でアツアツの鍋をつつき、合間にパンを頬張る勇者様のノリに。
もりそばは昔からこうだ。いつだって余裕綽々のマイペース。
「こんなときでも平然とメシ食ってってすげーなおい」
状況が状況で食欲のわかないチックとは対照的な食べっぷり。
しかもとんでもないことに彼女は僕たちよりもずっと以前からここにいる。
普通の冒険者なら敵陣のど真ん中で封殺されたら数日で頭がイカれる。
「もりそばはいつから『ここ』にいるんだい?」
「んー? だいたい十日ぐらい?」
普通の冒険者ならこう考える。
常に死と隣り合わせの状況下でのコレは危機感のなさからくるものか。
こんなところいつでも脱出できるという実力ゆえの余裕からか。
しかし正解は。
「よく正気でいられるねまったく」
「別に。こういうの慣れてるから」
鍋の中身がそろそろなくなりかけてきた頃。
「疑問なんだけどよ、もりそばはなんでここにいたんだ?」
ゴブリンの糞汁との蔑称があるミソスープにおっかなびっくりしながら、器用に豆と猪肉だけ取り出して口にしながらチックが当然の疑問を口にした。
「んー? メイプル大森林の害獣駆除と調査のクエストでこうなった」
「おいらたちと同じ遭難かよ」
「そーなんです」
しぃん……
「ゴブリンの糞汁、慣れてくるとたしかに珍味だな」
「でしょ? 原料は豆料理定番の修道女の豆なんだし怖がることないのよ」
「とはいえ腐れ豆のスープっていうのはやっぱり抵抗あるもんさね」
「発酵食品にそんなこといってたらチーズも食べられないって」
もりそばのシケギャグを見て見ぬふりをする情けがマウスリバー探検隊にも存在した。