Past and Present "Brave Heart" ~熱血勇者~
世界は救われる、彼女を失えば
【黒木勇斗語録・テイルズオブシンフォニア キャッチコピー】
魔王の朝は早い。
勇者A「これがオレの本気だぁぁぁぁぁっっっ」
邪竜王「残念だが我はその倍は強い」
勇者A「やるな魔王! 実は本当の実力を隠していたんだ」
邪竜王「そうか。我もまだまだ本気ではないのだがな」
勇者A「体に反動がくるが飛躍的にパワーアップするリミットブレイク!」
邪竜王「ならば我も拘束具がわりのオーバーボディをはずすとしよう」
勇者A「うおおおおおおおっっっっ! 秘められた力が覚醒したぁぁ!」
邪竜王「では面白いことを教えてやろう。我まだ変身を二回も残している」
勇者A「オレの先祖は天使で、ピンチになるとその血が先祖返りするんだ!」
邪竜王「魔王空間に引きずりこめぃ! 魔王空間とは一種の……(以下略)」
勇者A「愛する友の輝きが! 倒れるたびくじけるたびオレを強くする!」
邪竜王「よかろう。貴様は我に殺される資格がある。さらばだ死ねィ!」
勇者A「ぐぁああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっっっっ!!!!」
── チュドーーーーーーーーン!!! ──
今日も元気だ勇者がウザい。
おじさまの家にごやっかいになって三日がすぎました。
あの当時、冒険者と魔王軍との戦いは最高潮に達していて。
勇者B「幻術だ!」
邪竜王「いったいいつから我が幻惑をしていないと錯覚していた?」
勇者B「フッ、そいつはわたしの幻影だ」
邪竜王「おろかな、それは幻影の幻影だ」
勇者B「ジャスト三分だ。いい悪夢は見れたかい?」
邪竜王「クククク、おまえは楽しい夢を見ていたのだよ。現実はホラ……」
勇者B「なっ……これは?」
邪竜王「これが真の現実だ勇者Bとやら。我は最初からこの場から一歩も
動かずラーメンを喰っていただけ。つまり貴様は我が生み出した
幻の世界の中で、我の幻と必死に戦っておったのだ……
セーブポイントに戻って、もういちど修行をやりなおしてこい!」
勇者B「ぬわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
── チュゴォォォォォォォォン!!! ──
この三日間で大戦の戦況は大きく変わりました。
まずおじさまがニートの館を襲撃する五時間前。
あの光竜騎士ディーンが三千諸島で海魔王アスピドケロンを撃退。
その勢いに乗るように翌日の昼。
鉄機王アイゼンが森竜神の加護を受けた勇者と一騎打ちの末に敗北。
その二日後。
山岳部で鬼城王シダテル率いるゴーレム軍と冒険者たちの全面戦争勃発。
地竜騎士ガッサーの支援を受け、ある冒険者チームが心臓部へと突入、
そのまま見事にコアを討ち果たすという大偉業を成し遂げたのこと。
たったの三日で七大魔王の三体が死亡という急展開。
前に倒された二体の魔王を足して七大魔王の撃墜カウントは5。
これで残る魔王は邪竜王と蝕星王の二人のみとなりました。
となると、当然にまだ戦果をあげられていない勇者たちは焦るわけで。
勇者C「邪竜王グランスタークよ! これまでの悪行三昧の数々許すまじ!
貴様のその穢れし魂、この超勇者王ヤマダが浄化してくれよう!」
邪竜王「名の語感の悪さもさることながら、自分で超勇者王と名乗るとか」
勇者C「う、うるさい! 悪いか! 先祖が山田っていう異邦人なんだよ!
ええい面倒! オレは光の使途! 邪悪と交わす言葉などない!」
邪竜王「自分からさんざん話しかけてきておいてソレはどうなのか……」
勇者C「クッ、オレの名前は引導代わりだ。迷わず地獄へ落ちるがよい!」
邪竜王「山田なのにか?」
勇者C「山田でなにが悪い! 唸れ! 今宵も我が剣は悪に餓えている!
輝け! オレの超勇者王剣エクスプロイダーオブジャスティス!」
邪竜王「それ、プロレス技と名前かぶってるぞ……」
勇者C「いまここにオレの超勇者道は完成する! 正義の審判は下った!
傲慢の終焉 唄え破滅の聖歌 破壊神の鉄槌はここに降りる!
右手に混沌 左手に秩序 罪は重く 汝は逆さ磔に処せられる!
粛清せよ! 我は悪を灰燼に帰す永劫に流転せし浄化の煉獄!
我は第九天の刃 刹那の無限 それすなわち光神の意思也……」
邪竜王「一生懸命考えたっぽい詠唱が痛々しいうえにクソ長い。10点」
── どぉぉおぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉん! ──
勇者C「ウボァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
ただいま邪竜王のラスボス部屋前は勇者パーティーで長蛇の列。
割り込みもしないで、ちゃんと順番を待ってるところが勇者らしい。
勇者D「勇者ヤマダがやられたようだな。やつはわれわれの中でも一番──」
邪竜王「~~~~~~~~~~~~~~~!!!!(憤怒)」
あ、おじさまの地雷踏んで瞬殺だ。はい、次の人どうぞー!
勇者E「食らえ! 日輪の力を借りて! 今必殺の!!!!」
邪竜王「そうら、自分の仕掛けた技で自分が吹っ飛べ!」
3ターンもたず。はい、次のかたー!
勇者F「邪悪なる者よ。貴様の相手は大聖堂第14課密葬機関が──」
邪竜王「そのテのイケメンオサレ系は虫唾が走るから帰れ」
言ってて恥ずかしくないのかなーと思いいつ。はい、次のかたー。
勇者G「負ける訳にはいかないの。永劫回帰に囚われたあの子を救うため、
なんどでもなんどでもなんどでもなんどでも回帰して回帰して──
たとえこの魂が魔女に堕ちようとも、最後の魔法少女として私は」
邪竜王「あー、そういう可愛い絵で釣って内容が欝って萎えるんだわ。
というか魔法少女が悲惨でかわいそうな話って引くんだよねー」
エストおねーちゃんの汚染が行き届いているようでなによりデス。
はい、次のかたー。
勇者H「いくぞみんな合体攻撃だ! ユユユジョョウパウァーーーーッ!」
邪竜王「ええい! つぎから次から次にめんどくさいわー!」
そんなノリで、15パーティーほど全滅させたところで午前の部は終了。
「まったくどいつもこいつも我を残り物の魔王と思って挑戦してきおって。
門番の四天王が全滅して、ドレイクラインの空路がガラあきになったのを
いいことに雑魚勇者がワラワラと、討伐ペースがいつもの十倍ではないか」
さすがの魔王でも冒険者相手の連戦は辛い。
前座の雑魚の露払いで消耗したところで主人公が現れて本番とかもうね。
時間稼ぎで犠牲になった脇役もアレだけど、連戦させられる悪役も大変。
遅刻するバトルものの主人公は悪役と露払いの脇役に土下座すべきかと。
ある魔王は前座との連戦のダメージを回復しないまま勇者に挑んで敗れた。
ある魔王は勇者との前の戦いでおった古傷を敵に狙われて命を散らした。
そして……
「ゴクゴク……ぷはっ。これではエリクサーがいくつあっても足りんわ」
一方、おじさまはバトルごとに完全回復薬をつかった。
「あいてむなんかつかってんじゃねー」
「娘よ、勇者だってボス部屋前で回復作業をするのだからおあいこだぞ」
「ぐうのもでない」
「で、あろう?」
おじさまのそういうセコくて小物なところが自分は好きです。
「でも、たのしそうだね」
「そう見えるか?」
一部始終見てたけど、勇者相手におじさまはノリノリでした。
勇者の語りや演劇に乗ってくれて、付き合いがいいんだなって思います。
その一方で……
「でも、なんかしにいそいでるみたいにもみえる」
「いい慧眼だ。そうだな。ワシはたしかに死に急いでいるのかもしれんよ。
自滅願望を否定せず、偉大な勇者によって滅せられることを望んでいる。
人間の目からすれば退治されたがりの魔王は奇妙に見えるのだろうな」
「ばけものをたおすのはいつだってにんげんだから?」
「その通り。魔王は勇者に倒されるもの。悪竜は英雄に討ち取られるもの。
娘よ、おまえもいつか冒険者の道を目指すのならば知っておくといい。
魔王という存在は、強大でればあるほど、勇者を渇望する孤独者なのだ。
そしていつだって我々は魔を超越する正義に殺されるをの待ち侘びてる」
この人は前向きに破滅に進んでいるんだと悟らざるえなかった。