Adventures status explain ~ギルドなぜなに目安箱・第六回~
そうじゃない。いいか、よく聞きなルーキー。
ゲームを本当に作ってるのは、会社でも上の連中でもない。
俺たちなんだ。
上がどんな無茶を言ってこようと、
それを言い訳に、客につまらねえものを出しちまったら、
そこでオレ達の負けなんだよ。
…オレ達は、しがないゲーム屋さ。
だが、ゲーム屋にはゲーム屋の意地がある。
それがオレ達の心意気なんだ!
…いつかお前にもわかる。
【黒木勇斗語録・セガガガ バルクスタッフ】
>>『第六回・続ステータスもろもろを知ろう』<<
「ギルドなぜなに目安箱も第六回。本日も引き続き能力値のお話っす」
「ただいま戻りました~」
「ミルちゃん、おかえりなさい」
「おかえり。なんかこってり絞られてたわね」
「あぅぅ……楽屋でエスティエルさんに放送ギョーカイの御約束というか
掟というか、放送事故のあれこれについて延々と説教受けました……」
「そのエスティエルさんってなにものなんだ?」
「聖女のセンパイっすよ。聖竜神さま御付きの」
「……それって神都聖神派の教皇様より偉い大天使様のことじゃ……」
「この業界、謎が深すぎるわね……」
「それはそれとして、今回も前回に引き続き冒険者カードの記載事項、
個人能力に関わるステータス値に関しての説明を行いたいと思うっす」
「前回は筋力値と技巧値についての説明だったんだよね。となると次は」
「上から見て知力値と信仰値ね」
「えっと台本……はい、筋力と技巧が前衛にとって重要なステータスなら、
次は後衛クラスにとっての要になる『知力』『信仰』のおはなしです」
「となれば次は『知力』。なら魔道士である自分がメインで説明するわ」
>>『知力値【Intelligence】』<<
「知力値ことINTは、個人の「知力、知識、知性」を表す能力値。
主に学が必要な知識判定や魔法の効果などに影響するステータスよ」
「知力は後衛職版の筋力値って感じだね。教官も頭脳の腕力だっていってた」
「えっと、つまり脳味噌筋肉と呼ばれる方はとても頭がいいんですね!」
「ちがうちがう。むしろおにぎり教官は脳味噌まで筋繊維」
「でも引退してビール職人はじめて成功してるから意外に頭いいのかも。
ほんとに教官っとこの黒ビールってシャレにならないくらい美味いの。
古株は先代マイスター『なれずし』ブランドのほうがコクがあったって
言ってるけど、教官のビールはシュワシュワ度合いが力強くて喉ごしが
ガンってくるっていうの? まさに泡が弾けるパワータイプなカンジ?」
「サラ、なんか知力の話が教官のとこのビールの話になってるんだけど」
「……ごめん……南方に拠点移してからごぶさたで……」
「あー、『ああああ村』のビールなら近いうちに王都のリップルの酒場経由で
ギルド出張所の酒場で取り扱う予定なのでしばらくおまちくださいっす」
「えっ!? 嘘っ!? マジで!?」
「すみません。サラって燃料のことになるといつもこんなんで」
「わかるっす。聖女でもそういう酒に目のない先輩がいるっすから」
「あのぉ、アルコール談義はそこまでにして知力値の説明を……」
「ああっ、いけない。つまるところ知力は魔法使いを筆頭とする魔法や魔術の
使い手にとって、成功率や火力を上げる重要なステータスになるわけなの。
魔法よりも学問を重視する学者系なら知識の広さや深さに関わってくるわ。
あと知力が高いほど魔法スキルの記憶容量も上がっていくのも大事な特性」
「魔法って高位のものほど容量を必要とするんですよね」
「そうなのよ。だから上級の魔法になれなるほど記憶できる数が減るから、
上級職の魔道師も魔術師も属性ごとの魔法の専門特化が推奨されるのよ。
同じクラスでも試用魔法の分野や流派が異なるのもだいたいそれが原因」
「だからサラは火属性特化なんだ」
「記憶容量増加スキルもちで全属性の魔法を操れる賢者のリップル姉ですら
メインは氷属性で他は中位以下の安いコストの魔法にしてるくらいなのよ。
凡俗はそれくらいの属性縛りやっておかないとコスト問題で辛いのよね」
「そうですね~。属性を絞ることで限りある記憶容量内で高コストの同属性
魔法を複数所持するのも有効な手なんですよね。汎用性は薄れますが」
「属性特化ならまだいいほうよ。世の中には爆裂魔法ひとつだけ習得して、
それだけをとことん極める一点魔法特化型なんていうのもいるんだから」
「大戦車巨砲主義ここに極まれりっすね」
「うん、有名なドワーフ戦車のイカレ発明『列車砲』の魔法版だよね」
「いいじゃないの列車砲。爆裂魔法に匹敵する脅威の800ミリ弾の破壊力!
鬼城王攻略時にしか使用されなかったという伝説の超兵器の極大火力を、
いちど生で見てみたかったわ。というか自分の目指す火力はまさにそれ!」
「熱弁っすね」
「熱くもなるわよ。そもそも攻撃魔法職は火力が全てよ。魔術士の絡め手や
技巧を否定するつもりはないけど、やっぱり攻撃魔法は火力が全てなの!
一発の魔法が敵を焼き払い薙ぎ払い、クレーターや焦土を生むこの快感!
その魔法使いの永遠の夢を見事叶えるのが知力値というステータスなのよ」
「ああ、サラのいつもの悪い病気が」
「魔道士が目指す攻撃魔法の火力特化に魔術士のような芸術性はいらないわ。
むしろ火属性魔法は大火球とか火炎竜巻とか単純な構造のほうが栄えるの。
いちいち炎を槍の雨だの不死鳥だのに形成することにコストを割くならば、
無骨だ無粋だといわれようがその分の努力を熱量の増加に注ぎ込むべし。
あ、でも炎の色を蒼くしたり黒くしたりするのはチューニ心を擽るわね」
「すみません。こうなるとサラは止まらないので彼女のマイク切って次へ」
「あっ、はい。それでは次は信仰値のステータス説明に移りますね」
>>『信仰値【Piety】』<<
「はい、では僧侶クラスにとって最重要ステータスとなる信仰値については
火竜神さまの従者である【火焔の聖女】の自分が説明するっす」
「本職ですものね」
「というよりアークプリーストを超える僧侶の究極職なんだよなぁ」
「信仰値ことPIEは世界を生んだ神竜へ対する信仰心を表す数値で、
また同時に神竜の加護をどれだけ受けているかを表す数値になってるっす」
「魔法回避にも関わってくる魔法職にとっての技巧値だね」
「数値が高いほど僧侶スキルの効果や記憶容量は増していくんですよね。
回復魔法の回復量、蘇生魔法の成功率、防護魔法の防護力増加なども比例。
そのあたりは魔法使いクラスの知力値と意味合いは同じですね」
「僧侶スキルは神竜宗派でガラっと使用可能なスキルが変わる傾向なんで、
なおさら差が明確に感じるっすね。うちの火竜信仰は火属性攻撃魔法が
メインなんで、信仰がそのまま魔法使いの知力なみに影響するんすよ」
「ああ、うちのガンナも言ってたなぁ。火竜信徒は回復術に乏しいって。
だからうちはダメージ受ける前に焼けがモットーになっちゃってる」
「回復系は八大神の中で火竜派が一番の苦手分野宗派っすからねぇ~。
その分だけ魔法使い顔負けで火属性攻撃魔法の種類が豊富なんすけどね」
「僧侶系の魔法って白魔法だったり奇跡だったりって名前が安定しないよね」
「宗派によって呼び名が違うことはままあるっすね。神の力をかりる奇跡を
魔法と呼称するのはどうかっていう原理主義的な派閥はつねにいますし。
でも冒険者ギルドではなるべく僧侶系魔法という呼び名で統一してもらえる
よう各宗派に呼びかけてるっすよ。混乱のもとっすからね」
「そもそも魔法という定義自体が不可思議な力の総称みたいなものなので」
「安定した防御支援と回復要員としてパーティーに一人は欲しい僧侶職。
でも冒険者の比率が圧倒的多数のヒューマンが一番信仰値が低いという」
「初期ステータスの信仰値が5ってすごいですよね……」
「それだけ神離れして独立しているという意味合いもあるんすけどね。
おかげで僧侶職になるのに一定の才覚が必要になるジレンマが」
「神話時代から神に近い場にいる魔族や天空人が初期値12のツートップで、
妖精のエルフとドワーフが初期値10。こう見るとヒューマンは辛いですね」
「そこはもうレベルを上げて努力と根性でなんとかするしかないっす」
「しょせん能力値は実力の目安だしね」