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女同士の戦い【弱】

 それで次の目的地についてどうしよう、といった話になる。


「俺はここにくれば何とかなると思っていたけれど、どうにもならなそうだな」

「そうだな。ユニに女の子の恋人が出来るか僕に恋人が出来れば何とかなるんだけれどな」


 結局辿り着く結論はそこなのだ。

 だが逆に言えば彼女を作るだけで全てが解決してしまうのだ。

 そこでフィリアが、変な顔をして、


「下僕、貴方、何で下僕を選んだの?」

「それは三つの中で一番良さそうな物を選んだだけですが」


 あの三択なら確実にそれを選ぶと思うのだ。

 そこで興味を持ったらしいレイトがフィリアに、


「その三択とは?」

「恋人と下僕とペット」


 無言でレイトが俺を見た。

 嫌な予感がする。


「おい……本当に恋人じゃないのか? というか恋人を選らんでおけばいいんじゃないのか? そうすればすべてが解決するし」

「お、俺にだって好みもあるし第一手順が必要だろう!」


 俺がそう言い返すとレイトが淀んだ瞳で俺を見て、


「だから女心が分からないと言われるんだ」

「な、何がだ」

「というか俺に記憶とはつながらないが何処かでユニ達はあっているんじゃないのか?」

「俺には記憶がない……」

「いいから思い出せ。そして恋人になれ。僕のために!」


 微妙に薄情な友人のレイトを睨んでいるとそこでフィリアが、


「ふーん、下僕は随分夢見がちなのね」

「わ、悪いですか?」

「ユニコーンの力って実は魔法的な種族の中では特に強いのよね。だから恋人をって話になるのでしょうけれど」

「うう……」

「まあ、何時でも下僕からクラスチェンジしたくなったら言ってね。可愛がってあげるわ」


 最後に可愛がると付け加えたフィリアが悪そうに笑っているのを見て、俺は嫌な予感を覚える。

 ねっとりとした獲物を味わうような響きがあるのだ。

 言うとおりにするとロクな事にならない気がする。

 俺がそう思っているとそこでレイトが、


「それでフィリアは“神殿”に追われていると聞いたけれど何をしたのですか?」

「さあ、才能がありすぎたのよ」

「そうですね、答えてくれませんよね。

でもうちに直接使者が来たら、ここにお通しするしかないんですよ」

「でも貴族の家だから手順を踏まないといけないし、その間に逃げればいいだけだしね」


 貴族の家であるのもフィリアにとっては、使える材料であったらしい。

 ただ今の話を聞いているとそう簡単にまたここを逃げ出すような羽目にはならなそうである。

 よし、だったらと俺は思って、


「寝ていいですか? 俺、昨日から一睡もしていないんですよ」

「そうなの? 大変ね。私もだけれど……まだ私のほうが余裕がありそうね」

「そうなんですか。レイト、ベッドを借りてもいいか?」

「ああ、じゃあ今後の方針はフィリアと僕とで話し合っておく」

「よろしく」


 眠気には勝てない、そろそろ暖かい布団で……そう俺が思っているとそこで、ドアが二回叩かれる。

 フィリアがハッとしたようにそのドアを見た。同時に、


「下僕、そして下僕その2、今すぐ逃げられるよう準備を」


 焦ったように小さく告げる。

 気付いたらレイトも下僕にされていたのはいいとして。

 レイトは急いで何かを集めた茶色い袋を手に取る。


 そこで部屋のドアが開かれた。


「来ちゃった、フィリアちゃん♪」


 一人の可愛らしい少女が姿を現したのだった。











 現れた彼女は、ふわふわとしたパステルカラーの緑がかった短い髪に、メガネを掛けた、清楚な白い服装の少女だった。

 美人よりも可愛いという印象の、砂糖菓子のような女の子である。

 見た目は。


 けれどそんな彼女の存在に、フィリアが嫌そうな顔をして、


「マリー、貴方が来たの?」


 そう、目の前の可愛らしい少女に告げた。

 どうやらフィリアの知り合いであるらしい。

 だが彼女は笑っているがフィリアは苦虫を潰したような顔をしている。

 と、マリーと呼ばれた彼女が、


「うん、私が連れてくるようにって。お友達だし」

「確かにお友達だけれど、お友達だったら見逃してくれてもいいのでは?」

「お友達だから、怪我をせずにお互いに穏便に事を進められるのではという配慮です」

「ふーん、そっちの思惑はどうでもいいわ。それで他に言いたいことがある?」


 フィリアの言葉にマリーがにこりと微笑み、


「実は、フィリアちゃんには今まで黙っていた事があるの」

「へー、だったら今すぐその秘密とやらを話してもらおうじゃない」

「一緒に来てくれたらお話するわ」


 マリーがニコッと笑って誤魔化している。

 そんなマリーにフィリアは、


「お断りよ。残念だけれど貴方についていくつもりはない」

「でも私に手を出すと、敵対しているとみなされるのだけれどいいのかしら」


 マリーが微笑みながらそんなことを告げてくる。

 何だか見た目が可愛いのに怖いよこの子と俺が思っているとそこでフィリアが、


「でも貴方が先に手を出してきたなら話は別よね」

「あら、何かしら」

「私は貴方を怒らせる方法を知っているわ」


 フィリアはそう言いながら俺に目配せしてくる。

 それにレイトも気付いて、そこでコウモリに変身した。

 吸血鬼特有の技だが、見た目が可愛くないとの理由であまりレイトはなりたがらない。


 ちなみに、コウモリになると、服と鞄は何処かに収納される。

 未だに何処に収納されているのか魔法学的によく分かっていないらしい。

 さて、そんな話はおいておいて俺がフィリアに近づくと、即座にフィリアは逃げないよう俺の襟首を掴んだ。


 もう少し違う扱いをお願いしたかった俺ですが、それを言う前にフィリアがマリーに、とてつもない黒い笑みを浮かべながら一言。


「貧乳!」


 誰が、とは言わなかった。

 コウモリになったレイトが何故かフィリアではなく俺の方にとまっていたのは、女同士のある種の戦いに恐れをなしたからなのかもしれない。と、


「だーれーがー、貧乳ですってぇええええええ。ちょっとばかり胸が大きいくらいで私に勝ったつもりぃいいいいい」


 底冷えするような声でマリーが叫ぶ。

 同時に黒い彼女の影がこちらに襲ってくるけれど、


「えっと、とりあえずそのへんで停止で」


 レイトがそう呟くと影が止まる。

 マリーがしまったという顔になる。


「そうか、ここは吸血鬼の……影の操作は出来る者達だったわね。でも、だったらこれで……」

「残念、次の攻撃は受けるつもりはないわ。だって、私は逃げるもの」


 フィリアがそう告げて、同時に俺は再び空に舞っていたのだった。





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