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失敗したらしい?

 入ってきた男達は見知らぬ男達だった。

 彼らは俺達を見ると、こちらに向かってくる。


 バンッ


 大きな音がした。

 フィリアが窓を開いた音だ。


「行くわよ下僕! 早くなさい」

「はいっ!」

「あー……僕もとりあえず逃げます」


 その場のノリでレイトも逃走しようとした。だが、


「逃がすか」

「俺達はカネで雇われたんだ」

「依頼主に、逃げられたなんて言えないもんでね」


 そう次々と言うガラの悪い男達。

 そこでレイトが、


「えっと、もしや母達に雇われたのでしょうか」

「あん? 俺のスポンサーは“神殿”だ」

「え?」


 レイトが不思議そうに声を上げていたが俺はすぐさまフィリアを見た。

 フィリアがニコっと笑って誤魔化した。

 これは貴方の追っ手じゃないですかと俺は思ったわけですが、そこでレイトが慌てたように、


「じ、事情がわからないのですが」

「ああ、私、“神殿”におわれているのよ」

「な、何をやったんですか!?」

「いや、ちょっと才能がありすぎちゃっただけよ」


 フィリアがそう言って笑ってごまかすが、俺達はそうはいかない。

 後でもう少しきちんとフィリアに説明してもらおうと俺は思う。

 そもそも巻いたはずなのになぜいるのかという問題もある。


 けれど今はそれどころではないので、とりあえず窓から出て俺達は逃げ出すけれど気づけば追っ手が少し増えている。

 どこか逃げる場所はないかと俺が思っているとそこでレイトが、


「く、とりあえずは別の危機がありますが、僕の家に避難しましょう!」

「そうね、お邪魔させてもらうわ」

「というかあの人達足が早くないですか!?」


 筋肉質な体格なせいもあってか彼らの走る速度が速い。

 そこでフィリアが箒を魔法で取り出した。

 収納用の魔道具であるペンダントを彼女は魔女らしく持っており、それから取り出したのだ。そこでフィリアが、


「二人共、ちょっと苦しいかもだけど我慢してね?」


 フィリアがそう告げると同時に俺とレイトの襟首を掴み、


「というわけで、魔力を後方に全力放出!」


 フィリアがそう叫ぶと同時に俺達はそのまま空高く飛び上がったのだった。







 襟首を掴まれて首がしまるのをなんとかしながら俺達は空を飛んでいた。


「あの大きな屋敷だったわね。すぐだわ」


 フィリアの楽しそうな声を聞きながら、俺は大丈夫、大丈夫、大丈夫と真っ青になりながら心の中で呟いた。

 直ぐ側にいるレイトは既に気絶したようで、真っ青な顔で沈黙している。

 俺も早く気絶したかった。


 切なく思っているとそこでフィリアの笑い声が聞こえる。


「お空をとぶのは楽しいと思わない? 下僕」

「……」

「あら、この速度で気絶したみたいね。全く、教育が必要なようね」


 気絶はしていないがこれ以上何かされるのもあれだったので俺は気絶していることにした。

 沈黙こそ素晴らしい。

 そこで唐突に動きが止まる。


「二人共起きなさい、目的についたわよ」


 軽く振り回されて俺は起きたふりをした。


「う、うーん、は! ここは?」

「こっちの子の家なはずよ。

ほら、早く起きないと……ちょっと高い所から落とすわよ?」

「! 起きました!」


 レイトがはっと目を覚ます。

 もしや俺と同じように寝たふりをしたのではと疑うも、この焦った様子だと本当に気絶していたとしか考えられない。

 そこで俺は周りを見回した。


 レイトの家も貴族の家でこの町で一番大きな家に住んでいる。

 門と屋敷の間はそこそこ歩かないといけないのでその範囲を歩くだけでも十分に運動になりそうな距離があり、噴水二つに芝が一面に植えられている。

 以前きた時と何も変わらない。


 この白く大きな屋敷の奥にはバラ園も有る。と、そこで、


「レイト、そこで何をしているの?」


 そんな女性の声が聞こえたのだった。








 その女性が誰なのかを俺は知っていた。


「こんにちは、レイトのお母さん」

「あら、ユニちゃん久しぶり。……失敗したようね」

「え?」

「いえ、なんでもないわ」


 あいかわらず微笑むレイトの母だが、今ちらっといった言葉に俺は不信感を抱く。

 だが現状ではあれから逃げるにはここが一番だったのだ。

 そこでレイトの母親がフィリアに気付いたらしい。


 ジーっとフィリアを見てから、


「貴方、何処か出会ったことがある気がするわ」

「気のせいですわ、下僕の友達のお母様」


 フィリアがそう答えるとレイトの母が瞳を瞬かせて、


「下僕?」

「ええ、このユニは私の下僕なんです」

「……」


 無言でレイトの母親が俺を見た。

 視線がジクジクととても痛かったけれど俺は気づかなかったふりをして頷き、けれど今はここに少しの間置いて欲しかったので、


「レイトにはもう話したのですが、短い間ですがお世話になります」

「あら、そうなの? レイト」

「は、はい」


 別に女体化したいわけではないけれど、今は安全な場所で作戦会議が出来るような場所がほしい。

 更に付け加えるなら俺は眠かった。

 だって逃げるので必死で全然眠っていない。


 それにレイトの母親はニヤァと笑っていたように感じたが、


「よろしくお願いします」

「いいわよ~。後でお茶とお菓子を持って行くわ」


 そんな風にレイトの母が言うのをを聞きつつ俺は、もしや睡眠薬やしびれ薬入りなのかと思う。

 とりあえずはそれに対する対策をしておこうと俺は決めてから、


「レイト、部屋に案内してくれ」

「僕の部屋に一つに集まったほうがいいか。フィリアもいいですか?」


 レイトがそう問いかけるとフィリアは、


「ええ。男の部屋って興味あるしね」

「……」

「……」

「何よ、二人して私を見て」

「……捜さないでくださいね?」

「ふーん、ふふふふ」

「だから捜さないでください!」

「分かったは、私も少しゆっくり休める場所が欲しかったのよね」


 そう、フィリアが肩をすくめたのだった。








 そんなこんなでフィリア達と一緒にレイトの部屋に向かう。


「ふーん、男の子の部屋ってもっと荒れているのかと思ったけれど綺麗なものね」

「当たり前です。いつ、いかなる時可愛い彼女が僕の部屋を訪れるかわからないのですから!」

「それで、“例のもの”の隠し場所は?」

「……」

「なるほど、あそこのベッドの下ね」

「何でいきなり当ててくるんですか! というか今、探査の魔法を使っていませんでしたよね!?」

「さて、私は今何をしたでしょう♪」


 歌うようにそんなことを言い出したフィリア。

 だが俺としてもその力については知りたい気がする。

 先ほどからまるでどうなるかを予測したように話が進んでいくのだ。


 そして今のレイトの様子からその予測は多分正しい。

 さらに“神殿”が欲しがるような特殊能力者でも有る。

 ただ“魔女”というのはいろいろな魔法を使える者たちなので、ただ単にそうった魔法が使えるだけなのかもしれない。


 けれど今ここで聞いておいても問題はないだろうと俺はここで思い、


「それでフィリアは先程からレイトのその……な本を探したりと、特殊な力を持っているみたいですが、どんな力なのですか?」

「さあ。自分の力を教えないほうが色々出来ていいわよ?」

「……そうですか」


 フィリアは話す気きはないようだ。

 そこで俺は紅茶のカップに手を出すとフィリアが、


「それは遅効性の睡眠入りね」

「では解毒しておきますね。ところで全部ですあ?」

「ええ。そっちのケーキには、糖蜜に混ぜて睡眠薬がはいっているわね」

「母さん……」


 レイトが呻くように呟いた。

 それを見ながらとりあえず俺はそっと手をかざして、“力”を使う。

 ユニコーンとしての力だ。


 こういった解毒には効果がある。

 ふわりとケーキと紅茶のカップが光り輝く。

 そして光が収まってから、俺は、


「これで無毒化出来たと思います」

「よし、では冷える前にいただきましょうか」


 フィリアのその言葉を合図にとりあえず僕たちは紅茶とケーキを楽しんだのだった。

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