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どうして俺が女体化することになったのか

 即答したレイトに、


「ふーん、じゃあ使えそうね。ユニ、手を放してあげて」


 フィリアに言われて俺は手を放した。

 同時にフィリアの手がレイトから放されて、それから振り返る。

 振り返ったレイトは上から下までフィリアを見てから、


「ふむ、美人だが、どこかで見たことがある気がするな」

「気のせいじゃない?」

「いや、美人は、僕はユニではないからな! 

一度見たら忘れない!」


 言い切ったレイトに、俺ではないからってどういう意味だと問いただしたかった。

 だがこのレイトの美少女に関する記憶は侮れない。

 美少女であれば確実に年齢名前、何処で出会ったかを全て一瞬の内に言えるのだ。


 そんな特技があるのに、何故かモテ無いのもレイトだった。

 さて、それはいいとして、と俺が思っているとそこで、


「それよりもここを早く移動しよう」

「? 屋敷でお茶くらいは出してもらえないのか?」

「ユニ、分かっていないな。お前は今の状況が」


 暗く笑うレイトに俺は嫌な予感を覚える。

 そういえばさっき彼はどうしてすぐに俺に頷いたのか?

 俺が男のままでいたいというと、即座に頷いたのである。


 なぜ、それで頷いたのか。

 そもそもどうして女体化の話を知っているのか。

 膨れ上がる不安に俺が沈黙しているとそこで、


「そうさ、お前が女体化から逃げてきたなら、うちで匿ってやってもいい。

それこそ“エサ”とはいえ友達だからな」

「レ、レイト……」


 友達だからと照れたように言うレイト。

 なんだかんだで口はアレだが、俺のことは友達として心配してくれているらしい。

 そう俺がある種の感動を覚えているとそこでレイトが真剣な顔になり、


「だが今は状況が悪い。俺の家にユニ、来てみろ。絶対母が睡眠薬入りの紅茶を提供して、目が覚めた時には性別が変わっている」

「い、嫌だ。それが嫌だから家出してきたのに! ……というか、どうして女体化の話を知っているんだ?」

「それは俺の母親が一枚噛んでいるからだ。ともあれ事情を説明するにしても移動した方がいい。喫茶店にでも移動して話をしよう。ここは屋敷に近すぎる」


 レイトのその言葉に俺は頷き移動しようとした。

 そこでフィリアが、


「待ちなさい。ここ一体では有力な貴族なのよね? 貴方」

「? そうですがそれがどうかしましたか?」


 そこでフィリアが笑い魔力があふれる。

 それを感じたけれど、結局俺には何をしたか分からなかったが……フィリアが笑みを浮かべる。


「話をする場所は私が決めるわ。お茶に睡眠薬をいれられたくないでしょう?」


 フィリアが楽しそうに俺達に告げたのだった。









 さて、フィリアがこっちよというので俺達は導かれるままにそちらに向かう。

 

「確かこっちね。この看板があったし」

「あ、ここのお店もコーヒーとケーキが美味しいんですよ」

「そこは睡眠薬入りよ」


 フィリアが短く告げてその店を通り過ぎる。

 時間が時間なせいか妙に人が多い。

 だが考えてみれば、大人は今は働きに行く時間である。


 だからこんなに人が多いのかと思うと俺は眠くなってきた。


「うう、眠い」

「眠ったら、女になっているわよ」

「! 目が覚めたかもしれない」

「それはいい事だわ。そうね、あの赤い風船のついたお店にしましょう」


 フィリアが指差す先には、少し薄暗いお店がある。と、


「でもあそこよりも多分ここのほうが美味しいですよ?」

「……そっちはしびれ薬ね。ソッチのほうが好みなのかしら」

「あの、僕は関係ないですよね?」


 ふと不安を覚えたレイトが呟くとそれにフィリアは……満面の笑みを浮かべて、


「どう考えても嫌がっている貴方を、そのままにしておくとは思えないのよね」

「ま、まさか……」

「ふふふふふ」


 真っ青になるレイト。

 俺はそんなレイトを見つつ、何でだろうなとその時は思っていたのだった。

 喫茶店に入り、コーヒーを三つ注文する。


 すぐに出てきたコーヒーは温かい。

 丁度作ったところだったらしい。

 そう思いながら俺は砂糖とミルクを沢山入れた。


「そんなにミルクを入れたら薄くなって眠くなりそう」

「に、苦くてそのままだと飲めないんだ」

「……なるほど」


 フィリアはひとり頷いている。

 だが俺としては、何が“なるほど”なのだろうと思った。

 だがそんな不安そうな俺を見て、フィリアが笑みを深くしたのを見て俺は一人震えていると、そこでフィリアがレイトに、


「それで、どうしてユニが女体化の危機に瀕していると貴方は知っていたのかしら」

「それは……僕が全部会話を聞いていたからです」


 それに俺は、え? と疑問符を浮かべる。

 レイトはそんな俺をちらりと見てから、


「つまりユニの女体化には僕の母親も絡んでいるということだ」

「それでその会話ってどんなものだったの?」


 フィリアが促すとレイトが遠い目をして、


「ああ、あれは先日の飲み会がうちであった時の話だった」


 そう話しだしたのだった。








 その日、ユニの母親とレイトの母親が、レイトの家で個人的な飲み会&愚痴大会をしていた。

 この二人は昔から仲良く、今でも交流がある。

 ちなみにユニの母親はユニコーンの末裔であり、レイトの母親は怪力淫魔だった。


 さて、そんな時にユニの母親がレイとの母親に、


「ねえ、そっちの子も彼女いるの?」

「いなーい。奥手だもん。そっちはどう?」

「いないわよー。どこかに良さそうな女の子いないかしら」

「どちらかが女の子だったら良かったのにねー」

「「……」」


 その時の沈黙は、聞いていたレイトが不安に思うような静かさだったという。

 たまたま自分たちのことを話していたので、興味本位で壁にコップを当てて、聞き耳を立てたことをこの時レイトは後悔した。と、そこで


「「それだ!」」


 レイトとユニの母親が同時に叫ぶ。

 そして、ユニの母親が、


「よし、うちのこ女の子にしちゃる!」

「わーい、だったらうちの子あげちゃう! 二人共美形だから可愛い子が生まれるわぁ」

「かんぱーい!」

「かんぱーい!」


 楽しそうな声で、そう言ってお酒を呑むユニとレイトの母親の声を聞きながら、レイトはそっとその場を後にしたのだった。








「といった酔った勢いで決められているのを僕は目撃した」


 レイトは濁った瞳で俺に告げた。

 一方俺は、


「お、俺の人生がそんな簡単に決められてしまった」

「ついでに僕の人生もだ。なんとかならないか」


 そんなふうに俺達が話していた所で、窓の外に複数人が走っていくのが見える。

 誰かを探しているふうではあったなと俺がぼんやりと思っていると、


「店員さん、お勘定よ」


 そうフィリアがお金を渡してお釣りはいらないわと言っている。

 あれ、と俺が思っていると、フィリアが俺を見て嗤う。


「別に、完全に見つからない場所に移動して話さなくてもいいわけよ。ようは理由を聞ける時間さえ手に入ればいいというだけ」

「……何だか見つかると言っているように聞こえるのですが」

「見つかったのよ。行くわよ」


 フィリアが窓から店の外に飛び出すと同時に、先ほど窓から見えた人達が店の中に入ってきたのだった。


 



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