僕と彼女の壁
彼女と廊下ですれ違うと少し照れる。話し掛けられる事もないのに、胸の底で何かを期待してしまっていた。
ロッカーから次の授業の教科書を取り、教室に戻ると、そこにはいつもの明るい雰囲気が活気溢れていた。
学校の風紀を乱す者もいれば、友達と会話をしたり、おやつを食べてたりと、十人十色だった。しかし、その中でも十数人の女子を集めて、男子を数人加えているグループが目立っていた。ひときわ目立つ声を張る女子もいれば、回りと比べて遥かに大きい男子もいる。普遍的な所はなく、ただ平然と闊歩する僕に目を向ける者はいなかった、恐らく。
机に座ると全体が見渡せる、黒板から遠く離れたこの席は一番後ろで中心にある。
自分で言うのもなんなんだが、僕は他人の人間関係を聡るのが得意だ。溺愛に自惚れる人もいれば、センセーショナルな人もいてとても活気盛んだ。
僕は自分のことになると、つい無垢になってしまう。
別の言い方をすればバカになると言うことだ。
そんな人間はもう一人いるだろう。
僕の視線の先にいる彼女は、ニ三人の女子と楽しく会話をしていた。その表情は凄くにこやかで、まるで僕と生きてきた世界が違うことを意味するようなものであった。