信長派生キャラ全員集合! ~目指せ織田信長公認二次創作~
第六天魔王 織田信長は深い深い地獄の底にて思う。
『俺を扱った創作増えすぎじゃね?』
魔王と呼ばれるのはいい。己から名乗ったものだ。
だがRPGで本当に魔王になっていたり。子孫が宇宙に出たり。女体化されたり。実は生きていて外国行ったり。
それはもう好き勝手に創り出される己自身に、なんとも言えない気持ちである。
「ならば決めてやろう。織田信長公認の二次創作を!!」
こうして様々な世界の織田軍が一斉に集まり、最後の一軍になるまで戦い続ける世界。
『ノブナガファイトの世界』が創り出されたのである。
「それと俺がこの世界に呼ばれたことになんの関係が?」
戦国武将とは縁もゆかりもない高校生男子にも関わらず、自室で惰眠を貪っていたところを拉致された。
不思議な光に包まれて、気がついたら異世界でぶっ飛んだ説明を受けている。
随分と広い部屋だ。天守閣というやつを広くしているイメージだな。
「そう! そこなんだよ明智 勇刀くん!」
漆黒の鎧に身を包んだ、黒髪黒目の女の子が、ズイッと顔を近づけてくる。
気の強そうな瞳と、あどけなさの残る容姿が仰々しい鎧とミスマッチだ。
十代後半くらいだろうか。ここまで真っ直ぐ曇りのない瞳で見つめられると困る。
正直女の子に免疫のない俺にはどうしていいかわからない。
「君には我が織田軍の記録係をやってもらおう!!」
『我が』って言ったよこの子。
つまりこの子は別世界の織田信長なんだね。
うわあ女体化武将だーすごいぞーかっこいいぞー。
「マジか……」
現実逃避が捗るわあ。
「お館様、本当にこいつでいいの?」
「我は彼がいい。だから呼んだ」
さっきから畳の上でひたすらゴロゴロしているちっこい娘さんがいる。
金髪碧眼でショートウエーブな少女。タレ目で、じとーっと擬音が出るくらいに見られている。
金色か……金ピカ大好きなイメージが有るのは秀吉かな。信長をお館様と読んでいるし。
仰向けに寝転んだままの金髪ちゃんが俺に向けて口を開く。
「……ヒデヨシ」
「ん? なに?」
突然言われたので反応が遅れた。
ひでよし、と聞こえた気がする。
「名前、ヒデヨシ」
「ああ、よろしく」
「食べる?」
ヒデヨシがなにか手に持っている。黒い何かの塊……いやマジでなんだこれ。
「なにこれ? 戦国時代のお菓子?」
「マロングラッセ」
「マロングラッセ!? 洒落たもん食ってんな!?」
「非常食は、やっぱり、マロングラッセ」
「日持ちしねえだろそれ」
「満足した、やっぱりあげない」
それだけ言って天井を見つめる作業に戻るヒデヨシ。覚えたぜヒデヨシよ。
今のとこ俺の女体化武将当てクイズは的中率十割だ。
「他の武将には後で会わせてあげよう。ちょっと今立て込んでてね」
「その人達は何をしているん……です?」
よく考えたら年下なのか年上なのかわからない。今更敬語になる。
「君は仲間になるんだ。敬語はいらないさ。我も勇刀と呼ばせてもらうよ」
「ああ、いいよ。よろしく」
意外にフレンドリーだ。殺伐とした空気がなくて助かっているよ。
「何をしているかだが、城に結界を張ってもらっている。そろそろ降りそうだからね」
「結界とか張れるのか……降りそうって、雨とか?」
「いや、デブリが」
「デブリが!?」
スペースデブリのことですか?
結界あるらしいから、陰陽術バトルだと思ってたけど宇宙行ったかー。
「今は宇宙海賊ノーブ・オダの船と」
「銀河パトロールNOBUNAGAの宇宙船が戦闘中」
補足してくれるノブナガとヒデヨシ。
「どうコメントするのが正解なんだよ」
「落ち着くんだ勇刀。今君が考えることじゃない」
できれば金輪際考えたくないです。
本当にとんでもない世界に来たんだなあ。
「イエヤスの結界は上の上だよ。最高だ。恐れることはない」
「家康って織田軍でいいのか?」
「よい、我が織田軍は時系列で言えば織田徳川同盟を結んでいる」
時系列とか知ってるんですね。同盟があれば後は時代によりけりらしい。
「君にとって絶対に悪い話ではないよ。ウチの記録係は最高だよ」
「記録係ということは、みんなの身体測定なんかも、できてしまう」
「なん……だ……と……」
落ち着け。落ち着くんだ俺。ここで女に流されてウソでしたーはキツイ。
そもそもここで承諾すれば、俺にエロガキという不名誉な称号が付き纏う。
「エロスに、負けて、はやく」
ヒデヨシに嫌な催促をされる。絶対、エロスなんかに負けたりしない!
「そもそも、何で俺にそんな事をさせてくれるんだ?」
「君は元の世界では一切何の特技もない普通の男の子だ。でも異世界に行くと全ての因果が集中する」
難しそうな話始まったよこれ。
「そうすると平行世界の勇刀は存在しなくなって一人に収束する。そこからなんやかんやあって唯一無二の能力が手に入るのだ!」
「大切そうなとこはしょった!?」
「ハッピーエンド一直線、モテモテ、ハーレム野郎」
「それが君の力だ」
「まったくピンとこないです」
説明が説明になってない気がする。
「ふむ、では君に逃げ道をあげよう」
いたずらっ子の目で俺を見つめるノブナガ。
逃げ道とかはっきり言わないで下さい。
「この世界に呼ばれた以上、どこかの織田軍に入らなければならない。しかし!」
ズビシっと俺を指さして、さらに演説は続く。
「なかには史実に近い、全員男の織田軍もある。そしてそこに入ろうものなら……」
「も、ものなら?」
「ほんの少しの粗相で首をはねられるぞ」
「しかも、ガッツリ衆道を嗜んでいたり、するかもしれない」
「ここで働かせて頂きとうございまする」
誠心誠意土下座である。
衆道とは男同士の肉体的なラブをやっちゃうアレである。
そんな事されたうえに首飛ばされたら、無念すぎて悪霊一直線だよ。
「では君は今日から織田軍の武将記録係だ。よろしく頼むよ勇刀」
「よろしく、勇刀」
「よろしくお願いします」
こうして織田軍に入ったけど何をすればいいんだろう。
「それじゃあ、能力について説明するよ」
「いきなりわかるものか?」
特殊能力とか超欲しいじゃないか。中高生男子の憧れだよ。絶対に届かない憧れだよ。
「わかるさ、これが気に入って呼んだからね」
これは期待できる。織田軍に好かれた能力だからな。
どんな能力でも使えないものではないはずだ。
「君の能力は、異世界の女性に触れ続けて、お互いに興奮するとものすごい奇跡が起きる能力だ!!」
「えぇ………………」
「すごく、卑猥だね、勇刀っぽい」
「褒めてないよな?」
どう反応すればいいんだよこれは。
「まあ実践あるのみだね。ここはまず我が確かめてあげようじゃないか」
「お館様に、譲る、敵倒しておく」
「敵?」
「ほう、気付いておったか」
天井から突然降ってくる4つの影。
ノブナガがショットガンで影を阻むと、少し離れたところに着地するそいつら。
「拙者はハン・オブ・ゾウ」
「拙者はコターロウ」
「拙者はゴ・エーモン」
「そしてリーダーの拙者がノーブ・オダ」
全員が機械的な鎧を身に纏っている。
鎧というか宇宙服のようなSFで出てくるスーツのようだ。
「われら! 宇宙の忍者4人組!!」
「宇宙忍者ノーブズ!!」
びしっとポーズを決める宇宙の忍者4人組。
全身真っ黒なアーマーなため区別がつかない。
「宇宙海賊の残党か。よりによって脱出ポッドでウチの真上に落ちるとはね」
「これもまた天命、ここで貴様らの首をとる!」
決めポーズのまま宣言するノーブさん? 誰が誰だっけな。
「ノーブズのリーダーであるわしは体が自在に伸びる特殊能力を持っておる」
「他の三人は、バリアー・炎・岩、中々面白かったよ」
ヒデヨシの足元にはノーブズとやらの三人が倒れている。
ちびっこのくせに強いぞヒデヨシ。
「バカなっ!? ワシの仲間がこうもあっさりと。おのれ許さん!」
「許さなかったら、どうするの?」
「貴様ら全員、仲間のいる地獄に送ってくれるわ!」
ノーブが右腕をぐいーんと後ろに伸ばす。どっかで見た気がする。デジャヴかな?
「食らうがいい! ノブノブの火縄銃!!」
後ろに伸ばした腕を勢いをつけて飛ばしてくる。
「おいあいつダメだろ!?」
「心配するな。この程度の攻撃でやられる我ではないよ」
「まだまだあ! ノブノブのガトリング!!」
「やられるとかじゃなくて権利的にダメだろあいつ!?」
「まずいな、こいつ強いじゃないか」
ノブノブのガトリングがかなり強い。じりじりと壁際に追いつめられるノブナガ。
「はっはっは! このノーブの実力思い知ったか!! さらにこのバッチリした魔法のリングでワシのギアがセカンド、サードと上がっていく!」
「まずい、露骨、すぎる」
「よーし百速まで仕上がったわい!! ワシの脳細胞がトップギアじゃ!!」
「私が時間を稼ぐ。鳴くのなら、殺してしまえ、ノーブ・オダ」
「それノブナガのヤツじゃなかったか」
「お館様、はやく、乳繰り合って」
「すまない。勇刀! さあ我の体をいやらしく弄るんだ! エロ同人みたいに!」
「こんなときに何言ってんだ!?」
「説明しただろう! 君は女体を貪るためにこの世界に呼ばれたんだ!」
「直視したくない現実だ!?」
鎧を脱いで下着姿になるノブナガ。意外にも白だ。てっきり黒とかだと思ったのに。恥じらいで身体がほんのり朱に染まる。可愛いけど、可愛いけども。こんな状況で流されるまま女体を撫でるなんて納得いかない。相手の気持ちも無視して仕方が無いからなんて理由で撫でていいわけがない!
「貴様ら! 戦闘中に何をしている!! ハレンチな!!」
「オッケイもっと言ってやって!」
「どっちの味方なんだ君は!!」
「はやく、揉め、はやく」
ヒデヨシに背中をグイグイ押されてノブナガと密着する。
「うおおわ、ごめん!?」
「いいんだ。正直タイプだし。君が初めてでよかったよ」
「初めて!? いやでもこんな」
まだ決心がつかない。まずいなこれは。ヒデヨシもノーブの体術に押され気味だ。
あいつなんでギャグキャラのクセに強いんだよ。腐っても織田信長ってことか。
「よし、やるぞ」
「ああ、優しく……じゃダメか。好きにまさぐるといい」
まず出来る限り優しく抱き締める。寒いのか怖いのかわからないけど、小刻みに震えている。
初めてらしいからな。行為が最低でも優しくしたい。俺の無駄な吟詩だ。
抱きしめているとわかる。俺の鼓動よりもノブナガの鼓動のほうがずっと早い。
「ふむ、君は暖かいな。やはり君が初めてでよかった」
「もっと、全体をこね回すように、時に優しく、撫でる」
「外野うっさい!! そんなことできるか!!」
やがてノブナガの体に光が満ちる。長かった。抱き合っていたほんの数分が何時間にも感じた。
「ありがとう。もう負ける気がしないよ」
「つよく、なってる、すごい」
「茶番は終わりか? ならばその男もろとも冥府へ逝くがよい!!」
「悪いね。今の我は無敵さ」
ノーブの拳に自分の拳を合わせていくノブナガ。撃ち負けたのはノーブの拳だった。
「一瞬でここまでのパワーアップができるとは。貴様! その力は何だ!」
「愛の力さ。勇刀の優しさが我に無限の力をくれる。君の流儀に合わせてあげよう。ノーブくん」
ノブナガの拳が光って唸る。全てを砕けと渦巻き叫ぶ。
「これが恋する乙女の力だ! ノブナガの! 超! 火縄銃!!」
拳から溢れる光の奔流はノーブを巻き込み城の外まで飛んでいった。
「これにて一件落着!!」
どうでもいいけど下着姿のまんまだぞ。
「認めよう、勇刀はすごい、すごいエロい」
「エロくない!! それだとただエロいだけみたいだろ!!」
「気にするな勇刀! これから身体測定とかで嫌でもエロイベント目白押しだぞ! 自然とエロくなっていくさ!」
「なってたまるかああぁぁぁ!!」
俺は性欲第一のサルとは違うんだ。人間として、文明人として、もっと大事なもののために生きる。
「そういやなんで身体測定とかやるんだよ? やるとしても俺がやる必要が無いだろ?」
「君は記録係だよ? 君は全裸の我等を隅々まで図って記録する義務がある!」
「全裸になる必要はない! まずノブナガは服を着ろ!!」
「めんどうだからこのまま全員の身体測定をしてしまおう。ヒデヨシも脱いでしまえ」
ツッコミを入れる前に二人とも下着姿になる。展開が早いな。
「黒……だと……?」
意外にもヒデヨシの下着が上下黒だ。上の必要はあるのだろうか。
「子供体型だから、白というのは、安直、意表をつく」
「誰のだよ。別に下着くらい好きなの履けばいいだろ」
「うむ、裸に近くなると気分もサッパリすっきり爽快だな。見たまえ、天守閣からのこの景色を!」
「行動に脈絡ねえな! 下着で外に出るんじゃない!!」
ここは城の最上階。殿様がいるに相応しい場所には最高の景色が相応しい。
「コンクリートにも排気ガスにも汚染されていない景色はどうだい?」
「おぉ…………これはすげえ……」
城下町とそこから更に広がる世界は山も川も空も綺麗だ。これが自然の美しさか。なるほど、見応えがある。
「あのちょっと遠くにあるのが織田信長の城だよ」
「なんで二つあるんだよ!!」
「その奥が、キャッスル・オブ・ノブナガ」
「つまり信長の城なんだな!!」
「ノブナガファイトの世界だからな。山ほどある。堪能するがよい」
沢山ある信長の創作世界が一つになったんだっけか。これは予想外だ。景観ぶち壊しだよ。
キャッスル・オブ・ノブナガとやらがどう見てもラブホテルのようなお城だ。
「あの城もいずれ我々のものになる」
「絶対住みたくないわ」
「特にあのラブホテルのようなお城は男だけで住んで欲しい」
「地獄だ!?」
「門番は二人にして、毎回交代の時にご休憩のランプが点灯するようにしてやるぞ」
「いかがわしすぎる!? まんまラブホじゃねえか!!」
「戦国時代は、衆道が、スタンダード」
「そうじゃない人の気持ち考えて!!」
うわぁ……できる限りの知略を使って潰そう。あの城はさっきの超火縄銃みたいな技でぶっ壊すように誘導しなくっちゃ。今です! とかフハハハハハ馬鹿め! とか言う練習しなくっちゃ。
「さっきからボケにばかりツッコんでるけど、我等にはツッコみたくならないのかい?」
「何をだよ!」
「ナニを、勇刀の、ちっちゃいナニを」
「ちっちゃくねえよ!!」
「ほほう、ちっちゃくないなら証明して欲しいものだ」
「できるか!」
武将ってこんな下ネタぶっこんでくるもんなの? メゲるわ。
「でも我の下着姿を見てもまだ普通に歩けているじゃないか。前かがみで一歩動けば絶頂に達するくらいしてもいいだろう?」
「そんなガッツリ興奮できるか! 戦闘中だったろうが!」
「そうか、まあいいさ。我は満足だ。抱き締められていい気分だった。夢心地というやつだね」
「なんて言っていいかわからないけど、勝ってよかったな。それじゃ……」
「話を、逸らさない、身体検査、まだ」
「チッ、覚えてやがったか」
どさくさ紛れに逃げる大作戦は見事大失敗だ。
「逃げても無駄だ勇刀。そもそも勇刀の部屋を案内していない」
「まだ城のどこに何があるかもわからないだろう?」
そうか、完全に自室に戻ろうとしていた。はっはっは、俺はまるで道化じゃねえか。
「私の、身体測定を、する、早く」
「なんでヒデヨシからなんだ?」
「お館様はもう、こねくり回された、次は私の番」
「いいだろうヒデヨシに譲る」
頑張るのは俺の方だと思うよ。おっきくなるの我慢的な意味で。
「準備、できた、バッチこい」
いつの間にか手枷をつけて下着姿のまましゃがみこんでいるヒデヨシ。
「お前その手錠みたいなんどうした?」
「いざ尋常に、勝負」
「いやその格好は勝負に負けた後だろ」
「拘束された、武将プレイ、くっ殺せ」
「身体測定に殺しの要素ねえよ!」
横でノブナガが爆笑している。この場面じゃあてにならん。
「我の時は追加で軽く言葉攻めするコースでお願いする」
「ねえんだよそんなコースは!」
「なければ、作ればいい、そうして人は生活を、豊かにしてきた」
「その格好は決して豊かな生活には見えないな」
「抵抗できない私に、勇刀の過酷な、身体測定の魔の手が、襲いかかるっ……!」
「過酷な身体測定の意味がわからん」
「過酷でこそ、興奮する、すごく」
どうしてド変態は発生するんだろう……コレガワカラナイ。
「これがメジャー、長さを図ったりできる」
「知ってるわ! 俺のこと馬鹿だと思ってるだろ!」
「思ってない、だから……くしゅん!」
「あーあー身体が冷えてるだろ。今度してやるから服を着ろ。暖かくしなさい」
「風邪をひいては元も子もない。ヒデヨシ、勇刀は逃げないよ。今日は体のことを考えて……」
正直逃げたいけどね。心のBボタンは押しっぱなしよ。いつでもダッシュできるぜ。
「みんなでお風呂に入ろうじゃないか!!」
そして三人で風呂に入っている。豪勢な露天風呂だ。いやもう温泉とか露天風呂とか大好きだよ。
「おおおぉぉぉぉ…………最高だな! 初めて織田軍入ってよかったと思ったよ!!」
「喜んでくれたようで我も嬉しいぞ。これから毎日一緒に入れることに咽び泣いてくれ」
「お風呂好き、お風呂とは、心の洗濯」
「いいこと言った。今ヒデヨシはいいこと言ったぞ」
全員タオルは頭に乗せている。お湯につけるなど認めん。これに関しては裸体などどうでもいい。
まず風呂を堪能する。そのためには女体への邪念などいらん。そんなんクソだ。犬にでも食わせろ。
しかしノブナガは胸もあるし、尻が安産型で好みだ。ウエスト締まってるし、スタイルの良さと顔の良さが合わさって最強に見える。
「よし、勇刀、髪洗って」
「よしじゃねえ、自分でやれ」
「勇刀、はやく」
すでに椅子に座ってスタンバっているヒデヨシ。シャンプーハットが無駄に似合うな。
中学一年生くらいで出る所が出ていないすっきりした体だ。これで強いとかどうなってんだ。
「これも親睦を深めるためには大切さ。我等は一緒に天下統一を目指して乳繰り合う仲ではないか」
「天下統一の手段がセクハラってどうなんだろうな」
「勝てば、官軍、どうでもいい」
「気にするな勇刀。こちらが選んだんだ。君に責任はない」
「そう言ってもらえると助かる」
どうやっても触らないと勝てないなら、せめてノブナガ達の負担を少しでも減らしたい。
「ちなみにウチは全員女性だ。よかったな勇刀。ハーレムだぞ。入れ食いだ」
「食わねえよ。マジで男一人?」
「マジ、全部の施設に、勇刀は入り放題、身体測定、はかどる?」
「いや入ったら嫌われるだろ。共同生活気まずくなるじゃねえかよ」
「なあに、勇刀が二、三回撫で回せば手籠めにできるさ。ニコっと笑ってポンポン撫でろ」
「俺はどこの主人公様なんだよ」
そんなスキルもってねえよ。むしろ笑ったり撫でるだけで惚れられるとか……すげえ注意して生活しないといけないだろ。日常生活に支障でそうじゃん。
「勇刀、手が止まってる」
「ああ、悪いな。こうか?」
ヒデヨシの頭をわしゃわしゃ洗ってやる。シャンプーが普通にある。俺の家より種類も豊富で多分値段も上だろう。こいつら金持ってんだな。
「しかし信長の城にこんな豪勢な風呂があるとはなあ。これ天然温泉だろ?」
「ほう、わかるのか。何も元からあったわけじゃない。勝ち取ったのさ。超高級温泉旅館『関ヶ原』の織田信美からね」
「おだのぶみ?」
「温泉宿の女将、ノブナガファイトは、勝つと負けた側の城を、吸収して、融合できる」
「なんじゃそら」
「だから超高級温泉旅館を我が城と融合させたのさ。最高だろう?」
さすが異世界。常識が通用しないぜ。
「むっちゃくちゃだなあ。ってことはさっきの宇宙海賊も?」
「そうだな。天守閣を宇宙船にして、一ヶ月くらいなら旅ができるようにするか」
「勝手気ままな、宇宙の旅、密室で、男一人、女二人、犯ることは一つ」
「犯るわけねえだろ。はいシャンプー終わり! この話も終わり!」
ここで下ネタの連鎖を断ち切ろう。シモネタばかりだと意識が下に行く。今更ノブナガの体を意識してしまうじゃないか。
「それじゃあ二人とも、こっちにおいで」
手招きするノブナガの元へホイホイと行ってしまう俺達。
湯船に浸かると手渡されるおちょこ。
「なんだこれ? においからして酒か?」
「その通りさ。安心するがいい。この世界に酒に関する法律はない」
「では、これから、お館様と、ヒデヨシと、勇刀による」
「義兄妹の契りを始める!!」
おちょこを天に掲げる二人。俺もマネしてみる。
「我ら三人、姓は違えども! えー同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!」
「おいこれ三国志だろ!! 信長関係ねえじゃねえか!」
「願わくば、同年、同月、同日に、死せん事を、願う、だっけ?」
「今この時より我等は家族だ! ともに生き、共に笑い、共に泣こう! 乾杯!!」
「かんぱーい」
「……乾杯」
おちょこを三つ、軽く合わせてから一気に飲み干す。初めて飲んだけど酒ってそんなうまくないな。
「ふふっ、これでもう離れることはないぞ勇刀」
「勇刀も、すっと一緒」
「そうか、悪くないな」
「おやおや義兄様は素直ではないな」
「うっせ……おにいさま?」
何で俺が兄なんだ? 信長が一番上じゃないのか?
「勇刀は高校二年生だろう? そちらの世界で言えば、我は高校一年生だ」
「と、年下!? マジか!?」
完全に三つは上だと思っていた。貫禄というかカリスマというか。ノブナガはやはりノブナガなんだろう。人の上に立つ器があるということか。
「やれやれ、そのくらい見抜けんとは……難儀な兄様だ。そう思わんか義姉様」
「……ねえ…………さま?」
「そっちなら、高校、三年生、おねーさん」
「うそおおおおおぉぉぉぉぉ!?」
こうして俺は一日で織田軍の武将となり、偉そうで実際に偉い妹と、どう見ても中学生くらいの姉ができたのだった。