プロローグ
「よくきたな、勇者よ・・・その装備で」
魔王は正直びっくりしていた。
それもそのはず。目の前にいる「勇者」の装備は明らかに戦闘の意思を示していない。
村人の服。武器はなし。よくもまぁそんな装備でここまできたものだと関心すら覚える。
しかも、この勇者、こちらが送り込んだ勢力を一切傷つけずにきている。
「うん。魔王軍の人たちが話がわかって助かったよ」
勇者の少年はそう口にする。年は13といったところか。そんな年で勇者とは・・・
「可哀想に」
思わずつぶやいてしまう。
「・・・そう。僕は可哀想。君も。」
勇者の一言が胸に僅かな痛みを走らせる。それを顔に出さないようにしつつ、魔王は勇者に問いかける。
「勇者よ、お前はここに何しに来た。」
「何もする気はないよ。昔の勇者のように魔王を倒しにきたわけでも、ましてや、魔王を説得しに来たわけでもない。」
「ならばなぜ、ここにきた?」
怪訝な顔をする魔王に、勇者は答える。幼いながらも凛とした表情で。
これは、「資質」や「遺伝」で「勇者」に「されてしまった」少年と
「資質」も「遺伝」も無かった故に「魔王」に「なった」少女の、反逆の物語。