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第Ⅰ篇《》プロローグ
『ここはどこだろうか?』
誰かに問いかけるでもなく呟いた。
周りには誰もいない……。
風景は白いもやがかかっている。
『本当にどこだろう?俺は……誰だろう?』
周りを見渡していると、声が聞こえてきた。
「コースケー、早く来なさい」
誰だろう?と声のした方を見つめた。
手を振っている人影がぼんやり見える程度で他のことはまったくわからない。
「コースケー」
『コースケって誰だ?』
ぼやいている間も手を振り続ける人影。
呼んでないで動けばいいだろうに、と思っていると、小さな影が横を通りすぎた。
「ママ~」
『男の子?…………どこか、懐かしい……よう、な?』
走っていく男の子の後ろ姿を見ながら呟いた。
「コースケ、どこいってたの?」
「ちょっとね」
『そう言えば、どこかで聞いたことのある声だな……どこで聞いたんだっけ?』
幸せそうな二人のやり取り……。
懐かしいようで懐かしくない……なんなのだろうか……この感じは…………?
何か思い出せそうになったとき、頭上が光だし身体中を光が包んだ。
『あれ?……何考えてたんだっけ?』
男の視界が黒に染まった──。