名前を4つ持つ男
彼はその恵まれた才能ゆえに、政府から特別に名前を4つ持つことを許された男だ。
山本一郎、大西大地、中川次郎、小山俊作、彼はその名前ごとにそれぞれの人生を送っている。
山本は大学教授、大西はエンジニア、中川は格闘家、小山は画家だ。
ある日彼が歩道を歩いていると、暴走したトラックが彼目掛けて突っ込んできた。避ける間もなく彼は大きく跳ね飛ばされ、絶命した。
『今日正午過ぎ、新宿の交差点付近で画家の小山俊作氏が車にはねられ死亡しました。警察によりますと……』
「ああ、怖い。また居眠り運転かしら。まあうちの人でなくてよかったわ」
格闘家、中川次郎の妻は、ほっと安堵の胸をなでおろした。