第二話~初めての練習試合~
そんなことがあって、私は野球部の監督をやることになってしまった。
なぜ監督をすることになったかは、第1話を見ていただきたい。
前監督の橘くんはどうしたかって?
橘くんは、田舎の父親が病気で倒れたらしく、田舎に戻り、そのまま家業を継ぐそうだ。
学校も良くそれを認めたと思うが、なってしまったものは仕方ない。
家に帰った私は、野球の知識を増やすためにパソコンを起動した。
そして某大手ネット通販サイトで有名監督の著書を購入し、
野球初心者のための野球の常識を勉強した。
中でも私は、「ヒットエンドラン」という作戦に興味を持った。
ランナーがはしると同時にバッターが打つ。
盗塁のためにベースに入ったセカンド(ショート)の逆を突きチャンスを広げ、
あわよくば1、3塁にしようとする作戦だ。
私はランナーを必ず進める代わりに1アウトを与えてしまうバントよりも、
こっちのほうが絶対にいいだろうと考えた。
翌日、監督が変わったこと、その経緯を選手たちに話した。
残念だと思う選手が半分、これで厳しい練習が楽になるかという選手が半分だった。
練習は選手に大半を任したが、私は、昨日覚えた「ヒットエンドラン」という作戦も練習させた。
ピッチャーのモーションと同時にランナーがスタート。
そしてバッターが空いているところを狙って打つ。
そんな練習を3日して練習試合となった。
練習試合の相手は、都立墨田第一高校というところでまあまあ強いらしい高校だった。
まず1回の表、我が六浦高校の攻撃は「ッシャコーイ!」と雄叫びをあげて1番荒垣が左打席に入った。
相手投手は制球が定まらずに0ストライク2ボールとなり、次のストライクを取りに来た甘い球を、
荒垣は見逃さずにセンター前へヒットを放った。
2番の大田が打席に入ったところで、私は待ってましたとばかりにあのサインを送った。
ピッチャーがモーションに入ると同時にランナーは走り、バッター大田は一、二塁間を破る見事な
ヒットを放ち、1塁ランナーは3塁を陥れた。
ランナー1、3塁。
作戦の本によると、ランナー1,3塁は盗塁が一般的らしいので盗塁のサインをだす。
1塁ランナーの太田がスタートし、悠々2塁を陥れ、ここでバッターは3番柏木。
2年からレギュラーとして出場し、中でもチームトップの打率を誇っていた柏木は、
外角のボールを逆らわずにライト前に運び2点タイムリーヒット。
その後も1点を追加し、3点リードで守備に入ったが、飯島の様子がおかしい。
点こそ取られていないものの、2ストライクと追い込んでも決め球のフォークボールは投げていない。
それでも5回まで3対0とリードしていたが6回裏の相手の攻撃で、2アウトランナー満塁のピンチ、
2ストライクと追い込んでいたが、投げたのはフォークではなくスライダーで、
この球を相手打者はセンター前にタイムリーヒットを放った。
ここで一度タイムを取り、伝令を送って飯島にフォークを投げるように伝えた。
次の打者も2ストライクと追い込み、飯島が今日初めてフォークボールを投げた。
直球と同じ軌道で打者の手元でストンと落ちる。
バッターはあっけなく空振り三振でピンチを脱出した…
かに思われたがキャッチャーの小嶋がそれを後逸し、ランナーは振り逃げで1塁へ。
小嶋もボールを拾い、一塁へ送球したが、そのボールは大きくファーストの頭上を超えた。
その間に相手のランナーは本塁へ来てしまい、同点になってしまった。
その後飯島はコントロールを乱し、5つの四死球で3点を献上してしまった。
次の回はピッチャーを飯島から、1年生左腕の上山に交代して、上山は残りのイニングを0で抑えたが、
結果は3対6。 敗北だった。
試合の結果だけ見るといい勝負に見えるかもしれないが、6回の飯島はやはりおかしかった。
遅くなりましたm(_ _)m
今回から、選手の紹介をしていこうと思います。
<荒垣大輔>
2年、六浦学園高校キャプテン、人望があり、下級生からも慕われている。
右投げ左打ち、ショート、選球眼のある1番打者、足はそこそこ速い。
<柏木陽太>
2年、マイペースかつフリーダム。
右投げ右打ち、ライト、強肩強打の3番、勝負強い打撃。




