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魔王様の趣味は、重くて赤い

「……予言者様、そのスウェットは焼却処分でよろしいですね?」

「ダメです! 私の唯一の現世の思い出なんですってば!」

カイルに引きずられ、私が連れてこられたのは、目の眩むような豪華な衣装部屋だった。

壁一面に並ぶのは、宝石を散りばめたドレスの山。

「ゼノス様より仰せつかっております。『彼女に最高の魔力耐性と、最高の色気を』と」

「色気はいらないです。あと、できれば動きやすいやつを……」

そこへ、背後から低い声が響いた。

「……カイル、それは私が選ぶと言ったはずだ」

いつの間にか、ゼノス様が入り口に立っていた。

彼は無造作に歩み寄ると、数あるドレスの中から、一際鮮やかな**「深紅のドレス」**を指差した。

「それは……。かつて、魔界の深淵で獲れた火竜の鱗を糸にしたものですね。防御力は最強ですが、それ以上に……」

カイルが眼鏡を光らせる。

「……執着の象徴。一度袖を通せば、魔王の魔力に常に抱かれているような着心地になる、いわくつきの逸品です」

「ちょっ、重くないですか、設定が!」

拒否権などなかった。

数人の侍女に囲まれ、磨かれ、私はその赤いドレスに着替えさせられた。

鏡を見ると、そこにはパジャマ姿の女子高生ではなく、どこか毒々しくも美しい、**「魔王の所有物」**のような私がいた。

「……ほう」

ゼノス様が私の肩に手を置く。その大きな手が、ドレス越しに熱を伝える。

「似合っている。……これでお前が私のものだと、城の者すべてに知らしめることができるな」

「いや、予言者として雇われただけなんですけど……」

「いいや。お前を私の隣(晩餐会)へ連れて行く。……カイル、例の『聖遺物(不在票)』は預かっているな?」

「はい。現在、解析班が『ヤマトの追跡呪印』の解読を急いでおります」

ヤマト? 追跡?

……あ、クロネコヤマトの追跡番号のこと!?

「……よし。では行こう。私の隣で、その未来の知識を披露してみせろ」

そうして私はいやいやながらも晩餐会に参加することになった。


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