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魔王城の冷徹な執事と、謎の聖遺物「ふざいひょう」

揺られること数十分。黒塗りの馬車が到着したのは、雲を突くような尖塔がそびえ立つ、漆黒の魔王城だった。

「ひぇ……実写版、迫力が違いすぎる……」

圧倒されている私を馬車から降ろしたのは、ゼノス様ではなかった。

そこに立っていたのは、銀縁の眼鏡を光らせ、寸分の狂いもなく正装を着こなした一人の男。魔王軍の総宰相にして、ゲーム内では「冷徹な処刑人」と恐れられていた執事のカイルだ。

「……御戻りをお待ちしておりました、ゼノス様。して……その、小汚い布を纏った……生き物は、何でしょうか?」

カイルの視線が、私の毛玉だらけのスウェットに突き刺さる。その目は、まるで道端に落ちている生ゴミを見るような冷たさだ。

「口を慎め、カイル。彼女は私の命を救う予言者だ。客室……いや、私の執務室の隣の寝所へ案内しろ」

「予言者……? この、魔力も感じられない、ただの人間がですか?」

カイルが私の顔を覗き込んでくる。その瞬間、私はうっかり手に持っていた「例の紙」を落としてしまった。

「あ、不在票が!」

「ふざいひょう……?」

カイルが素早い動きでそれを拾い上げる。彼はそれを光に透かし、指先で紙質を確かめ、眉間に深いシワを寄せた。

「ほう。見たこともない素材、そしてこの精密な魔法文字……。『サイハイタツ』『オトイアワセバンゴウ』……。もしやこれは、古代語で記された禁忌の契約書ですか?」

「あ、いや、それはただの……」

「……なるほど。私でも解読不能なコードが仕込まれている。ゼノス様、確かにこの娘、ただ者ではありません。これほど高度な秘匿情報を、パジャマ(?)に隠し持っているとは」

違う。それ、ただの再配達の番号。

しかし、一度「すごい予言者」だと思い込んだ彼らの妄想は止まらない。カイルは手のひらを返したように、優雅に一礼した。

「失礼いたしました、予言者様。その『聖遺物』、厳重に鑑定させていただきます。……さあ、まずはその薄汚れた装束を脱ぎ捨てていただきましょう。魔王城に相応しい姿へ整えさせていただきます」

「えっ、あ、ちょっ、どこ連れてくの!?」

カイルに両脇を抱えられ(こっちも米袋扱い)、私は城の奥へと連行される。

振り返ると、ゼノス様が満足げに頷いていた。

「カイル、一番良いドレスを用意しろ。……彼女に相応しい、赤色の宝石もだ」

魔王様、それは「囲い込み」の準備ですよね!?

こうして私は、魔王城の家臣たちに「謎の聖遺物を持つ高位の予言者」と勘違いされたまま、強制的に魔王妃候補(?)としてのプロデュースを受けることになった。

……でも待って。さっきカイルが不在票を「鑑定する」って言ったけど、あれ、電話番号とか私の本名(直筆)とか書いてあるんだけど!

バレたら別の意味で死ぬ!!

面白かったらブックマークと下の星を★★★★★にしていただけると嬉しいです!!

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