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死亡フラグは玄関マット!?

短編で書くにはちょっと文章量が多かったので連載にして文章を増やしました!見てね〜

不在票は、人生を変える。

これは比喩でも誇張でもない。あの日、玄関に置かれていた一枚の紙が、私の人生を「物理的に」ひっくり返したのだから。

その日、私は自室のベッドで廃人のように転がっていた。

スマホの画面には、私が心血を注いでいるソーシャルゲーム『聖女と銀世界の調べ』の公式SNS。今日は、最推しである冷酷魔王・ゼノスの限定受注アクスタの届く日だった。

「あと五分……五分経ったら、一階に受け取りに行く準備を……」

そう呟いてから一時間。微睡みを切り裂いたのは、スマホの無慈悲な通知音だった。

【不在連絡票:本日再配達最終日。18時を過ぎますと返送されます】

「はぁぁぁぁ!?!?!?」

時刻は17時50分。あと10分。

もし返送されたら、あの限定アクスタは二度と手に入らない。推しの顔を拝めない人生なんて、呼吸をしていないのと同義だ。

私はパジャマのまま、猛然とベッドから飛び出した。

「待って! 運送屋さん行かないで!!」

階段を一段飛ばしで駆け下りる。運動神経「可」の女子高生が出せる最高速度を更新した、その時。

足が、滑った。

玄関マットの些細なズレ。それだけで、世界はスローモーションになった。

宙を舞う視界。廊下に差し込む夕日。

(あ、これ死ぬ。せめてアクスタ抱いて死にたかった……)

ドゴォォォン!!

衝撃。暗転。

そして、次に目を開けたとき——そこには、ありえないほど突き抜けた青空が広がっていた。

「……え?」

体を起こすと、そこは玄関ではなく、見たこともない深い森だった。

空気が澄み渡り、花の甘い香りが鼻をくすぐる。

けれど、私の脳内にある警報が鳴り響いた。

「ここ、どこ? っていうか、私……」

死んだはず。なのに体はピンピンしている。

混乱する私の視界の端で、巨大な「影」が動いた。

ゆっくりと顔を向けると、そこには軽トラックほどもある漆黒の狼が、静かに私を見下ろしていた。

夜を切り取ったような毛並み。ルビーのように輝く赤い瞳。

そして、その首元に見覚えのある「銀の紋章」。

私は息を呑んだ。

(このデザイン……まさか、ゲームの!?)

「あの……」

震える声で、私は賭けに出た。もしここが私の知る『聖女と銀世界の調べ』の世界なら、この狼の正体は一つしかない。

「あなた……もしかして、人の姿に変身できたりしますか?」

狼の耳がピクリと動いた。

「……なぜ、それを知っている」

低い、地を這うようなバリトンボイス。

次の瞬間、黒い霧が狼を包み込み、中から一人の男が現れた。

長い銀髪。冷徹さを絵に描いたような端正な顔立ち。漆黒の軍服を纏ったその姿は、間違いなく私が10分前まで画面越しに愛でていた魔王・ゼノスその人だった。

「奇妙な人間だな。私の真の姿を見ても腰を抜かさぬとは」

私は絶句した。

推しが目の前にいる。次元を超えて会えた。

本来なら狂喜乱舞するところだが、私の顔は一気に青ざめた。

なぜなら、この『聖女と銀世界の調べ』というゲーム。

魔王ゼノスは、物語の終盤で必ず「勇者に討たれて死ぬ」運命にある、救いようのない悪役ヴィランなのだ。

しかも、今の彼の姿。右目の横に、まだ薄い傷跡がある。

(この傷……勇者が現れる一年前、魔力が暴走した時にできたやつだ!)

「……この世界って、今、平和ですか?」

「平和なわけがなかろう。人間どもが私の領土を侵し始めている」

ゼノスの言葉に、心臓が跳ねた。

間違いない。ここはシナリオが開始される直前、魔王が破滅へと突き進む「前夜」の世界だ。

「じゃあ……そのうち、聖女とか勇者とかが出てきて、あなたを殺しに来る予感、ありませんか?」

ゼノスの瞳が、鋭いナイフのように私を射抜いた。

「……貴様、何者だ? 未来を予言する者か、それとも人間が送り込んだ刺客か」

一歩、彼が近づく。圧倒的な魔圧に押し潰されそうになる。

でも、私は決めた。

ただの不在票で死にかけ、異世界に放り出された私の新しい使命。

それは、推しを「死にルート」から救い出すこと。

「私は……あなたのファン、じゃなくて! あなたの専属カウンセラーです! あなた、このままだと一年後に死にますよ!」

「……狂うにも程があるぞ、娘」

呆れ果てる魔王。

けれど、私の「知識」は本物だ。

不在票から始まったこの物語。どうせ変わった人生なら、絶望のバッドエンドをハッピーエンドに書き換えてやる!

面白かったらブックマークと下の星を★★★★★にしていただけると嬉しいです!!

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