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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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自転車と通行人A

作者: 紡里
掲載日:2025/12/06

{小説家になろうラジオ大賞}の1,000字以内の短編に応募するために書いた作品です。


怪我の描写があります。苦手な方はご注意ください。

「一昨日、大丈夫だったか?」

「え、何の話よ?」

 まさか、一昨日、自転車で転けた話じゃないだろうな、とムッとする。


 コイツとすれ違った後、段差にタイヤを取られて盛大に転けた。

 制服の下にジャージを履いていたのだが、膝小僧が見事に穴あきに。

 でも、そのおかげで怪我は少しマシだったと思う。



 自分のせいだが、そのまま走り去ったので気がついていないと思った。

 ――いや、思いたかった。



「なんか、転んでるの大丈夫かなと思ったから」


 見てたなら、助けに戻りませんかねぇ?


 百年の恋も冷めたわ。

 ちょっといいかなって思ってただけだから。芽吹く前に枯れた感じ。


 少しえぐれてしまったので、病院に行って薬をもらった。

 今日も帰りに寄らなきゃいけない。



「なあ、大丈夫だったかって訊いてんの」


 なんだか、答えたくないんですけど。


「へーき」

 平気、大丈夫、放っといて。あんたには関係ない。

 やさぐれて、心の中でそんな言葉をつぶやきまくる。

 意味もなくシャーペンをカシャカシャ押して、芯を出す。



 昨日は打ち付けた痛みで、歩けなくて休んだんだよ。

 大丈夫なわけ、あるか!

 化膿止めを処方される程度には、大事(おおごと)だわ。


 大体、「大丈夫じゃない」って答えたら、なんかしてくれんの?

 口だけだったら、黙ってろ。



 小説のヒーローみたいに、カッコよく助けてくれる男子、どこかにいませんかね?




「なんかさ、最近吉田がよそよそしい……」

「あ~、自転車で転けたのを助けなかった後からだろ?」

親友が、興味なさそうな声音で応えた。


「そー。恥ずかしかったのかな。それまでは、ちょっといい雰囲気だったと思うんだけど」

「なんで、助けに戻らなかったん?」

「え、迷って……る内に、結構距離進んじゃって」

「自転車だからな」

「照れくさくなって。今さらかなぁとか」

「で、次の日に休んだから慌てた、と」

 ちょっと咎めるような空気を感じた。


「そんなにひどい怪我だと思わなかったし。遠目で、立ち上がったのは確認したし」

「そこで、お前は通行人Aに成り下がったの、わかる?」


「あ……!」


「たとえば、隣のクラスの岡崎っているじゃん。

 顔でいったらお前の方がいいけど、奴の方がモテる」

「あ、そうなの?」

 別に、モテるとかモテないとか、女子たちの気まぐれじゃん。気にすることなんて……。


「あいつだったら、絶対に戻って保健室に連れてったね」

「あ~、想像できるな」

 俺も助けてもらったことある。あれは、いい男だ。


「だから、モテる」


 あぁ……!


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― 新着の感想 ―
自転車で通学していたら、そりゃ気付いた時には遠く離れていて、勝手に「まあ、大丈夫だろう」って思ってしまうのが普通の男子でしょうねえ。 そういう「効率的」な人の方が仕事は出来るだろうし、老後はしっかりし…
いい男に必要なのはやさしさと勇気ですね〜。 友だち同士の掛け合いが面白かったです!
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