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8 幕間−2

「すごい計画でしたね」


経済省庁舎に戻ったシャハトとトートはシャハトの執務室で顔を見合わせていた。


「そうだなトート。しかし驚いた。総統は我々をあんなに高く評価しておられたのだな」


総統から告げられた第2次4カ年計画の内容もさることながら、シャハトとトートに与えられる権力の大きさに驚いた。

そこまで総統から信頼されている自覚は全くなかったのである。

どちらかというと理屈っぽいシャハトやトートは、ともすれば理屈・理論を盾に総統のプランに異を唱える扱いにくい奴らと言う印象を持たれていると思っていた。


だがどうやら違っていたようだ。


(ゲーリングをどう説得するつもりなのか見ものではあるがな)


「ですがやはり総統は戦争を近い将来するつもりなのでしょうか?人造石油プラントは莫大なコストがかかるばかりで経済の負担にしかならないのですが・・・」


「そうだろうな、全体的に戦争に備えているような計画には間違いなさそうだ」


(だが、多くの点で先進性がある)


今回総統がアウトラインを描いた第2次4カ年計画にはいくつかの目玉があった。


「だが、総統の提示されたアイデアは革新的なものが多い。しかもある意味今のライヒだからできることだ」


「確かに、これは全権力を総統と党が掌握している我がライヒだからこそ取り組める内容ですね」


そう言うとトートは先ほどの会談のさい必死にメモをした手帳を見返す。


「共通規格の強制力を伴う形での推進、そしてコンテナシステム?ですか。それぞれ実施するには強い権限と指導力が必要です。」


その通りだ。

共通規格の推進というのはいうのは簡単だが、産業界の激しい反発が予想される。


共通規格に自社規格が採用された企業はホクホク顔だろうが、外れてしまった企業は良くて社内の生産方式の見直し、悪いとそもそも生産設備を入れ替えないと対応できなくなってしまう。


そうなるととんでもない金額の設備投資が必要になってくる。


(だがその為のユダヤ系金融機関か・・・)


「だが、その為の権限も総統からは約束されている。また、企業の設備の入れ替えや生産方法の調整に伴う兵器の納品遅れなどもある程度許容すると仰っている」


「そこまでお膳立てされると怖いですね・・・」


「そうだ、もはやできないとは我々も言えまい。人造石油もできる限りなんとかするしかあるまい」


「ですが、コンテナシステムは難しいのではないでしょうか?膨大な量の鉄製の箱と、大量のクレーンが必要となります。ライヒにはそれを補うだけの鉄があるでしょうか?」


「そのあたりの調整が我々の腕の見せ所というわけだな」


総統が提示したコンテナシステムは画期的なものだ。


ライヒの経済的復活に伴いライヒ内の鉄道輸送は次第に逼迫してくる傾向が近年見えてきたところにきての総統のアイデアは根本的打開策になりうるものだ。


物資輸送にあたってボトルネックとなるものは何か。


それは荷物の積み下ろしだ。


大量の人手と場所を使い鉄道からおろし、馬車や自動車にまた人力で積み込み、目的地でさらに人力で下ろす。


凄まじい手間なのだ。


これを12m、6m、3m、1.5mの四種類のコンテナに荷物のサイズを集約し機械力を使い荷下ろしをする。


もちろんそんなサイズのコンテナは人力ではとても運べないし、馬車でも運べない。

というより、1.5mコンテナ以外は現状車でも運搬は不可能だ。

コンテナを取り扱うために、クレーン車、トラック、コンテナ用の貨車の新規開発製造を行わないとならない。


遠大な計画だ。

実現すれば間違いなくライヒの物流システムは世界一の効率となり、世界の標準ともなり得るだろう。


だが、今すぐ取り組む必要があるのだろうか?

総統は第二次4ヵ年計画でいくつかの主要ターミナルのコンテナ対応と、主だった軍需工場の引き込み線においてのコンテナ対応は必須だとおっしゃった。


1941年にはコンテナ輸送が開始できるようにすべしとのことだ。


そもそも現状、鉄道インフラの老朽化と貨物取扱量の増大が重なり、国内物資輸送は不足気味だが、根本的な輸送力の増大までもがすぐに必要とはならない。


総統は軍事費を一部削減してでも取り組めと命じられていたが、これまでの総統だと貨車10両より戦車1両を優先するはずなのだ。


(そこまでの輸送力の増大が必要な計画を総統は立てておられるのだろうか・・・)


「はぁ、しかしアウトバーン建設も一旦中止ですか・・・」


残念そうな声をトートがあげる。


それを聞いて私は思わず笑ってしまった。


「いいではないかトート、これでアウトバーン完成も遅らすなと言われたらライヒも我々も過労で共倒れだ」


「それもそうですね」


こうして我々は第2次4ヵ年計画の実現に全力を注ぐことになる。


この時の私の直感が正しかったと知るまでには、もう何年かの時間が必要だった。


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