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2 報告-1

「スペイン内戦はフランコ将軍優位で順調に推移しております」


そう報告をあげるのはノイラート大臣だ。


「それは何よりだ!ライヒからの武器支援が奏功しているに違いないな!」


そう俺がいうと、ノイラート大臣が苦笑いする。


「なんだ大臣。確かに無償ではないが良心的価格で引き渡しているには違いないぞ?」


「まぁ、その辺は外務大臣の私としては複雑な気持ちですが、ライヒのことを思うとベストな手だったと思います。」


シャハト大臣のほうを見ながらノイラート大臣は苦笑混じりにそう答える。


「先金で代金を受け取っているだけですよ、ノイラート大臣。むしろ管理料と運搬費用を請求したいくらいですな」


ライヒ経済界の重鎮中の重鎮であるはずのシャハトが、普段見たことないような笑顔でそう告げる。


その笑顔に釣られ、ひとしきりその場に笑いがひきおこる。


SS(特殊部隊のほう)の活躍で年初早々にライヒは共和派スペインから数百トンにも及ぶ金の奪取に成功していた。


共和派はなんとかして隠し通そうとしていたようだが、フランコスペインにはどこかのルートからか伝わったらしい。


早々に使者が送られてきて、金を返せ金を返せと外務省の応接室でギャーギャー騒いだようだ。


だが、そこはどこかの世界線の弱腰外交の島国とライヒではものが違う。

『ライヒが盗ったというのなら、その証拠を出されてはいかがかな?』と、すげなくあしらったらしい。


(これもライヒの軍事力の裏付けがあってのことだがな)


フランコ将軍の主要な支援先はライヒとイタリアである。

ライヒにそっぽ向かれると勝てる戦も勝てなくなる。


フランコ将軍としては腹立たしいことこの上ないだろうが、引き下がるしかないというのが現実だろう。


(とはいえ、史実より恵まれているはずなんだがな・・・)


『俺たちが盗ったって言うなら証拠だせよゴラァア!』と建前では言ってはいるが、別にライヒもイタリアも金を完全にパクる気はない。


義勇軍の派遣費用や、武器の輸出費用としてその金は流用する。


もちろん金を対価とする派遣契約や売買契約なんて形には『俺たちは金なんて盗ってないぜ?』という建て前があるので出来ないが、まぁその辺はやんわりと合意形成を図っている。


例えば、それ単体でみたら異様に安い武器の売買契約をしたりとかだ。


そして史実と違うのは対価が現にある以上、ライヒやイタリアの支援も手厚いところだ。

回収できるかどうかわからない、武器支援と違いすでに代金を先払い(強奪)してもらっているのだ。

最低限の小火器類だけでなく大砲などの支援火器の提供も積極的にフランコ将軍側に提案している。

ライヒの軍需産業界はウハウハだ。

ついでに外貨不足で涙目だったシャハト大臣もニッコリである。


金がライヒとイタリアの手元にきた影響は武器支援の質・量の向上のみにとどまらない。

フランコ将軍側の戦略にも大きな影響を及ぼしている。


当初はライヒとイタリアから出来るだけ支援を引き出したうえで、時間をかけて内戦の主導権を握るという絵をフランコ将軍は描いていたのだが、その戦略は方針転換を迫られることとなった。


なんせ、ライヒもイタリアも頼んでもないのに武器の支援や義勇軍の派遣拡大を提案してくる。


イタリアは当初、ドゥーチェ子飼いの黒者隊しか送り込んで来なかったが、まともに正規軍すら派遣しようとする始末だ。


『時間がたつほど武器や兵士の押し売りをされる』という、どうしようもない状態となりつつあるフランコ将軍は、それまでの遅延戦略から一気に共和派を追い詰める戦略へと転換することになった。


事実、つい先月バスク地方を制圧したのに続き、早くもマドリードの再攻撃の準備にかかろうとしているらしい。


イタリア軍や、ライヒから派遣されているコンドル軍団にも声がかかっているらしく、本気の攻勢となりそうな気配だ。


(この調子でうまくいけば前倒しでスペイン内戦は終結するかもな)



「それは何よりだなノイラート大臣、シャハト大臣。まさに素晴らしい!引き続きライヒは手厚く支援するとフランコ将軍には伝えたまえ」


「わかりました。総統閣下」


誰しもうまくいっている事に関しては嬉しいものだ。

そう答えるノイラート大臣の顔も緩んでいる。



「さて、他の報告はあるか?」


「では、今度は食糧省から報告させて頂き・・・」


その後も俺は次から次へと報告を受けるのだった。






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