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34 ちょび髭総統と国民自動車

「どうです閣下!斬新なデザインでしょう!」


空冷エンジン特有のバタバタとした大きなエンジン音があたりに響く。

そのエンジン音に負けないよう大声で自信満々に語っているのはポルシェ博士だ。


(うーん、個人的には斬新というより懐かしいデザインといった感じだけどな)


俺の目の前には一台の小型自動車が鎮座している。

全体的に丸みを帯びたデザイン。

RR方式の空冷エンジン。


俺が知っているものと比べるといくつか異なる点はあるが、まぎれもなく例の傑作自動車の卵である。


「そうだな博士、まったくもって素晴らしいデザインだ!まさに機能美と言えるだろう!」


もうここまで言えば多少車に詳しい者なら誰しも分かるだろう。

俺の目の前には伝説的自動車「ヴォルクスワーゲン ビートル」のプロトタイプ車両が鎮座している。


史実では戦前に基本設計は完成し、なんなら量産する工場までもが完成していた。

のだが、戦争がおこり結局は一般市民への販売は戦後にまで持ち越すことになってしまった名車中の名車だ。


そしてこの名車は市民の手元にこそ届かなかったものの、キューベルワーゲンとその名を変えて国防軍の足を支えることになった。

4輪駆動ではなかったが、基になったビートルの完成度の高さもあり連合軍のジープと双璧をなす活躍をすることになる。


(戦闘に直接かかわる車両ではないが、間違いなく国防軍のかなめとなる車両だ)


そう思ってみると、目の前のコロンとしたフォルムのこの車がとんでもなく頼もしく思えてくる。


「それでポルシェ博士、このビートルはいつから量産が可能なのかね?」


「それなのですが、斬新な設計が多く設計を煮詰めるに必要があります。また、量産技術の確立自体もまだまだこれからという具合でありまして・・・」


(やはりそうなるか・・・)


ライヒには多くの先端技術があり、優れた加工技術もある。

だが国内市場の小ささ、世界市場のブロック経済化のあおりもあり量産技術に関してはいまいち発達しきれていないのだ。


「ある程度のコスト高は許容する。ひとまず軍用モデルとして先行量産をしてくれ。馬力は妥協できないが100kmでの高速巡行はひとまず出来ずともよい。70kmで巡行できればそれでよい。」


「軍用ですか?煮詰まっていないパーツを既存の高価な部品で代替すればある程度先行量産は可能とおもいますが、よろしいのですか?このビートルを軍用車両化すると最近国防軍がトライアルをしたという統制型小型軍用車と仕様が被ると思うのですが?」


「あぁ、それはかまわん。統制型軍用車は期待外れのものだった。ライヒの悪い癖が相乗効果を生み出したようなものだよあれは」


この頃国防軍は使用する車両の統一化をはかり、『統制型自動車』なるものを採用しようとしていた。

これまでは予算不足の中、国防軍はてんでんばらばらの車両をつかっていた。

それでは運用面で支障をきたす為、車両を統一して整備性などを向上させようというコンセプトの計画だ。

コンセプト自身は悪くない。

ただ、ライヒの工業力がともなっていない。

シャハトに共通規格の進展を急がせているが、その効果がでるにはまだしばらくの時間がかかるだろう。


そしてこれはライヒのいつもの悪いくせなのだが、凝りすぎなのだ。


四輪駆動なまでは許せるが、四輪操舵の機構をつけるのはどう考えてもやりすぎだ。

そんな凝ったことをするから、車両重量は重くて走破性はわるい、整備性は悪い、高コストで生産性は悪いの、負の三拍子がそろったろくでもない車両となってしまった。


つい先日のトライアルではちょび髭節を炸裂させてボツに追い込んできたところだ。


とは言え、国防軍に自動車は必要だ。

それこそ電撃戦を行うためにはいくら自動車があっても足りない。


オペル社に3トントラックを量産させるべく、既にベルリン郊外で新工場の建築も始まっているがそれだけでは足りない。

そこで少しでもキューベルワーゲンの生産が早まるよう調整をするわけだ。

新工場の建設も前倒しとなるため、金欠のライヒとしては苦しい展開となる。

だが統制型自動車を生産する費用である程度は賄い、残りはシャハトにユダヤ資本から金をせしめるしかないだろう。

ビートルの有用性をうまくアピールできれば融資としての魅力は十分にあるはずだ。


(そしてこれはものになるか分からないが・・・)

俺はキューベルワーゲンの仕様と、とあるビートルの派生型の仕様を伝える。


「しかし総統閣下。小型の軍用車車両の生産は分かりますが、この『ケイトラ』型とはなんですが?キャブオーバー式の超小型トラックのようですが」


「うむ。これはいいものだ。このような小型トラックは痒いところに手が届く存在だ。国防軍のみならずライヒ中がその存在を欲するときがくる!頼んだぞ!ポルシェ博士!」


「承知いたしました。ご期待に沿えるものに仕上げさせて頂きます。」


それからもあれやこれやと話し、俺とポルシェ博士はこのチビの車の大きな未来に思いを馳せるのだった。








高速巡行を妥協すればビートルはもう少し早く量産出来るのでは?と思っております。

そして『ケイトラ』は軽トラです笑

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― 新着の感想 ―
軽トラック便利ですよね。南相馬でも役立ってくれた。
ドイツ語読みだとフォルクスヴァーゲンだと思います。
在日米軍基地には大体ある、日本製の軽トラ バギーより早くて搭載量が多くて好評らしい 難点は、大柄な米兵のニイチャンたちが装備品付けてると縮こまらないと乗れない事か
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