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33 西安事件-3



「なに?!本当に張学良が蒋閣下を襲撃したのか?!」


ドイツ派遣軍事顧問団長ファルケンハウゼン将軍は衝撃を受けていた。


「はい閣下。張学良将軍は手勢120人を率い西安の迎賓館に逗留中の蒋閣下を襲撃いたしました。しかしこちらの警告を蒋閣下は聞き入れて頂いていたようで、機関銃等の重火器で武装した精鋭を護衛に配置。襲撃をなんなく退けたとのことです」


「・・・それで張学良はどうなったのだ?」


「張将軍は形勢不利とみると配下をしんがりに残し撤退されました。蒋閣下も追撃を行ったそうですが取り逃がしたとのことです。おそらく共産党支配地域に撤退されたものと推測されます」


(しんがりに残し撤退?部下を見捨てて逃げただけだろう)


生粋のプロイセン軍人たるファルケンハウゼンにとって張学良の行動はとても看過できない、みっともないものに映った。

とは言え、張学良の戦下手はここ最近の軍歴が示す通りであり、ことさら意外というわけでもなかったが。


「蒋閣下は今回の対共産党の軍事作戦を一時中断するとのことです。」


「それは・・・仕方あるまい」


身近な足場を崩されたのだ。


(あと一歩のところとはいえ、いやあと一歩だからか)


あと一歩で共産党を撃滅し、中華を統一することができる。

だがそのような時が一番あぶない。

野望をもつ人間にとって統一がなされるということは必ずしも良い事ではない。


中華が統一されるということは現状で勢力が固定されるということ。


最後に一旗揚げようなどと考える人間が出てきかねない。

これまではそういう人間が出てくるという可能性の話であったが、実際に実力行使にでる人間が出てきたのだ。

こういう事は一人で出来るものではない。

張学良には必ず協力者がいるはずだ。

その全てをあぶりだすまでは一旦地固めをすべきだろう。


(リアリストの蔣介石らしい判断だな)


「また、蒋閣下よりファルケンハウゼン将軍閣下に今回の件の情報提供に厚くお礼を申し上げると言付けがあったそうです。また、ライヒ本国にも謝意をお伝え頂きたいとのことです・・・」


「そうか、蔣閣下のことだ、後日なんらかのお礼をくださることだろう」


「それは楽しみですな」


そう言って冗談っぽく副官はわらった。

本国からの情報を右から左に流しただけではあるが、これは現場ならではの特権であろう。


「しかし、閣下。よく本国はこんな情報をつかんでいましたね。現地で将兵の練兵にあたっている我らですら全く気がつかなかったといいますのに・・」


(そこなのだ一番の疑問は)


何週間か前、本国から急ぎの連絡員がきたのだ。

飛行機を乗り継いで駆けつけてくるいう急ぎぶりでだ。

そして何を語りだすかと思えば、『張学良が蔣介石の暗殺もしくは拉致を企ている」というないようだ。


ちょび髭党の妄想かと一笑に付したいところだったのだが、この連絡員のメッセージの送り主が問題だった。

最近にわかに幅を利かせ始めたリッベントロップではなく、ノイラート大臣だったのだ。


こうなるとファルケンハウゼンも容易に無視はできない。


しかも必ず蔣介石に伝えるよう厳命されており、かつもし蔣介石が聞き入れず十分な護衛をつけない場合軍事顧問団が直接護衛戦力を手配するようとまで指示が出ていたのだ。


(蒋閣下が柔軟な頭の持ち主でそこは助かったがな)


幸いなことに、蔣介石は訝しみながらも護衛の増強を承諾したことにより軍事顧問団は特段の行動をおこさずにすんだ。

結果として蔣介石は無事に襲撃を乗り越え、軍事顧問団とライヒはますますの信頼を得ることができ良いことずくめであったのだが、それだけにひっかかるのだ。


(いったいどうやってこの情報を仕入れたのか)


ライヒはかねてから中華民国に軍事顧問団を送り込んだり、武器を売却したりと、なかなか中国という国への関心はちいさなものではもともとなかった。


とは言え、今回の情報の精度はあまりにも高すぎる。


(もしかして自作自演なのか?)


ふとそんなこともファルケンハウゼンの脳裏をよぎった。

こんな襲撃をピンポイントでつかむなど、とんでもない諜報網をもっているか自作自演のどちらかである。


(だがそのどちらだとしてもとんでもない組織力だ)


自作自演にせよ何にせよ、国民党自身が現地の顧問団にも全く悟られることなく、これだけの事件を乗り切ったのだ。

未来を知ってでもいない限り、とんでもない諜報組織を築いていないと成しえないことに間違いはない。


(となるとこのもう一つの任務も現実味を帯びてくるのか・・・?)


今回ファルケンハウゼンが本国からの連絡員に告げられたことはいくつかある。

その内の一つは「張学良の蔣介石襲撃」だったがもう一つとんでもなく大きな任務が残っていた。


(蔣閣下はいったいどんな顔をすることやら)


ある意味、今回の情報よりもよほど衝撃的な提案を行うことになる。

その提案を行う自らの貧乏くじをファルケンハウゼンは呪うと同時に、一周まわってその時蔣介石がどんな顔をするのか楽しみに思っている自分にあきれるのだった。





滅茶苦茶、誤字をしておりました。

ご指摘頂いた皆様ありがとうございます。


おっちょこちょいな作者ですが、これからもよろしくお願いします

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