24 陸軍兵器改革-1 マンシュタインとグデーリアンと電撃戦
俺の目の前には2人の軍人が座っていた。
機甲師団を指揮するもの、学ぶ者なら今後誰しもが聞くことになる名前。
ライヒの誇る将来の名将軍。
マンシュタインとグデーリアンだ。
だが、例によって例のごとく二人の表情は困惑していた。
だが、一方で『やはりこちらにもきたか』という表情も混じってした。
(流石にこれだけ関係各所に話をしていたら広まるわな)
この数週間で、海軍・空軍・外務省・経産省と立て続けに会談を行い。
それぞれの場で大きな方針転換を伝えてきた。
余程の情報弱者でない限り、将軍クラスともなると耳に入るだろう。
そして、陸軍だけがまだ何も言われていない事を。
そんな中でちょび髭に呼び出されたらそりゃ警戒もするだろうな。
「二人とも身構えずとも良い。陸軍に関して私は大きく口を挟むつもりはない。特に諸君が整備しようとしている機甲師団に関しては、その運用についても全く口を挟むつもりはない」
それを聞いて二人は安心したようだ。
この二人が整備しようとしている機甲師団。
未来でこそ軍を志す者なら知らぬものなどなく、現代軍に不可欠な存在が機甲師団なわけであるが、この時代では違う。
むしろこの二人が異端児なのだ。
この時代の人間はまだまだ次の戦争の形を、前の大戦の延長線と捉えている者も多い。
延々と塹壕を掘って、寸土の奪い合いに終始する。
そんな戦争。
他の国々や人間は各兵科の縦割りという趣旨もあり、戦車を集中運用するという視点は欠けている。
実験的に機甲師団を試してみる国は多いがほとんどはものにならず実験で終わっている。
そして運用面の問題もそうだが、戦車自身も従来の騎兵科に所属する巡航戦車と、歩兵科に所属する歩兵戦車にそもそも分かれてしまっている。
その典型的な例が英国とフランスであろう。
とは言え、ライヒの中にも少なくない人間がその旧態依然とした認識に囚われている。
国軍総司令部OK Hの面々は特にそうだろう。
そんな中でこの二人は考えつくのだ。
電撃戦という概念を。
だが、そもそもこの機甲師団による電撃戦というものは実は目新しいものではないのだ。
前大戦末期にドイツ帝国が行った浸透戦術の焼き直しと言える。
もっというと電撃戦を戦車や航空支援抜きでやろうとしたのが浸透戦術とさえ言えるだろう。
だが浸透戦術は局所的には成功したが戦局を変えるには至らなかった。
なぜなら航空偵察を行えない以上、敵の弱点の発見には時間がかかる上に、浸透が成功したところで携帯型の無線機がない時代に突破した戦線を拡大維持すべく後続の部隊を送り込むことが出来なかった。
そして送り込んだところで当時の鉄道に頼り切った兵站システムでは部隊を維持することは出来なかった。
要は柔軟性のある部隊で敵の弱点を突破し、後方の司令部や兵站を叩くというコンセプトは正しかったがそれを達成する技術が追いついていなかったのだ。
航空技術・車両技術・電子技術の進展、その全てを組み合わせて初めて成り立つ戦術である。
よく未来人でもないのに思いついたものである。
とは言え未来人の目でみると修正が必要な点もある。
特に兵器関係がそうだ。
そこをどうにかする必要がある。