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21 外交-2 リッベントロップとノイラート大臣

「お呼びでしょうか閣下?」

「総統閣下!お久しゅうございます!」


そう言って入ってきたのは、駐英大使のリッベントロップとノイラート外務大臣だった。


(聞きしに勝る仲のわるさだな)


この二人、めちゃくちゃ仲が悪い。

仲が悪いというというか、互いの事を敵視しているといっても言い。


ちょび髭党の中では新参者であるリッベントロップは非常に上昇志向が強い。

例の3人組の中に入りこんでいくことを野望としている節もある。

入り込めないにせよ対抗するだけの力を欲している。

だからこそ俺にめちゃめちゃゴマをすってくるし、駐英大使という立場でありながらこうやってホイホイとライヒに帰ってくるのだ。


一方のノイラート外務大臣は所謂エリートだ。ドイツ帝国時代からライヒに仕えるまごうことなきエリート。外務省の官僚達の受けも悪くなく、本来であれば20歳も年下のリッベントロップなどライバルにすら成りえないそんな御仁だ。


だが、近年この二人の力関係は伯仲し、それどころか一般市民やちょび髭党の中ではリッベントロップを推す声すら聞こえ始めている。


その理由は昨今の急激に変化する国際情勢とリッベントロップの狂人ぶりが何故かシナジー効果を生んでいることだ。


その成果として、英独海軍協定の締結やラインラント進駐が挙げられるだろう。


これらはまともな感覚をした外交官であるなら処理しえないイベントである。


しかしながら、狂人というのは恐ろしいものだ。

ひたすらに突っ張ることでなんとかしてしまったのだ。


勿論、外交官としてはノイラート大臣の考え方の方が正しい。

それぞれの協定などでは有利な条件を引き出せたとしても全体的な流れとしてライヒは孤独の道をつきすすんでいる。


だが、そんな全体としての流れなど一般人は分からない。

というか未来人というチート持ちの俺だから気付ける節すらある。

とは言え、結果として近年はノイラート大臣よりリッベントロップの方が成果をあげており、大臣は苦しい立場に追い込まれつつある。


「久しいな、リッベントロップ。向こうの国ではどんな具合だ」


「ありがとうございます!やはりライヒが一番です!独英同盟の進展は・・・はかばかしくないですね。申し訳ございません」

(久しいなというのは少し皮肉だったんだがな)

その皮肉にどうやらノイラート大臣は気付いたようで、意外そうな顔をしている。


もともとちょび髭の指令によりリッベントロップは駐英大使となっていた。

独英同盟の締結を最終目標にしイギリスに送り込まれていたわけだ。


だが、そんなもの容易に成立する訳もなく、その機運を高めることにすら難儀しているようだ。


「まぁ仕方あるまい。腐っても大英帝国だ。じっくり取り組むほかあるまい」


「ありがとうございます!粉骨砕身いたします」


(逆効果にならなけばいいがな・・)


この男、基本的に狂人なので敵を多く作る傾向にある。

全く外交官として信用ならない・・・


「うむ、頼んだぞ」


そう言うと俺はノイラート大臣に顔を向けた。


「今回二人を呼んだのは他でもない、今後のライヒの外交政策を説明するためだ」


「それはいったいどの様なものでしょうか?!」

「承知いたしました。お聞かせ願います」


前者の返事はとんでもなく好意的、後者は渋る内心を押し隠したといった雰囲気だ。

どちらがどちらかは言うに及ばないだろう。


「ライヒは極東において大日本帝国と手を結ぶ。中華民国には今後一切肩入れはしない」


「お待ちください!あんな極東の島国と手を結んだところでライヒには何も得るところがございません!前大戦では大した力もないくせに火事場泥棒的に我がライヒの極東権益をかすめ取っていったのですぞ!」


今月締結予定の日独防共協定を手配したリッベントロップは余裕の表情だが。

かねてから親中華民国寄りの外交スタンスであったノイラート大臣は憤慨している。


「ふむ、大臣は反対のようだな」


「当然です!日本などと手を結ぶより中華民国を手を結ぶべきです。かの国は貧しいですがそれを補って余りある人口があります。ライヒの産業界にとって有力な市場になりえます!」


(同じことを新大陸の超国家も考えているわけなのだがな)


「どうやら大臣にはもう少し話をする必要があるようだな。リッベントロップ、お前は日本の大島武官とこの後打ち合わせだろう。25日楽しみにしていると伝えておくように」


「承知いたしました!では失礼致します!いつでもお呼び下さい!ハイルちょび髭!」


(いや、そんな暇あったらイギリスを懐柔してこいよ・・・)


そう言ってリッベントロップは出ていき、後には不満そうな顔をしたエリート官僚とちょび髭が部屋にのこされた。


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