20 外交-1 スペイン内戦
ライヒの冬は早い。
11月には昼でも10度を超えることはほぼなくなる。
ちょび髭の記憶として俺の中にも知識としてあったが、やはり日本との温度差には驚かされる。
俺は先月、元英国首相のロイド・ジョージとの会談を経て、大英帝国の承認を取り付けた。
この時代、英国がライヒに期待していることとしたらソビエトへの防波堤だ。
ある程度のことに関しては、対ソ連・抗コミンテルンということで理解をしてもらえる土壌はある。
そしてその理解の中、ライヒが今日行うのはフランコ=スペインの承認だ。
今年の7月に始まったスペイン内戦において、フランコ将軍は反乱軍のリーダー格の一人である。
いや、正確にいうとリーダー格の一人であった。
8月からライヒおよびイタリアが軍事支援を開始することで反乱軍の実質的なリーダーとなり、いまでは押しも押されぬ反乱軍の筆頭である。
反乱軍と相対する人民政府をフランスが支援しているので、フランスとの関係悪化が見込まれるが、そこは未来人の俺には特権がある。
この先、フランス政府は内閣不一致により崩壊する事を知っている。
むしろ、その辺の知識なしにわりと好き勝手していたちょび髭は一周回ってすごい。
当初は懐疑的に見ていた人間も、次第にちょび髭に肩入れするようになるわけである。
なんせ、3年後のポーランド侵攻まで英・仏の反応をなぜか当て続けていくのだから。
ともあれ俺は史実通りフランコ将軍を公認していくのだが、史実と違いスペインに派遣するコンドル軍団は大幅に増強する。
空軍をある程度増強するのに加え、イタリア軍に混ぜる形である程度の部隊を送り込む。
そして史実では人民政府にも武器を売っていたが、それは取り止めるしその他もろもろの内戦長期化計画も全て取りやめる。
史実では世界の目からライヒの行動をカモフラージュする目的もありそのような政策を実施したが、どの道それにも限界がある事はわかりきっている。
であるのであれば、内戦長期化を図るのは意味がない。
むしろ数年後には好意的中立、願わくば枢軸国側として世界の舞台に立って頂きたい。
そのためには内戦を出来るだけ短くし、かの国の荒廃を抑える必要がある。
というのも理由ではあるが、シンプルに中島勝が減らせる犠牲者は減らしたいと考えている為でもある。
こちらの貢献度が高ければ、内戦後にフランコが行う虐殺も緩和出来るかもしれない。
その為にも・・・
「ゲーリング、降下猟兵の訓練の進展はどうだ?」
「はい、総統閣下。わがルフトバッフェ所属の者はもう間もなく訓練を完了できます」
自信満々でゲーリングが答える。
どうやらルフトバッフェの方針転換に関しては納得いってくれているようだ。
いつもの貴族然としたゲーリングに戻っている。
「宜しい、では陸軍からの出向者を受け入れ組織の拡大に励め。来年の夏には中隊規模での降下が可能なようにしたまえ」
「・・・来年の夏ですか・・・。まだまだ降下猟兵自体の戦力化そのものが途上です。部隊装備すら定まっておりません。。せめて後数年は必要かと・・・」
(うーん、まじか。)
あの常に(なぞに)自信満々なゲーリングが即答しないということは本当に戦力化はまだまだなのだろう。
要所要所をお得意の降下猟兵で抑え、内戦を早期に終結させようと考えていたのだがな・・・
「そうか、ゲーリングがそういうのであれば来年には間に合わんのだろうな。なに、では急ぐことはない。じっくりと部隊錬成にはげみたまえ」
どうやら俺のスペイン内戦干渉計画はどうやら最初から暗礁に乗り上げたようだ。
(違う手を考える必要がある・・・か)
取り敢えずはまだまだ時間的余裕というか、解決に時間がかかるスペイン内戦は棚の上に上げることにした。
「ハイルちょび髭!」
そういって颯爽と(?)ゲーリングは出て行った。
そして・・・
「お呼びでしょうか閣下?」
「総統閣下!お久しゅうございます!」
そういって二人の男が部屋にはいってきた。
GW終わりましたね。。。頑張りましょう。。。