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19 戦術空軍とルフトバッフェ 幕間

「これが新型機の要求項目ですか・・・」


ルフトバッフェ技術局長たる私はゲーリング閣下から伝えられた新型機の要求項目に目を通していた。


新型攻撃機


・双発機とすること

・単座型・複座型を最小限の改造で運用できる事

・軽爆撃機型は250キロ爆弾を胴体内に4つ搭載可能なこと、また内翼に250キロ爆弾を左右1発づつ搭載可能とする事

・攻撃機型は胴体下に800kg航空魚雷を装備可能とする事

・250キロ爆弾4発搭載で2000キロ以上の航続距離を確保すること

・ドロップタンクに対応すること

・後部機銃は搭載しないこと

・軽爆撃機型は爆弾倉のみに搭載時で時速500キロ以上・重戦闘機型は時速550キロ以上の速力を発揮すること

・重戦闘機型は機首に中口径機関銃6門ないし大口径機関砲4門。必要に応じて外翼の燃料タンクを左右2門づつ中口径機関銃に交換可能とすること。

・急降下爆撃は考慮に入れないこと


「総統閣下はこの攻撃機に重戦闘機と軽爆撃機を統合せよとのことだ。ウーデット、各社に仕様を伝えるように」


「ゲーリング閣下、攻撃機の意図はよくわかりました。しかしながらこの重爆撃機計画の続行というのはいかがなのでしょうか?」


同じく、閣下から要求項目を聞かされているケッセルリンク軍政部部長が疑問を呈す。


(部長は軽爆撃機派だったな)


ケッセルリンクは戦略爆撃よりも戦術爆撃を重視する傾向にあった。

私もルフトバッフェの任務は、あくまで陸軍の援護がその主任務であると考えていたためスツーカを筆頭に急降下爆撃機こそが爆撃機の本流だと考えていた。

しかし、総統閣下のお考えは違ったようだ。


新型重爆撃機


・4発機とすること

・250キロ爆弾を12発もしくは500キロ爆弾を10発搭載可能とする事

・3500キロ以上の航続距離を確保すること

・全備重量時で450キロ以上の速力を発揮すること

・主要区画は中口径機関銃への十分な防御力を確保すること

・高翼配置とすること

・前輪式降着装置とすること

・銃座の充実ではなく、装甲・速力の充実を図ること

・輸送機型も併せて検討する事


まごう事なき重爆撃機と言える。

この狭いヨーロッパにおいては十分過ぎる航続距離を持っている。

このような爆撃機を大量配備する事ができれば、それだけで戦争を終わらせることができるかもしれない。


(だが問題は・・・)


「このような爆撃機を大量配備することがライヒに可能なのでしょうか?」


思わず弱気な発言が私の口から飛び出る。


4発爆撃機ということはエンジンが4つついているということだ。

何を当たり前なことをと思われるかもしれないが、航空機エンジンは自動車のエンジンとはわけが違う。


小型のものでも車の何倍もの排気量があり、しかも軽量・高出力を志向しているのでエンジン寿命も短い。


自動車が国中に溢れており大量のエンジン供給能力がある海の向こうの超国家なら別だろうが、今のライヒには実現困難に思える。


(しかも立場上私はその実現に責任を負う必要がある)


私はルフトバッフェ技術局長ウーデットなのだ。

この新型機たちをものにし、各飛行隊に届ける重責がある。


(技術局長なんて立場受けるんじゃなかった)


つい数ヶ月前に就任したところなのだ。

その際にも私はゲーリング閣下に辞退の申し出を行なっていたというのに・・・


「そのための主力エンジンの見直し。。。ですかね」


ケッセルリンクがボソッと呟く。

普段は微笑みのアルベルトと呼ばれるケッセルリンクが難しい顔をしている。


それを聞いて私もはっとなる。


「そうだ。総統閣下がここ数週間で指導されてきた事は全てが一貫した合理性がある。全てが体系的に噛み合った結果、ライヒの国力・戦争遂行能力が飛躍するそんな予感が感じられる」


そう言うゲーリング閣下の顔が輝いている。

先日のトライアル直後のお通夜のような顔とは大違いだ。


(だが、相当困難な事を要求されていることに違いはない・・・)


その内の一つはユンカースとダイムラーの規格統一だろう。

次期エンジンからユンカースとダイムラーの各種部品の共通化を図ることを指示されている。


そればかりか、そのDB601、jumo211のエンジンの更に次のエンジンは2社で共同開発するようにとのことだ。


それはすなわち、ライバル関係の2社に互いに全ての手の内をさらけ出せと命令しているに等しい。

普通ならそんなこと不可能だ。


(だが、その為の経済省との連携か)


各企業への資源の割り当てを決めている(今のライヒには十分な外貨がないため各社が野放図に資源の輸入ができないのだ・・・)経済省とルフトバッフェの強力なタッグのもとで強引に推し進めよという意図があるのだろう。


しかも機種も大幅に統合されそうな構えだ。


新型軽爆撃機がHe111やDo17といった双発爆撃機を統合し、重爆撃機とその派生型の輸送機が今後のルフトバッフェの遠隔地への爆撃・輸送任務をこなすようになるだろう。


機種が減るということは生産に携わる会社が少数になるということ。

共通規格化を推し進めることで一応ライセンス生産を行い生産ラインを維持することへの配慮は考えてはおられるようだが・・・


(今後、航空業界はその勢力図を一変させるかもしれないな)


私はそんな予感を胸に抱きつつ、ゲーリング閣下とケッセルリンクと打ち合わせを進めるのだった。


性能としてはモスキートのようなものと、B17のようなものですね。

詳細も後日のお楽しみということで・・・

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