14 ベルリン航空ショー -1
空軍回も長そうです。
この後陸軍回があり、さらには外交回もあります。
早く戦闘を書きたい笑
(転生してきてよかったぁぁあ!!)
これはとてつもなくしょーもない感情だと我ながら思うが、心の声がとめられない!
おそらくほとんどの女性(※差別とかそういう意図はありません。)にはあまり共感はしてもらえないだろう。
平和主義者の方々には批判されるかもしれないし、これから自分がやろうとすることを考えると気まずく思うべきかもしれない。
だが、男性(※差別とかそういう意図はありません。)諸君には理解してもらえるだろう。
中島勝もちょび髭もどちらもひどく興奮している。
なぜなら、目の前にBF109がいるのだ。それだけではない。試作機でおわったHe112もいるし双発重戦闘機BF110もいる。さらにはHe111、Ju87スツーカ、Do17などの爆撃機もそろい踏みだ。
俺は今、ベルリン郊外のシュレースヴィヒ空軍基地にいる。
3週間前、ゲーリングに命じたルフトバッフェの会合なのだが、新型戦闘機Bf109のお披露目とだけあって空軍基地で会合が開かれることになった。
そして当初はBf109のお披露目に過ぎなかったのだが、俺がほぼ全ライヒの航空産業の面々に参加を命じたことで、各メーカーも試作中の機体も含め諸々の機体を持ち込んでくることになった。
その結果、目の前にはまるで軍用機のデパートのような、全男子垂涎の光景がひろがっている。
こんな姿、戦後の世界では見ることがまずできない。
それどころかこれだけの最新鋭機種が一堂に会する機会なんて今の時代でもほぼないだろう。
その証拠に傍らに控える、ゲーリングもウーデットも興奮している。完全に顔が少年の顔にもどっている。
さらにはこういう場にはおなじみとなったシャハトまでもが興奮している。
というか、呼んではいないはずのトートまできている。
そして他社の最新鋭の機体を間近にみるチャンスとだけあり、各社の技師も目を輝かせている。
シュミット博士やタンク博士にいたっては、完全に目が狂人のそれに見えるほどだ。
「どうです総統閣下、この新型戦闘機Bf109は!小型軽量機体に強力なエンジンを搭載したことにより生まれる圧倒的な速度、上昇力。そして生産性!まさに、世界最強の戦闘機です!」
と、ゲーリングは誇らしげに語る。
それを聞き、シュミット博士は誇らしげな顔をしているし、ハインケルの技術者は悔しそうな顔をしている。
ちなみにこの時点では比較にすらならない低性能機しか出せなかったタンク博士は次の戦闘機設計に生かそうとBf109とHe112をなめるように見ている。
(確かに素晴らしい戦闘機だ・・・平時ならな)
Bf109は素晴らしい戦闘機だ。機体をコンパクトにまとめたことで量産性を確保しつつ、コンパクトな機体に軽量小型高出力のエンジンを搭載することで、速力・上昇力とも優れている。
翼なんて、機銃も着陸脚の機構もはいっておらず非常に薄く仕上がっており非常に美しい。
非常に素晴らしい戦闘機なことに間違いはない。
非常に無駄なく機体がまとめられている。
だが、無駄がないというのが問題でもあるのだ。
機体構造に余裕がないため、今後の発展性がないのだ。
翼が薄すぎて翼内への武装強化も難しい。
着陸脚の構造も華奢すぎて機体重量の増加に対応できない。
また、この時点では開発が間に合っていないが搭載予定の主力エンジンにも問題がある。
ダイムラーベンツが供給することになるDB600とその発展型達だ。
小型軽量なのはいいが、ローラーベアリングの多用をはじめとし構造が複雑すぎる。
平時ならいいのだ平時なら。
軍の発注規模が、メーカーの生産力を大幅に上回ることなどないし、万が一上回れば事情を説明して生産規模の拡大まで時間を貰えばいい。
戦闘機の能力向上も付け焼き刃で小規模改良を進めるよりは、不具合をある程度まとめて解消していけばいい。それもゆっくりと時間をかけて。
だが、戦時は違う。
1機でも多くの戦闘機を前線が欲してくるのだ。
1キロでも敵よりも早く飛べる戦闘機をパイロットが欲してくるのだ。
となると生産ラインを大きく変えることなく性能向上を目指せる戦闘機が必要となってくる。
こうした目でみるとBf109への評価は自ずと定まってくるのだ。
ゲーリングもシュミット博士も誰もそんな目でBf109を見ていない。
だからこそHe112よりBf109、jumo210よりDB600を良いものとして選んでしまうのだ。
もっともこれは当たり前だ。
この時期、まさか4年もしない内に全世界を巻き込んだ破滅的な戦争がおきるとは誰も考えていない。
当のちょび髭をはじめとして、ライヒの皆もそんなこと全く考えていない。
だからこそ第2次4か年計画の完遂をもって軍備を万全に整えるという発想が出てくるし、Z艦隊計画(この世界では既に俺がその芽を潰したわけだが)などという八八艦隊計画も裸足で逃げ出すような大規模な海軍整備計画を考えたりするのだ。
「素晴らしい戦闘機だ!まさにライヒの空を守るのに相応しい!」
俺がそうほめるのを見て、ハインケルだけでなくルフトバッフェの士官の何人かも微妙な顔をしている。
このBf109だが、実はルフトバッフェも満場一致で受け入れた訳ではないのだ。
ファストバック型キャノピーを採用したBf109は後方視界が良くない。また翼面荷重が高い小さな翼を採用したことで運動性もあまりよくなく、また着陸速度も高翼面荷重に比例する形で早いものになってしまっている。
しかも胴体に着陸脚の取り付け位置を持ってきた結果、車輪同士の間隔は狭くなりより着陸が難しい戦闘機となってしまっている。
それに対してHe112は広い翼面積の楕円翼を採用した結果、機体重量及び空気抵抗が増え機体の最高速度と量産性は犠牲になったものの、引き換えに高い運動性を有している。
また、水滴型キャノピーを採用していることで良好な視界を確保し、さらには着陸脚の間隔を広くとり着陸時の安定性も優れている。
正直、2機とも一長一短といったところで、それは当時のルフトバッフェも分かっていたのだ。
分かってはいたのだが、王立空軍がスピットファイアを制式採用した等の情報を受け焦ってしまったのと(He112は設計が煮詰まっているとは言えず、墜落事故を起こしたりもしていた)、シュミット博士の政治力もありBf109の制式採用が決まったのだ。
(ここで活きてくるのが転生チートってわけだ)
「だが、現状での制式採用は不可とする」
「「「「「「「なっ!」」」」」」」
その場の全員がへんな声をあげた。
将来の苦労を知っている俺がそのままBf109を主力戦闘機に採用するわけがなかった。




