表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/114

12 海軍再軍備-4

「VII型潜水艦の試験運用はどうなっている?」


「現場からの評価は極めて良好です。取り回しが容易な優秀艦であるとの評価を得ております」


デーニッツが誇らしげにそう答えた。


「ですので、このままVII型を改良していき主力潜水艦としていく予定で考えております。ただ、海軍内においても航続距離を懸念する声があるのも事実です。総統閣下もやはりVII型の航続距離を懸念されているのでしょうか?」


今年になって、順次竣工したUボートVII型は700トン程度の航洋型潜水艦(沿海型の小型潜水艦ではなく、大海原での通商破壊を想定している)としてはかなり小型の部類だ。

同時期の他国の潜水艦が2000トンを超えるサイズだったことを考えるとそのコンパクトさは際立ったものがある。


コンパクトなだけあって、生産性は良好でかつ機動力にも優れた艦であったため、史実でも主力の潜水艦として活躍した。



著しい損耗率を伴って。



これはVII型が悪かったと言うよりは、今後数年の間で凄まじい速度で進歩する電子技術にこの当時の潜水艦のコンセプトが陳腐化されてしまったためだ。


この当時の潜水艦は潜水艦と呼ばれてはいるが、作戦行動中は基本的に浮上していることが想定されていた。


航空機が未発達で、レーダーなんてまだ実証試験段階である1936年の時点ではどの国も似たような認識だ。


だからこそ艦型も水上航行に適した形をしているし、8〜14cmくらいの大砲をどの国の船も積んでいたのだ。実際、大戦初期だと単独航行している商船を大砲で撃沈なんてこともしていたし、無制限潜水艦戦を宣言する前段階としては、無警告でいきなり魚雷で撃沈というのは御法度だったので明白な脅しとなる大砲の搭載は合理的な選択肢でもあった。


だが、これからの潜水艦の発展の方向性を知っている身とすればこの当時のコンセプトには異を唱えなければならない。


物量・人的資源が限られるライヒにおいて高損耗率の潜水艦は許容できない。


「半分正解だ。北海などのブリテン島近辺に展開する部隊以外だとVII型では手に余るだろう。だが、そもそもVII型には肝心な要素が考慮されていないと私は考えている」


「・・・それは、何でしょうか?」


沈黙していたレーダー提督が口を開いた。


「航空機の発達と、レーダーの発達だ。去年レーダーの開発に海軍は成功したそうだな」


「・・・よくご存知で、ですがまだまだ精度は甘く巡洋艦クラスでないと検知できませんが」


あくまで海軍内での実験であり、ちょび髭である俺が知っていることに驚いたようだ。


「その認識が間違っている。航空機と同じだ。今後恐ろしい速度で発展することになる。日々、より早く、より遠くへ、より多くのものを運べるよう進歩する航空機と、より小さい、より遠くの物を、より小型な装置で検知できるよう進歩するレーダー技術が噛み合った時、その時VII型を含む現在の潜水艦はすべて狼から羊へとその立場を変えるだろう」


「それでも、総統閣下は潜水艦で勝負するとおっしゃるのですか?」


300隻の潜水艦を建造する段取りを命じられたシャハトは釈然としない顔をしていた。


「そうだ、なぜなら今の潜水艦のコンセプトが陳腐化するだけで潜水艦自体は戦略的価値を保ち続ける。いや、むしろ将来的には航空母艦の護衛艦に成り下がる駆逐艦・巡洋艦と比べると価値を1番よく保つだろう」

「閣下はどうすれば潜水艦の陳腐化が避けられるとお考えなのですか?」


先ほどまでの誇らしげな顔を難しげな顔に変えたデーニッツが言った。


「今後、目指すべきはこのような方向だ」


俺は戦後型潜水艦のコンセプトを提督二人に説明するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 1934年に最後の1隻が廃艦となった英国面のR級潜水艦は波201とだいたい同等の性能を1918年に実現していた。  独国面が実現したらどうなるんだろうねぇ、XXI型より5年早く。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ