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11 海軍再軍備-3

「閣下、お言葉ですが300隻の潜水艦の建造は不可能です。とてもではないですが、造船設備が足りません」


なんとか、虚脱状態から立ち直ったシャハトが言葉を絞りだしてきた。


(出来ないことを出来ないというから、史実ではちょび髭に疎まれたのだろうな)


「すぐにとは言っていない。とりあえず4年後に200隻そろえばいい。それにだ、全く新しい方法で大量建造に取り組むのだ。」


ヒムラーが口を開きかけていたので、慌てて俺は食い気味に口をひらいた。

ヒムラーに下手に口を開かせると演説状態になってしまうのだ。


(ヒムラーを打ち合わせに参加させるのは、ほんとメリットデメリット難しいな・・・)


「全く新しい方法ですか?もしかして先日おっしゃっていた物流システム絡みですか?」


シャハトがなんとも言えなさそうな顔できいてくる。


「違うな。どちらかというと自動車生産の考え方を取り入れるといったところだ」


「自動車生産ですか?」


だからそんな微妙な顔をするなシャハト。


そんな微妙な顔をするシャハトに俺は大量建造システムの概要を説明する。


要は後の世でいうところのブロック建造システムのことだ。


従来までの艦船の建造は基本的にドックの中で竜骨の設置から始まり船体構造のくみ上げを一貫として行ってきた。

この方法だと1隻建造する為にドックをかなりの期間にかけて占拠することになる。


この時代の艦船建造能力の分かりやすいボトルネックはドックの数だ。


艦船建造能力をあげようとすると、従来のやり方ではドックを増やすしかないのだが、ドックなんていう巨大な製造設備は一朝一夕で作れる訳がない。

それこそ新大陸の超国家でもそんな直ぐには拡張できなかった。


となればどうするか?


答えは歴史が教えてくれる。


連合国・枢軸国の陣営に関わらず、各国が共通して出した答えはブロック建造システムだ。


アメリカではリバティ船、大日本帝国では松型駆逐艦、そして我らがライヒではUボート。


溶接技術の進捗と溶接に適した鋼材の開発、そして青天井の艦船建造の需要が合わさった結果、全ての国で同じような結論にいきつく。


『その場で全部やるから時間がかかるのだ。船をパーツに分けて出来るだけ他の場所で作った後、組み立てだけドックでやればいい!』


と。

車体をいくつかのパーツに分け、別の工程でくみ上げたパーツを最後に一気に組み立てるといった自動車生産の概念そのものと言ってもいい。


現状でも煮詰めないといけない技術などがあるにはあるが(潜水艦での溶接不良は死を意味する)、基本的には実行可能だ。


各国が行っていないのは青天井の艦船需要がまだないから。

だが、間違いなく300隻の潜水艦というのは青天井に近い艦船需要だ。

だからこそ今からブロック建造システムの構築にとりかかる。


ブリテン島を完全封鎖するには、これから建造する潜水艦が史実よりも大型かつ高度なものに設計を変更することで損失数が少なくなるとしても、年100隻のUボートを最低でも建造する必要があるだろう。


だが、当然ブロック建造システムにもデメリットはある。


「総統・・・。このシステムを構築するには莫大な設備投資が必要ですよね?」


説明をきいたシャハトはもはや諦めの境地に達した顔を向けてくる。


「その通りだ。だからこそ今から取り組む必要がある。ドックの設備投資から始めないとならない。ライヒは1隻でも多くの潜水艦を必要とする!遅延などゆるされん!」


ブロック建造システムは一つは一つのパーツが大きくなる。

当然、そのパーツを組み合わせるためのクレーンや、パーツを運ぶためのシステムは大掛かりなものとなる。


ドックをのべつ幕なく作るより効率的だが、平時に投資するにはかなりの額だ。


(だからこそ実質、ちょび髭の独裁国家となっているライヒだからこそ今から取り組めるのだがな)


「承知いたしました、トートと打ち合わせを行います。デーニッツ提督、レーダー提督もよろしくお願いします。」


シャハトが完全に諦め顔で二人の海軍提督に話しかけた。


(持つべき物は優秀な官僚だな。よし、これで海軍はひとまず解決だ)


「すみません総統閣下、新型中型潜水艦とはなんのことでしょうか?VII型潜水艦の次は現在コンセプト段階ですが・・・」


デーニッツ提督が困惑した顔をこちらに向けてきた。


「え?」


シャハトはもう表情が固まっている。

そしてなぜか顔を輝かせているヒムラー。


(・・・そうだった。まだ何も言ってなかった)


肝心なことを言い忘れていた俺は、再び提督二人に説明を始めるのだった。


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