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31 チェコの戦車

「それで、グデーリアン。戦車の部隊への配備状況はどんな具合だ?」


俺はグデーリアン将軍とマンシュタイン将軍を総統官邸に呼び出していた。


今年の年初、アンシュルスをライヒは行った。

その際、たった2日間で数百キロを長駆しオーストリアになだれこんだ装甲師団は一躍全ライヒ注目の的となった。


それに伴い装甲師団の大幅な拡張が計画され、3個師団しか存在しなかった装甲師団だったが一気に9個陸軍装甲師団+1個SS装甲師団の計10師団の規模にまで拡張されることとなったのだ。


それに伴い、各師団は大きく再編される事になった。


従来、2個戦車連隊と1個自動車化歩兵連隊の3連隊制で装甲師団は構成されていたが、1個戦車連隊と2個自動車化歩兵連隊の構成に変更された。


戦車の配備数の増加速度を超えてた急速な戦略単位である師団数の増加を図るためというのと、オーストリアへの進軍で戦車と歩兵の数のバランスの悪さが目立った事がその理由だ。


戦車の数が減ると師団の打撃力は小さくなるが、装甲師団とて常に敵に突撃している訳ではない。


陣地構築や、突破した戦線の拡大は歩兵部隊が担うものだ。


瞬間的な打撃力は低下するが、むしろ部隊としての総合力は向上していると言える。


現在はまだ生産が間に合っていないが、装甲ハーフトラックの生産が軌道に乗れば2個自動車化歩兵連隊のうち1つはハーフトラックを装備した機械化歩兵連隊へと編成を変える予定だ。


とまぁ、口で言うのは簡単だが実際に揃えるとなると楽ではない。


10個装甲師団だと10連隊分の戦車を揃える必要がある。


1個連隊あたり200両の戦車が定数なので、しめて2000輌になる。


途方もない数である。


勿論、IV号戦車やようやく試作が終わったIII号戦車でその全てを構成したいところだが・・・


「とてもじゃないですが、配備数が足りないですね。I号、II号をあわせてもまだ足りてないないです」


『あれらはそもそも訓練用戦車ですけどね』と少し毒をはきながらグデーリアンそう報告してくる。


(まぁ、でしょうね)


規模を3倍に拡大するのだ。


足りなくて当然だ。


史実でも終始ライヒは戦車が足りなかった。

特にこの時期はまともな戦車がほとんど配備されていなかった。

主力と考えていたIII号戦車の開発に手間取っていたし、IV号戦車は手堅い設計ですでに量産可能だったもののあくまで位置付けが『補助戦車』であったため、そこまで力を入れて量産していなかったのだ。


後世から見た結果論としては『なんて悠長な事を』という感じだが、それもこれも『1940年に部隊が揃えばいい』というそもそものスケジュール感があったからだ。


1940年からの逆算だったからこそ、III号戦車はゆっくりと設計を煮詰めていたし(斬新な設計をしすぎて想定以上に遅延しまくったという背景もある)、『どうせ主力のIII号戦車が数年内に量産される』と考えて補助戦車のIV号戦車を低率量産のままぼちぼち配備をするというのもちゃんと理にかなっているのだ。


たが、結果論を既に知る俺としてはIV号戦車の低率量産などしない。


足回りが保守的な設計で機動力にやや難があるⅣ号戦車だが、その分試作は早期におわったので現段階でも十分量産可能なレベルに達している。

史実での設計(20トン級)を拡大(25トン級)するよう設計の修正をさせたこともあり、当初の量産開始予定から半年ほど遅れての量産開始となったが、逆に言うとせいぜい半年の遅れで済んでいる。

それもこれも手堅くボギー式サスペンションを採用し、トランスミッションもⅢ号戦車のような半自動式などではなく旧式のものを採用しているが故だ。


取り敢えず当初は年間500輌体制の生産を指示し、更なる量産の為の各種調査・調整も現段階で既に指示している。


それに対して予想通りというか、史実同様Ⅲ号戦車の開発には手間取っている。

採用するサスペンションにトーションバー式を指定したり、トランスミッションもひとまずは旧式のもの採用するようにと伝え、すこしでも設計が加速するよう働きかけているがあまり芳しくない。

なにせこちらは史実の設計(15トン級)から倍(30トン級)にまで設計を改めさせているのだ。

ほとんど一から設計し直すに等しい。


当然、Ⅲ号戦車の設計・生産を担っているダイムラー社からはかなりのクレームがでた。


『仕様変更で出戻りになった分はどうしてくれるんですか!』と文句をいうメーカーに『そういうお前らも全然試作車を完成出来ないじゃねぇか!』と若干の逆切れをかましつつ交渉した結果、当分量産が出来ない形となってしまったⅢ号戦車の代わりとしてダイムラー社にはⅣ号戦車をひとまずは生産するように指示を出している。


『治具を揃えるのが』などとぶつくさ言っていたが、『だったらⅢ号戦車を作るための治具を出来るだけⅣ号と揃えろ』といって取り敢えずはこちらの指示をのませていた。


「そうか、とりあえずはIV号戦車の大量配備でしのぎたまえ、III号戦車が行き渡るにはまだまだかかるからな」


「それはそうですが、それでも全く足りませんが」


『そもそも機動力不足ですし』と付け加えながらグデーリアンがのたまう。


「分かっておる!だからこうして諸君らを呼び出してLt38の査察結果をきいているのではないか!」


俺はあまりに頑固な『Mr.電撃戦』に辟易としつつ、ようやく本題に入るのだった。

参考までですが、史実のⅣ号戦車の生産量は1937:13 1938:102 1939:147:1940:290 1941:480 1942:994 1943:2983 1944:3125 1945:375


Ⅲ号戦車は 1937:20 1938:20 1939:96 以降は各型が入り乱れて把握が難しいです。

ちなみにT-34は26トン~32トン、シャーマンは30トン~38トンという前提で物語を作っております。

型式により重さが違うので幅が出ています。

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― 新着の感想 ―
戦車や自走砲、野戦の時代だった。今は、都市への食糧補給を絶って餓死させたり、遠距離から都市を破壊したりする時代になったのだろうか。
目指すところはT34だけど、フランス侵攻においてⅢ号戦車の火力不足がいち早く露呈していたというのが一番の問題なような。 あっけなく敗れた事で注目されないけれど、フランス戦車の装甲は40ミリを超える上…
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