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二月六日
二月五日はお休みしました。
我が初の数闋を歌ひて聞せし霊達は
後の数闋をば聞かじ。
親しかりし団欒は散けぬ。
あはれ、始て聞きつる反響は消えぬ。
我歎は知らぬ群の耳に入る。
その群の褒むる声さへ我心を傷ましむ。
かつて我歌を楽み聞きし誰彼
猶世にありとも、そは今所々に散りて流離ひをれり。
(ファウスト/薦むる詞・ゲーテ/森鴎外訳)
ファウストを読み始めた。
ゲーテは前に、ウェルテルを読んだが、良いとは思えなかった。訳が悪かったのか分からないが、特にウェルテルが自死した後の、古い叙事詩のようなのが回りくど過ぎ、生命を失って感じられた。その点鴎外のファウストはまあまあである。まだくどいが、それでも彼の古めかしい言葉遣いは詩情を直感しやすい気がする。