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二月四日
「見せるったら、見ねえのか。屋根へ上ればよく見えるんだ。おれが負ってやるっていうのに、さ、負さりなよ、ぐずぐすして居ないで負さりなよ。」
お母さんはためらって居る様子でした。妹さんも傍にほの白く立って居て、くすくす笑って居る様子でした。お母さんは誰も居ぬのにそっとあたりを見廻し、意を決して佐吉さんに負さりました。
(老ハイデルベルヒ・太宰治)
遅くに起き、ある女子学生のルポを読む。
記事をそっくり信じて、かなしく、虚しい。
この国では、誰もがやりたがらない、しかし無くてはならない仕事に限って、給料は安く、やりたがる人が大勢居て、無くても構わない仕事ばかり、高い。
この国では、まだ生きていたい人ばかり、死んでいて、死にたい人ばかりが生きている。
この国では、誰もが幸福を求めているくせに、否、だからこそ、誰もが不幸を選びとっている。
だけどね、それでもね、と唄う、大森さんの声を聞いて、やっと少し、息をつけたような気がした。
「僕のこと」(Mrs. GREEN APPLE)