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二月二日
先生は嗟嘆した。この淋しい葬儀よ。一人かけても、切ないではないか。しかし孤島からはるばるとヒタ漕ぎに漕いで来たであろう娘を待たせ、孤島に肝臓を病んで医者を待つ病人を待たせ、どうして、ここに止まり得ようか。
「どうしてズブ濡れに濡れたのかね」
「ハイ、敵機が見えるたびに、海にとびこんで隠れていました」
その日は艦載機が、しきりにバクゲキを繰り返していた。空襲警報が間断なく発令されていたのである。
「よし、わかった。すぐ行ってあげるよ」
娘の肩に手をかけて、こう優しく慰めると、先生は棺の前に端坐して、瞑目合掌し、
「島に病人が待っています。行ってやらなければなりません。あなただけは、それを喜んで下さるでしょう。肝臓医者は負けじ」
(肝臓先生・坂口安吾)
肝臓先生を読む。途中まで、ちょっと可笑しみのあるような気がして、笑いどころを探してしまう。しかし、軍との軋轢の出てきたあたりから、いよいよ、いい所である。
なのだが、今日は、時間制限もあるせいか、イマイチ没入できずにいた。私はいつも飯時に読書しているのだが、今日はひとに話しかけられてしまったせいもある。
ねむいので、寝る。田山花袋も言っている。疲れた時は、休むに限る。休むのも、寝るのに限る、と。




