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二月二十六日
夢の中の街に近衛はいない。チェスセットを抱えて探し回るが見つかる気配がない。それもそうだ。コレは夢で遊んだものじゃない。いつ遊んだ。
遊ぶって何だ。
なんでチェスセットにコカコーラのふたが混じっているんだ。
なんでコカコーラのふたにチェスセットが混じっているんだ。
だめだな、チェスの駒なんかで代用しようとして、僕と近衛は、全くダメだな。ダイエットコカコーラのふたが黒いのはチェスをするためなのに。
忘れた。
夜が来ない。
(ハロー・バイバイ/絹谷田貫)
なろうでおすすめの小説は、と聞かれると答えに窮するけれども、最も心動かされた小説は、と聞かれれば「ハロー・バイバイ」と答える。
全く有名では無い。どころか、もう殆ど忘れ去られているのでは無いかと(失礼ながら)思われる。誤字は多いし空行の使い方もちょっとどうかと思う。
しかしどうだろう、この人物造形や端々に光るセンテンスの快さは?
よく読んで行くと、優れた構造を発見する、細部を発見する、ぴたりと言い当てる心眼を発見する。しかし、そんな事事がいっそ瑣末に思える。
今日は帰り道にこの小説の事を思い出した。忘れたくない事を思い出したからだ、と読み終えてから気がついた。




