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二月七日
くるしく、これが、あの嫉妬というものなのでしょうか。もし、そうだとしたなら、嫉妬というものは、なんという救いのない狂乱、それも肉体だけの狂乱。一点美しいところもない醜怪きわめたものか。世の中には、まだまだ私の知らない、いやな地獄があったのですね。私は、生きてゆくのが、いやになりました。自分が、あさましく、あわてて膝の上の風呂敷包をほどき、小説本を取り出し、でたらめにぺエジをひらき、かまわずそこから読み始めました。
(皮膚と心・太宰治)
皮膚病が最近ひどく、特に顔の赤みが取れないので、皮膚と心を読む。
やはり太宰は文章がうますぎると思う。特に現代人の精神上の狂乱を著すのにこれ以上はないような気さえしてしまう。
一方で実際に皮膚病と付き合わなければならない身としては、慰めにならない小説でもある。かえって残酷でさえあると思う。
だからいつか、私の「皮膚と心」を書きたいものだと思っている。




