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売命日記  作者: 山田羽二男
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一月二十八日

日記を書く事にした。

紀貫之の昔から、日記を書く際には、まず初めにそれを書く言い訳をしなくてはならないものと決まっている。日記は、やはり、本来一個人の心情を吐露したものであるから、ひとに見せる上では気恥しさを伴うのかもしれない。告白の痛々しさを知る近代人として、これを読まされる読者に負い目があるのかもしれない。それでも、強いて日記をひとに読ませなくてはならないのは、ひとつにはひとに認められたい気持であり、その起源たる心の裡と裡とで繋がりたい気持なのだろう。

先例に則って、たわいもない言い訳をするなら、ひとつには忘れないために。私の最近のお気に入りはカフカの「判決」だが、そこにこんな文章がある。


(夜着にまでポケットをつけている!)

これを世間に言いふらせば、父の体面はまるつぶれ、などと思ったが、思ったとたんに忘れていた。思うはなから次々と忘れていく。


私にとって人生はとても軽いので、あっという間に忘れてしまう。私のこの油断が、忘れたくない気持まで羽をつけて飛ばしてしまう。だから日記をする事にした。これが第一の理由。

二つ目の理由は、日記をつけ続ける為である。日記をつけること自体を忘れない為だ。以前も上のようなことを考えて日記を書いていたのだが、一日、めんどくさくなってサボり、たった一日サボっただけでもう次の日からは忘れてしまった。

つまりここで毎日日記をつけると宣言すれば、少しはサボったり、忘れたりする上での心理的抵抗になるかと期待して居るのである。

最後の理由は、これは、いずれこの日記を読んでいれば自ずと分かることであるから、敢えて述べはしない。


以上、本日はここまで。

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