バランス追放
「ジル、今日限りでお前はクビだ」
「──えっ?」
突然のことだった。
意味がわからない。
僕たち“銀翼の飛竜”はシルバークラスの冒険者パーティーだ。
戦戦盗僧魔魔の6人で構成された、ごく普通のパーティーだった。
それが最近、魔法剣士のサイモンが売春宿で病気を貰って引退して
人数が減ってしまったというのに、このタイミングでの追放は意味不明だ。
「ロイド、なんで僕をクビに……?」
「バランスを考えてのことだ」
バランス……?
「……」
「……」
……?
「ロイド、もっと具体的に話してくれよ
一体、なんのバランスを考えたんだ?」
「それは……パーティーのバランスだ」
「うん……?
で、その、パーティーのバランスを、どう考えたんだ?」
「6人から5人になっただろ?
だから、4人に減らそうと考えたんだ」
4人に減らしてバランスを取る……?
ますます意味がわからない。
「……う〜ん、あれか?
ロイドは奇数より偶数が好きなタイプだったのか?」
「は?
なんだそのグースーって……
いきなり訳の分からないことを言うな!」
怒られてしまった。
数字へのこだわりではないようだ。
「……ええと、4人構成になることによって
どんな風にバランスが取れるのか、教えてくれないか?」
「それはほら……
俺たちは男が3人、女が3人だったろ?
サイモンが抜けたせいでその絶妙なバランスが崩れてしまったのは、
いくら頭の悪いお前でも理解できるよな?」
あ〜……。
くだらない理由か〜。
「そこで俺は考えた
お前をクビにすれば男1:女3の黄金比が出来上がる、とな」
「ハーレムってやつだね
それよりも男を1人増やすとか、
男2:女2の可能性は考えなかったの?」
「どうして考える必要があるんだ!」
そうだよねぇ。
「……そういうわけだ
今まで世話になったな、ジル」
「……って言ってるけど、
みんなはどう思う?」
ジルは3人の美少女に意見を求めた。
「バッカじゃないの!?
ふざけんじゃないわよ!
何がゴールデンバランスよ!」
「ジルが抜けたら誰が前衛を務めるって言うの?」
「脳味噌下半身野郎がっ!!」
大不評だった。
まあ当然だろう。
「大体、なんで新参のアンタがリーダーぶってんのよ!
どうしてもパーティーに入りたいって言うから、
お人好しのジルが加入を認めちゃった、そのアンタがさあ!」
「幼馴染5人で結成したパーティーだったのにねぇ」
「邪魔くせえんだよっ!!」
女子メンバーの圧に押され、ロイドは何も反論できない。
「もう、こんな奴クビよクビ!
ほっといて行きましょ!」
「冒険者ギルドにはリーダーの私から説明しておくわ」
「1人でバランス取ってろっ!!」
ロイドは、美少女3人に引きずられてゆくジルに呼び掛けた。
「ジル! 待ってくれ! みんなも!
今の話はナシにしよう!!
だから、考え直してくれないか!?」
「「「 もう遅いっ!! 」」」