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Appendix  作者: G-Ⅲ
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侵入者の正体

 素早い動きで影が走る。

 ヲネストが本体を締め上げようと力を込めると触感が!?

 脱皮した後のように皮だけになった侵入者の本皮が中身を埋めるべく、ヲネストに襲いかかっていく。中身の入っていない着ぐるみのような物体の襲撃に緊張感はダダ下がりだが、一応は()()()()の対応を心掛けた。つまり、やり過ぎないように。

 廃業後に魔王城を賃貸する予定になっているのだから、あまり派手なことはしたくない。これが今の魔王達の最も切実な思いだった。

 そうはいっても、侵入者を逃してしまえば今後も同じような(まもの)が現れて、平穏な生活を脅かすかもしれない。ただ、現状では格下の敵に負けるはずもなく、逃走する影は順調に始末されていく。

 残された影はあと一つ。魔王アジストが懸命に負うのだが、速度が速すぎるのかその差は開いていくばかりだ。翻弄されるアジストの元に他の魔王達が集まり始めた時、影の動きに変化が生まれた。

 それまでは単に敷地内でアジストを挑発するような動きだったのだが、他の魔王が姿を現すと急激に加速し、敷地外へと逃げ去ろうとする。

「ああっ!」

 自分も加速して侵入者を追おうとしたトレイタにアジストがよろめいてぶつかる。

 トレイタに続こうとしていたヲネストが出なばをくじかれて舌打ちをした。このままじゃ、逃げられてしまう。そう感じたヲネストの瞳の色が変わった。

 不意に何かを掴むような動作をしたヲネストは掴んだ拳を地面にたたきつける。その時。

 彼の脇をすり抜けるように影の後を追う魔王アネスティの姿があった。

 ヲネスト指の間から静電気のような火花が散る。彼が掴んだ影の気配を導火線にして本体を爆殺するために放った技が瞬時に影に到達して起爆する。爆音とともに宙を舞うのは影に潜んでいた侵入者本体だ、そして

 駆け寄るアネスティが見たのは、車田跳びさながらに宙を舞う侵入者が顔面から地面にたたきつけられる瞬間だった。

 それと同時に賊が潜んでいた影から鮮血が吹き上がり、周囲は血の霧に覆われていく。そこに注意を奪われたアネスティが視線を戻すと霧に紛れて無数の蝙蝠が飛び去って行くのが見えた。

 そこに婆や達も追いついてきた。

 彼らの目には爆風で深く抉れた毒池の無残な光景がころがっている。

「侵入者は吸血鬼のようです」

 逃走した手段からアネスティが予測する。

「この辺で吸血鬼っていえば、ブリックかゾルソムだね」

 トレイタの言葉に反応するようにアネスティが言う。

「ブリックでまちがいない」

 そんな彼の手には鮮血を放った影。そう思われていたコートが握られている。その内側には静脈から流れる赤黒い血でブリックと記されていた。

「じゃあ、犯人もわかった事だし、どうするかは後で考えるとして、せっかくの準備が無駄になってもアレだから、打ち上げといこうじゃないか」

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