知られざる過去
四天王の動きは速かった。
ここはもうダメだ。そう思った彼の判断も素早かった。その結果としてとった行動が正しいかは不明だが、魔王達が事態を把握しようとした時にはすでにその姿は消えていた。
「どういうつもりでこんな事を?」
婆やが苦痛を上げながら転がっているうちの一人を強引に立たせて聞いた。
怯えた表情の彼は言う。
「こっちが聞きたいくらいだよ!」
数週間前。
新しい魔王城がオープンするという噂が流れた。この村の住人たちの大半は、時期が悪いとか、いまさらなどと盛り上がっていたのだが、どこにいつオープンするのを知っている者はいなかった。
そんな時に一人の男がこの村を訪れる。彼は自称四天王の一人を名乗り、村人たちに協力を求めてきた。魔王城を目指す勇者たちにサプライズをするため。
村人たちは最初、さほど乗り気ではなかったようだが、何度かの勇者イベントをすることで、それなりにこなれていった。
いまの時代にも勇者を目指す者がいるという話も広まり、姿を見ようと観光客まで現れるようになった頃に、は演者たちの意識も爆上がりで本気度も充実していく。何よりネタばらしからの宴会突入が一番の盛り上がりを見せていた。
この日までは…。
話を終えた後、男が周囲を見渡す。彼が探していたのは自称四天王の一人だという男の姿だ。しかし男の姿はすでに消えている。
自分たちはこれからどうすれば?
そんな思いに村人の姿を見た婆や達も、これからどうすればよいのか悩んでいた。
疾走する男がいた。
彼は四天王の肩書を持ち、村で勇者を迎え撃つ役目を担っていたのだが、この度。
予想外の出来事がが起こってしまった。
もうあそこには戻れない。このことは誰にも報告できないし、職場にも戻れない。自分はこの先、知られざる過去を持つ者として生きていかなければならないのだ。
覚悟を決めた彼は足を止め、一度だけ村を振り返る。
そして、失踪した。




