伏兵現る。
あまりにも。といった表現が当てはまるほど何もなかった今回の小旅行だったが。遂に事態が動き出す。
トレイタの日記はこんな出だしから始まっていた。
三日目の今日まで何も起こらないと、既に緊張感は無くもはやただの観光旅行だ。と言っても良いぐらいの弛みっぷり。だが、これを狙っていたのだろうか?
一行の行く手を遮る者たちが現れた。
「いよーぅ!ご苦労さん。怪我したくなかったら、有り金全部置いて行ってもらおうか!」
山賊?強盗?
とも思える容姿の一味のなかでもひときわ目立つ風貌の一人が杖を片手に声をかけてきた。さらに
「ついでにそのネーちゃんも置いて行ってもらおうか!」
と下碑た表情で戦士風の男が続ける。
ネーちゃん、という彼の言葉にトレイタが内心呆れていた。ネーちゃんとは?恐らく婆やの事だろう。彼女は確かに絶世の美女、とは言わないがかなり人目を惹く容姿であることは間違いない。しかし、彼女がこの世界に入ってから容姿の劣化が止まって百年?いや、数百?数えきれない年月が過ぎている。とりあえずネーちゃんと呼ばれる年齢は超越していた。だが、ここで安易に否定しないのがトレイタの良いところ、とりあえず彼女の表情を横目でこっそり観察をする。
結果は?まんざらでもない。そんな風に見えた。とりあえずう様子を見るために沈黙が吉だろう。
「あなた達は?」
暴漢に警戒して風使いの二人が半歩ずつ前に出ると、日中はあまり役に立たない夜使いは静かに三歩ほど後退する。三者がそれぞれ周囲に警戒を強める中で言刃使いが
「強盗気分ならやめておけ」
厳しく言い放つ、ところがその言葉が気に食わなかったのか
「何を馬鹿な!我々は由緒正しい勇者の末裔。その初代を務めるパーティーだぞ!」
と声を荒げる、要するにこれから勇者で売っていこう、という連中が集まって旅人たちに難癖をつけて絡んでいる。と言う事らしい。後世に名を残す勇者の初代だということらしい。
これを聞いて、最初は吸血鬼の配下による待ち伏せか?と勘繰っていたが、どうやらその心配は無いようだ。斜陽産業とはいえ、それでも今だに新しいイベントで新規参入しようとする気概は感じるが、一緒になって魔王城再建、という所までモチベが上がらないトレイタの目の前では案の定、輩勇者たちが軽くいなされていく。
最終的にごめんなさいした彼らだったが、お詫びに。といってくれたのが新規オープンの魔王城入場券だった。あの頃の感動が蘇る、懐かしの魔王城。こんなキャッチフレーズが書かれたチケットを手にした魔王達は再び旅を続ける。
そして、吸血鬼のアジトまでもう間もなく。という距離にある宿場町で昼食をとることになった。
席に案内された魔王達が席に案内されると言刃使いが
「ここはなにがお勧めなんだい?」
と給仕に聞いている。
これを聞いた魔王達、彼らの表情や動作には現れないが、一行に緊張が走る。その原因は、先ほどの言刃使いの問いかけだった。彼らが入店すると店内の客の言葉に僅かな緊張が含まれるようになる。それに気が付いた言刃使いが影口を使って気を付けてください。と、仲間に呼びかけたのだ。




