知られざる実力者
無視してブリックの顔にはさげすむような表情が見て取れる。それも、あからさまに。
もっとも、勇者の国とはいえ名前も売れずに下町で燻っているような住人相手に反応してください。といわれても困る。
それがブリックの本音だった。
夜護衛が声の主と主人の間に割り込んで牽制する。勢いが強かったのか、声の主はその場に尻もちをついて、思わず呻いた。
彼の思いに反応したように、ブリックも思わず。冷笑する。本当にそんなつもりは無かったのだが、魔王城に侵入した時とのギャップを思い出して、自分の意思とは関係なく失礼な笑みがこぼれてしまう。だが、これが相手の意識を逆なでしてしまった。
「大人しく帰れば穏便に済まそうと思っていたのに…」
「Kuっ…」
これ以上のは意図的な挑発だと思われる。
住人の三流以下「御用達」の言葉に顔を背けて笑いをこらえたブリックだが、耐えきれたと思ったのは本人だけで、事態はより悪い方へと動いていく。
「夜が使えるのが自分だけだとおもうなよ」
表情に怒りのオプションを追加して
「すぐに呼んでくるから逃げずに待ってろ!」
尻をさすりながら離脱する。
たどたどしい後ろ姿を見ながらブリックが迫られた選択を吟味する。
待つのか?
それとも…。