恐るべき侵入者
婆やの言葉が魔王を現実へと誘う。同時に幹部の魔王達六人にも動揺が広がっているのがわかった。
六冥征魔王。
たしか今季のイベントはこんなイベントだったはず。もう一人はいれば週休二日も夢じゃないね!なんて言ってたあの頃が懐かしい。
出会った頃に思いを馳せるトレイタを現実に引き戻したのは六冥の一人ヲネストの二言だ。
「大丈夫だよね、これ。だいじょうぶだよね!」
「ばッッカおまえ、ダイジョウブに決まってんじゃん!なっ!なっ!って!!」
初回の「な」でトレイタを凝視する彼だったが視線を合わせよとしないCEOに反応に動揺して周りに同意を求めるのだが、仲間たちは皆、視線を落とし沈黙を守っている。
「とりあえず明日は業者が査定にやってきますから」
「明日?あしたッ!?」
婆やによって破られた沈黙にいち早く反応したヲネストだった。
話が違う。今日、最終営業日が終わったら一時金を渡すって言ってたじゃん。めちゃくや期待してたのにいまさらなんで?
ストレスからつい、爪を噛むヲネストに婆やが
「あんた、その手。指輪は?どうした?」
ギクリ!!
彼に貸与されていた指輪。世間では魔召環と呼ばれる貴重な道具なのだが、それは今現在彼の手元にはない。興味と威圧が入り混じった視線が彼に集まる。その重圧に耐えきれなくなったヲネスト視線は無意識に宙を泳いだ。彷徨う視線環留まるところを知らず、当てもなく漂い続け…。
おゃ?
ふと視線の迷走が止まった。
彼の視線の先にある闇が広がっている。一見普通の闇に見える空間のようだが、何かがおかしい。ある部分にだけ違和感がある。あえて表現するなら厚みというか深みというか、どう表現すればという闇レポの言葉はとりあえず後で考えるとして、この場はその闇への対応だ。六冥征魔王に気付かれず王城に潜伏するほどの力を持つ者、後手に回れば大きな被害を受けるかもしれない。
瞬時の判断でヲネストは見知らぬ闇へ突っ込む。もし自分が斃れても敵の実力が知れれば仲間は助かるかもしれない
注目を集めるヲネストの突然の行動に誰かが叫んだ。
「逃げたぞ!」