来るべき時
城下町、魔王から世界を救った勇者が治める国の片隅にちょっとした騒動があったようだ。
魔王討伐という催事にあぶれた、いわば倉庫番的な者たちが暮らしている。そんな場所に前触れもなく大量の荷物が搬入されてきた。
初めて荷物が持ち込まれた頃、住人たちは
「新しい倉庫番が増えたんだろう」
という程度にしか感じていなかった。しかし、時を開けず二軒目、三軒目と搬入される荷物に住人たちが色めき立つ。こんな頻度で荷物が運び込まれたのは今までなかったからだ。
いったい何が起こっているのか?
住人たちの興味は新しい入居者へと注がれていく。とはいえ、新しい住人によって、この地域の安全が脅かされるかもしれない…。
といった心配は誰もしていなかった。
なぜって?
ここの住人は状況によっては無双ともいえる猛者ばかりだから。
「ご用意しています」
ある意味、苦楽を共にしたと言える魔王達の願い。ひと時の安らぎを求めて勇者を頼る気持ちに応えた勇者の優秀な部下の発言だ。
ご用意された場所。後に魔王通り、と呼ばれる場所に婆や達が着いた時、他の魔王達は既にその場所になじんでいた。
こうして彼らに新生活は幕を開ける。