情と妥協と真実と
差し出されたのはこれまで一度も見たことが無い魔王からの手紙の束だ。
衰退する魔王城の近況から情勢を求める泣き言まで。読んでいてこれっぽっちも楽しくない、魂のこもった一筆が未開封の状態で手渡されたのだ。
ところが勇者はその紙束に一瞥もせず言い放つ。
「やあ、久しぶりだね。なんだか城が攻略されたみたいだけど、大丈夫かい?」
不動産屋に城を明け渡したことは聞いていたから、気の利いたジョークのつもりで声をかけたのだが、魔王達はあまり快く思っていないようだ。それでも他に頼るところがない彼らは少しだけ愛想笑いをして答える。
「じつは…」
最終日の襲撃者によって魔王城の査定が激減したことや、生活する為の仕事がない事を赤裸々に語り、見通しが立つまでの間だけでも援助してほしいと頭を下げた。
申し出を聞いて勇者が思ったのは、なんて図々しいのだろう?
と言うものだ。自分が現役時代、駆け出しのころは一人で全てをこなしていたし、何度命を失おうと成果を出す為に頑張ってきた。名前が売れ、仲間ができても常に少数の選抜メンバーで成果を出して来たし、そのメンツから外れないように努力をしてきた。もっと言えば、選抜を外れた倉庫番たちも暮らしていけるように頑張ってきたつもりだ。だからこそ今の自分がある。
ところが魔王は放漫経営でモンスターに金を持たせ、城の中に無造作に高価な宝箱を放置して略奪されるような失態を侵している。そしていま、そのツケがたまって城を追い出されている。これはもう完全な自己責任だし、ただの無能じゃないだろうか?
と、こんな風に切り捨ててしまうのは簡単だが、魔王とは長い付き合いだし、多少は気になるところもある。
ここは妥協
「じゃあこうしよう」




