崩れゆく伝説
場外のわちゃわちゃをよそにアネスティが不動産屋を案内しようとするのだが
「ああいった来客はよくあるのですか?」
「え?」
思わず聞き返したアネスティは
「いやぁ、まあ、その…」
「訪問者もなく、静かで自然あふれる別荘地というお話だったのですが?」
末尾の語句が少し強めに発音されたのを感じた案内者は、さりげなく話題を変えようとする。しかし、二人の行く手に広がる風景は、昨夜の襲撃で破壊された庭園の無残な様子だ。
爆池
長きに渡り蓄積された毒の池が無残に破壊された様。また、その様子。
腐庭
弾けた毒の飛沫に侵され美観を損ねる庭。
見る影もない姿。
言葉を失う不動産屋の視界がこれ以上観察するのを避けるため、アネスティが少し強めに誘導する。あまりの光景に心を戻しきれない不動産屋の瞳には、追い打ちをかけるように昨夜の惨劇を物語る数々の光景が彩を添えていく。
以前来た時とは違う。こんなはずでは…。
今回の物件を契約すれば念願の成績トップも夢ではなかったのに…。彼の中でテンションと査定が急激に下がっていく。
昨夜は寝つきも悪がわるいほど興奮していたのに…。トップが取れる喜びを神に感謝したのに…。
結局、努力は報われないのだ。魔王はいるが、神はいないのだ。
いろんなことがあり過ぎた。少し休みたい。
いや。
「それでは契約に関してお話したいのですが」
放たれた声は底冷えするような声でアネスティの耳へと忍び込む。
思わず不動産屋の顔を見る。
蒼白の顔面に輝く眼光を宿した彼に気圧されたように
「ショ、しょう少々おまちください」
と言い残すと、ちょっとだけ本気で婆やを呼びにその場を離れた。




