絶望の幕開け
世界を恐怖と混乱に陥れた魔王の居城。
冷酷無情、天地無用、残忍酷薄、残酷非道など、数々の悪行を繰り返してきた魔王達だったが、この日、彼らの日常に変化が訪れた。
「…最後の勇者です」
玉座にいる魔王に告げたのは彼の側近、ランダックだ。
彼の言葉に軽くうなずいた魔王が玉座から腰を上げ、マントを軽く揺らしながら勇者の元へと向かう。
遂に対面する勇者と魔王。彼らは互いの正義を貫く為に命を懸けて戦うのだ。
ワンクールで言えば三話にも及ぶ激しい攻防のついに魔王は斃される。そう、対峙する対峙する彼らの攻防は、それほどまでに激しく思っていたよりも一割二厘ほど凄かったのだ。
これは後伝 説として語り継がれていくが、実際は回想シーンなどを除けばAぱーと。もしくは一話で良かった、という意見もあるようだ。
ともあれ激しい攻防が繰り広げられたのは確かなのだが、今回は本人たちの希望により割愛させて頂く。
結果としては、目的を達成した勇者は故郷へと凱旋していく様子が伝説によって表現されていることで、人類には世界に再び平和が訪れた事は間違いない。
勇者が去った後、閑散とした城内を歩いている者達がいた。
城を守っていた魔物達と魔王達、彼らが目指すのは玉座の間だ。正確には玉座に座る主の元へと向かっていた。
かつて栄華を誇り配下で溢れていた玉座の間に集まった配下はに視線を投げる魔王。今はもう部下の顔がはっきり認識できるほどの数になっている。
やがて集まった彼らを見た魔王が口を開いた。
「すまない、みんな。本当にすまない」
力のなく彼が言う。
その時、城内に時を告げる鐘の音が響き渡る。
すると、この音に導かれるように魔物達は主を残して次々にその場を去っていく。
そして後に残されたのは彼と直属の魔王達、後は創業当時から苦楽を共にしてきた婆やだけだった。
残った彼らの顔を見て魔王は天井を見上げる。視線の先には勇者との戦闘で破壊され崩れた部分から外の景色が見える、日没とともに輝きを取り戻していく星々を見ながら、自分が沈んだ太陽なのだと実感させられた。
しかしそれは完全に光を失ったのではなく、夜空に瞬く星の一つに戻っただけだと思えばほんの少しだけ心が軽くなったりもした。
そんな彼に婆やが声をかける。
「この天井、修理にだいぶカネかかりそうですな」