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エピローグ

 ……な、なんぞや?


 程なくして何もない不思議空間に到着した。


 妙にソワソワする空間にウロチョロ歩いていると遠くに何かを見つける。そこへ近づいていくと外でみかけたNPCおばあさんが椅子に座っていた。


「こちらへお座り。転生者である幼きハーフハイエルフと魔王グラムよ


 先ほどの優しそうな声音から直に脳内へ威厳のある声が響いてくる。


『な、に?』

「今……なんと?」

「言葉通りですよ。天寵の忌み子エインセルそして、反逆の王グラム」


 ゴクリと唾を飲んでおばあさんを見ると瞳が虹色に輝いていた。俺はおずおずとおばあさん目の前の椅子に座る。


「あなたは……」

「私はかつて存在した今は亡き精霊の王」


 その言葉と同時におばあさんは美しい女神のような姿に変化していた。


『精霊王……まだ存命でしたのか』

「いいえ。違います、反逆の王。私はすでに朽ち、あなたと同じく淵人の呪いを受けました」


 最初は憂いに満ちた顔だったが淵人の単語を発した瞬間、一瞬苦虫を噛み潰したような顔になった。


『ですが、あなた様のお姿は……』

「私は輪廻の理に入れられ人間として繰り返しをさせられているだけですよ、反逆の王グラム。本来の体はすでに遠い昔朽ち、人間として転生するたびに記憶は薄れていたはずだった。しかし天寵の忌み子と反逆の王、あなたたちが現れたことによって、私の記憶と少しだけですが一時的力を取り戻りました」


 天寵の忌み子? 反逆の王? よくわからん……

 なんかグラムみたいに小難しいこと言うのやめて、もう少し説明してくれませんか?


 精霊王は俺の心が読めているのか、読めてないのか不敵な笑みを浮かべた。


「力もそろそろ尽き、私が顕現するのもこれで最後です」

『ワシは……まだ何も』

「謝らないでください、反逆の王グラム。あなたの行動は一滴の雫でしたが、世に変化をもたらしました」

『ワシは……ワシは……』


 精霊王はグラムを優しい目つきで見る。


「そして天寵の忌み子エインセルが現れた。これによって世は更に加速するでしょう。感謝いたします、反逆の王グラム」


 次に俺の顔を見て精霊王はゆっくりお辞儀をする。


「あなたがここまできた道のりは短くも苦難でしたでしょう。しかしこの先には更なる困難がついてまわります」


 え⁉︎


「私は……」


 賢者になりたいって言おうとしたが、精霊王は指で俺の口を塞いだ。


 や、やわらかい……


「気をつけなさい。ノーブルエルフはまだ存在しています。しかし、彼らは淵人を世界から追い出せる唯一の鍵となるでしょう。哀れな彼らを救いなさい、天寵の忌み子エインセルよ」


 精霊王の指に意識を持っていかれてる間に精霊王が続けた。


「私はあなたに助言を与えることしかできません。今の私では祝福を授けることもできない。ですが、私という存在を使えば僅かですが、あなたにかけられた呪いを封じられます」


 はっ⁈

 ち、ちょっと待って勝手に話を終わらせようとしないで!


「あなたには申し訳ありませんが、どうか穢れなき世界を全ての種族を救ってください」


 ま、まってぇぇ‼︎


 精霊王が俺の額にキスをすると俺の体が強く輝き、微睡落ちていった。


「さようなら、愛しい天寵の忌み子よ」


 ぐがぁ……







 湖から長髪長身の成人男性がゆっくり出てきた。

 濡れている髪は湖の美しさと合わさって幻想的な雰囲気を醸し出している。耳は天に昇るように長く、金色の髪に黄金を直にはめ込んだような瞳をしていた。


 長命の種族しか知らないだろ、それはまさしくエルフを導いてきた王の中の王ハイエルフ。


 彼に気づいた集団達がザッと跪く。その中からハイエルフの男性と似通った長い耳をしている女性が近づいた。


「お帰りなさいませ、皇子」


 女性はゆっくりお辞儀をする。


 男性は何も言わず彼らの顔を一人一人見ていき、長い沈黙が当たりに立ち込めた。男性は何かを考えるようにして口を開く。


「なぜ……」





 湖から出てきたらなんかよくわからない光景なんですが。どういうこと?


「いえ、もう隠さずとも問題ありません。アタイ……私こそ今までの非礼を謝罪させてください」

『ほう! ダークエルフの小娘め、ようやく自身の立場がわかったか!』


 皇子? 何の話?

 というかなんでアンネさん敬語なの?


「すでにエヴァンス辺境伯が正式に発表しました。悲しくも隠されてきた貴方様のことを」


 うん?

 話が見えてこないけど。


 周りを見るとアンネだけじゃなく、チンピラーズやガビリの配下だったゴブリンやオークまでも神妙な顔をして跪いていた。


 怖いからやめてくれない?


 近場の岩を背に立っていたカーミレイとアルトリートがこちらへやってくる。


「ふん。小娘が何かほざいているようじゃな? 召使い」

「……俺は何も言ってないぞ、狂人アンネ」


 俺を見る目がうっとりして怖かったアンネはさっと表情を変えて、カーミレイとアルトリートを血走った目で睨みつける。


「どうしてアンネさんが」

「あぁ、俺が呼んだんだ。エインセル」


 俺の疑問にアルトリートが口早に説明する。


「数日、数ヶ月しても出てこなったんだよ。だから、もしかして豚鬼族が持っていたピアスが必要かと思ってな。いろんなところを巡ってる内にさっき狂人アンネが言ったように、辺境伯様のお偉い言葉と同時こいつらの居場所が……」

「魔の森に長年隠れ潜み世界を憂いた貴方様が、世界を正すために現れたことに感謝いたします。僭越ながら、私たちが貴方様の手伝いをさせていただければ、と」


 アンネは苛立ちげにアルトリートの言葉に被せるようにして話を戻す。


 何の話? 別に隠れ潜んでませんが……

 ママンとパパンもぴんぴんだと思うよ。


「貴方様が皇帝になるのは全種族の希望です」


 え?

 皇帝?


「私たちは命を賭して貴方様が皇帝になるための道を作り上げる所存です」


 は、はい?


「「「うぉぉぉぉーー!!!」」


 アンネの声に周りの人たちが雄叫びを上げた。


 ……や、やだやだ!!

 そんなのなりたくない!!

 俺は森の大賢者を目指してるの!! なんで皇帝になることになってんの!!



 そんなエインセルの心の声と裏腹にどんどん歓声は大きくなっていき、亜人の皇子の誕生を祝福した。



 だ、誰かぁぁ俺を森に帰してぇぇぇぇ!!!!


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