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第三話

 ムシャムシャ‼︎

 やっぱエルフにはサラダだぜ!

 ただし俺はハーフハイエルフだけどな!


「……エインセル……レオ……行儀……悪い……です」


 母さんが小さな声で呟くと俺はピタっと、停止ボタンを押された機械みたいに止まった。

 背中にダラダラと汗を掻きながらさっと背筋を伸ばし行儀良く食べる。


 う、うんうん!

 エルフと言えば神聖な種族だもんな!

 優雅に食べてないと! まあ俺はハーフハイエルフだけどな!


「エインセル。肉食え、肉を! 男なら肉食って筋肉を付けろよ!」


 父さんが口に肉を頬張りながら喋りかけてきた。

 母さんから少しずつ穏やかじゃない魔力が出ているが父さんは気付いていない。


 肉って言われてもなあ……

 好きだけどエルフの血が強いのか、胃が弱くて脂っこいもんあんま食えないんだよ。


 俺が困惑しながら肉を食べようか悩んでいると母さんが声をかけてくる。


「……エインセル……好き嫌い……よく……ありません」


 はい! ママン!


 しょうがないので肉にフォークを突き刺して食べる。


 ムニャムニャ、う、美味い!

 だけど後で胃がキュルキュルするからあまり食べれないよ……


 父さんをチラっ見ると俺の身の丈ぐらいの大きさの肉を片腕で持ちながら食べている。


 いつも思うけど、父さんが食べてる骨付き肉ってなんの動物なの?

 明らかに常軌を逸した大きさだよね?

 なんでそれを片手で持ち上げられるの。うーん、化け物かな? 


 一度肉を食べてしまうと、誘惑に耐えきれずパクパク食べてしまう。


 くぅー、数時間後の俺すまん!

 先に謝っとくぞ!






 うがぁ……!

 い、胃がムカムカする!


 ベッドの上でジタバタしながら左から右へと転がる。


 数時間前の俺、恨むぞ!

 ダ、ダメだ。ベッドで横になっていると余計に気が滅入る……


 立ち上がり胃を摩りながら部屋を出た。

 吐き気を抑えながらリビングに行くと母さんが服を編んでいた。


 大きさ的に俺の服かな?

 いつもありがとうママン!


「……いいえ。外……行く……気をつけて」


 流石ママンだぜ!

 俺が一切言葉を放っていないのに返答してくれるなんて!


 まぁ、単純に俺が魔力を使って伝達しただけなんだけどね。

 確かにこんなに便利ならエルフは無口になるし、無表情になるわな。


 魔力だけ使うと、父さんが怒るから一応言葉で伝える。


「行ってきます、母さん」


 なんでも俺がいつか外の世界にいったときに魔力だけに頼っていたら、後で痛い目に遭うだとか、なんとか。

 確かにわからなくもない。

 全く喋れないやつがムスっと見つめてきたら怖いもんね。

 でもね、もう遅いよパパン


 俺の表情筋はすでに死んでいる!

 鏡の前で笑おうとしても仏頂面のままなんだ……


 なんか悲しくなってトボトボと外へ出た。




 スーハースーハー!


 新鮮な空気を吸うと心なしか少し胃が和らいだ気がする。

 少し散歩してから母さんのお気に入りの花壇の前に座って和む。


 はぁ……美しい。

 はぁ……尊い……う、美しい。


 詩人の真似をしたが、語尾力が壊滅してる俺では同じことを繰り返すことしかできなかった。

 眺めているとふと違和感を感じる。


 うん?


 花壇に顔を近づけると何かがいた。


 なんぞや?


 そこには土にまみれた半透明の妖精みたいな生物がいた。

 何度も瞬きをするが消えない。


 なっにこれ、初めてみた。

 というか薄汚ないな……


 そいつは俺の視線を感じたのに気づいたのか目を擦りながら上半身を起こす。

 なぜか妖精はしきりに俺を見つめて不思議そうな顔をした。


 なんでこの子は俺を見て不思議がって首を傾けてるの?

 むしろ俺が不思議でしょうがないんだけど。


 妖精は背中から生えてる小ちゃな羽で浮かぶと、キラキラとした何かを巻き散らかしながら、俺の目の前で左に行ったり右に行ったりとする。

 ようやく俺が目で追っていることに気づくと空中で固まった。


 うーん。

 妖精だよな? 本で妖精を見たことがあるけど実物は初めてだな。

 さっきまでは薄汚かったのに綺麗になってるし。

 不思議生物すぎない?


 指を妖精に向けるが妖精は固まったまま俺の指を注視する。


 ゆっくり妖精のお腹に近づけてツンッと押すと、妖精は力を失ったように地面に落ちそうになる。

 俺は慌てて両手で包み込むようにキャッチする。

 妖精は目を輝かせて俺を見ていた。


「……こんにちは?」


 どうすればいいかわからずに挨拶すると妖精は「キャッキャッ」言いながら羽ばたき、俺の頭の周りでくるくると回った。

 妖精は心の底から楽しようで見ている俺まで和む。


 うんうん。笑顔は大事だぞ!


 それを見て俺も嬉しくなり魔力を出すと妖精は俺から出た魔力を両手で抱きながら、美味しそうに頬張る。


 えぇ……君、魔力食べる系?


 その光景を見て俺は思わず困惑した魔力を出してしまう。

 今まで頬張っていた妖精はそれを見てムッとした表情で両手に腰に当て、口を膨らませた。


 うん?

 もしかして魔力に好き嫌いがあるの?

 ますます謎すぎない?


 とりあえず最初と同じような魔力を出してみる。


 フン!!


 すると妖精はまたしても「キャッキャ」しながら魔力を食べ始めた。

 それを眺めながら俺はざっと本で読んだことがある妖精の項目を思い出す。


 確か<世界樹>に住んでいて、彼らを見るには魔力に長けた者でしかできない。

 自然から発生した魔力を好んで食べ悪戯が大好き、もし生きている生物から出た魔力を食べるとその相手と契約……する。


 妖精を見るとお腹がポッコリとして幸せそうな顔で俺の肩に座っていた。

 俺の視線に気づいた妖精は頬をスリスリしてくる。


 ま、まぁ、いいか!

 うん! 気にしたら、負けだ!


 俺がうんうん頷いている行動に妖精は可愛らしく頭を傾けた。


「戻ったぞー!」


 俺が庭にいることに気づいた父さんが魔獣を担ぎながら大声を出してアピールをした。

 お尻についた土をはたいて立ち上がり急いで家に戻る。

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