第三十八話
「話を戻すがのお。恐らくじゃが、帝国皇族の血を有している者しか精霊湖に入れず、偽物と本物の違いを試してたんじゃろ」
カーミレイは俺の手をトントンと指で軽く叩いて続けた。
「更にエインセルの滅んだ精霊国王族の血と魔力によって、呼応するように精霊湖がかつての力を戻したんじゃろ」
カーミレイが俺を見る目はどこか呆れていた。
「ま、それだけじゃなく更に本物の勇者の魔力も含んでるなんて馬鹿げた存在じゃな」
「は? 本物?」
ついにアルトリートの理解が壊れて口をあんぐり開いて口をパクパクする。
カーミレイはそれを見て雑草を引き抜き突っ込んだ。
「わかるんですか?」
アルトリートを放置してカーミレイに聞く。
「ん? もちろんじゃ、ま、こやつみたいにボンクラじゃない長命の者ならわかるじゃろ」
そ、そうですか。
うちのパパンは普通の人間だったけど……はっ! パパンも普通じゃなかった⁈
俺の脳が変なところに飛んで行く。
「ゲ、ゲホ、ゲホ! 何しやがる!」
アルトリートが咳をして雑草を飛ばしたおかげか俺の脳も戻ってくる。
な、わけないか。
明らかに人間だし。
「もう何が何やらわからん……本物の勇者ってなんだよ……帝国が勇者の一族じゃないのか? いや! もういい。今の俺に説明しないでくれ」
俺が説明を加えようと口を開くが、その前にアルトリートが片手で手を覆いながらもう片手を俺にかざした。
「さっき言った通りエインセルがどういう生まれでも俺はついていくぞ」
本当いい人だな。アルトリートさん
「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします、アルトリートさん」
「さん付けしなくていいぞ、エインセル」
アルトリートが手を差し出してくる。
「はい――アルトリート」
俺はギュっと握り返す。アルトリートはニカッと笑った。
それ見て口を御猪口になっていたカーミレイが俺の裾を引っ張る。
「妾にも握手せい、エインセル」
カーミレイがおずおずと手を差し出してくる。
「よろしくお願いします、カーミレイさん」
「むぅ。しょうがないからお主だけ特別にさん付けせずにしなくてもよいぞ」
「はい、カーミレイ」
カーミレイは頬を少し赤らめながらプイっと向けた。
「俺は?」
アルトリートがカーミレイに手を差し出すが宙を漂う。カーミレイは不満そうな顔をして「パチンッ」と叩いた。
「これでよいじゃろ、召使い」
「くく、あぁ。よろしくなカーミレイ」
「お主は様付けしろ、クソ人間!」
カーミレイは頬を更に赤らめながらゲシゲシとアルトリートの足を足蹴りにする。剣が少しガタガタ揺れたので軽く撫でると大人しくなった。
無駄にこそばゆい雰囲気が漂っていた中、アルトリートが声を発する。
「それはそうとして、どうする? 俺も話を齧った程度しか知らないけど、皇帝の血筋があるやつなら精霊湖へ入ると何かを授けられるらしいが」
そうなの? なら入るっしかないっしょ!
賢者の経験値上げのために!
「そうですね、入ってみます。万が一何かあったら私のことは気にせず、旅をしてください」
「なーに言ってんだ。その時は助けるに決まってんだろ」
アルトリートはゴツゴツした手のひらを俺の頭に置いた。
「……ありがとうございます」
「ふん。お主みたいな面白いやつ逃すわけなかろう」
カーミレイも俺の腕をポンと叩いた。
「では行ってきます」
「おう」
「待っておるぞ」
二人の声を聞いて俺は湖に入っていく。湖は俺を歓迎するように綺麗な魔力が大量に俺を包み込んだかと思うと意識が飛んだ。
と思いきや洗濯機に入れられたかのようにグルグル目を回す。
ぐわぁぁ‼︎
な、何⁉︎ やっぱり罠だった⁈




