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第三十五話

「おぉ⁈ 召使い‼︎ あれは何じゃ?」


 アルトリートがげっそりした顔でカーミレイに答える。


「俺は召使いじゃないって何度言えば……」

「しつこいやつじゃなあ。いい加減、自分は召使いのゴミムシだって認めたらどうじゃ?」

「……エ、エインセル!! エインセルはどう思う!!」


 涙目のアルトリートが俺に懇願するように聞いてきた。


 え⁉︎

 ど、どうって別に……


「ふん‼︎ それ見たことか。エインセルは妾の味方のようじゃな‼︎ ふふん」


 グラムより年上のロリバ……げふんげふん。


 カーミレイが平べったい胸を張って答えた。


「なにー⁉︎ どう見たってこの瞳は俺に同情してるってのがわからないってのか⁉︎ 澄んで一変の曇りもない瞳を‼︎」

「なんじゃと⁉︎ 下僕の分際で‼︎ エインセルの魔力をよーく見てみるんじゃな! この全く微塵とも動かない魔力を‼︎ どう見ても妾の味方じゃ‼︎」


 いえ、どっちの味方でもありませんが……てか、何も言ってませんけど


『ふん。相棒はワレだけの味方だっていうのに、ヤレヤレ……』

「むっ?」

『ハッ!』

「むぅ……?」


 カーミレイが一瞬、瞳を光らせて俺の周りをクンクン鼻を立てたがすぐにやめた。そしてゆっくりアルトリートと顔を見合わせ、大きなため息をする。


「「全くわからん」のお」

「その顔と魔力どうなってるんじゃ?」


 カーミレイは精一杯背伸びして俺のほっぺたをちっちゃな手でモミモミする。

 俺も知りたいです、本当に


「母も……同じようでしたので、エルフはこういうものでは?」

「ふーむ。確かに古今のエルフは魔力で意思疎通していたが、これほどだったかのお?」


 カーミレイは意味ありげに小声で呟きながら俺から離れる。


「ん? なんか言ったか?」

「うるさい、召使いじゃのお。少しは口を閉じて仕事ができんのか?」


 アルトリートは聞こえなかったようで、聞き直したら馬鹿にされた。


 仲良しかよ


 俺たちはカーミレイを加えて辺境伯を目指していた。なぜかって? 理由があった、それはとてもとても長い理由が……是非、回想を見てほしい。




「ふーん。なるほどのお、とりあえず妾は美味しい物が食べたいのお。今も変わらないじゃろ? 帝国に向かえ」

「なっ、お前が決めるな! エ、エインセルどうする⁈」

「私は……」

「エインセルはどっちでもいいそうだから決まりじゃ!」



 終わり!

 長い理由ってのは嘘だ!

 というか森に帰りたい! 帰らせて!


 俺の言葉は黙殺され、なぜかゴーストタウンにポツンとあった二頭の馬と馬車があったので、それに乗り辺境伯へ向かっていた。

 偶然にも地図があったおかげで、今度こそ迷うことなく行けることにアルトリートはほっとして、行きたくない俺は泣き崩れそうだった。




 ◆◇



「私たちの邪魔をするなら、私たちも邪魔をしてやろうではないか。諸君‼︎」

「おっしゃる通りです、侯爵様‼︎」

「私たちもそう思います‼︎」


 カイゼル髭を生やした男性が嬉しそうに言うと、同調するかのように周りにいた貴族たちも声をあげる。


「所詮は亜人、精霊湖に行かせてそのまま死んでもらおうか‼︎ ハーハッハハハ」

「え……」


 カイゼル髭の男性が豪快に笑っていると一人の貴族が言い淀む。

 それに目ざとく気ぢ田カイゼル髭は怪訝な表情をして顔をそいつに向けた。


「どうした? いきなり驚いたような顔をして」

「あ、あの……差し出がましいと思いますが……あの憎き辺境伯が亜人を皇族の一員だと言っている以上……」

「それがどうした?」

「いえ……その……曲がりなくとも皇帝の血筋を引いてあるのであれば……」

「なんだ? さっきから遠回しに、とっとと言え」

「その……血筋以外の偽物が精霊湖に入れば即死しますが、認められているってことは亜人でも問題なく入れてしまうかと……」

「な、なぬぅ⁉︎ おい‼︎ 誰か‼︎」


 今更気付いたカイゼル髭は顔から目玉を溢れんほど開けて大声で叫ぶ。


「失礼いたします! 閣下、どうなさいましたか!」


 カイゼル髭の声に外から帝国騎士が数人慌てて入ってくる。


「亜人たちの動向はどうなっておる!」

「ハッ! すでに侯爵様の指示通り、馬車と地図を用意して精霊湖に向かわせるように画策中であります!」

「な、なにぃぃ‼︎ 早くそれを中止させろ‼︎」

「は、はぁ……中止でありますか? すでに亜人共は辺境伯への道から精霊湖に向かって大分たっておりますが……」

「な、なんだとー⁉︎ 早く止めろぉぉ‼︎」

 侯爵と呼ばれたカイゼル髭の声が屋敷中に響いた。




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