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第二十九話:聖騎士アルトリート・レンツ視点

 小さな小窓から日の光が差し始め目を開ける。


「くそ……全く休めなかった。あの神父一体何もんだ……?」


 神父とやりとりしたことが頭の中でぐるぐる考えてしまうもんだから、仮眠すらまともにできなかった。

 しかも妙に身体の調子も悪いときたもんだ。


 俺はとっととこんな不気味な場所からおさばらするために部屋から出る。


 愛馬のバカを引き取りに行こうと礼拝堂を通ると、神父が地面に座って何かの作業をしていた。


「おはようございます」

「おはよう」

「もう出るのですか?」

「他にも任務があるからな」

「そうですか」


 神父は作業を止めることもせずに相変わらず手を忙しなく動かしていた。こちらに背を向けていて何をしているのかは見えない。


「異端審問官を実際に見たことありますか?」


 通り際に唐突に質問をされた。


「ないな。むしろ、見たことがあるやつの方が少ないだろう」


 俺に質問したくせに神父は返答せずに手を止めた。訝しんでいる俺を他所に神父はそれを肩に担いだ。


「今から狩りにでも出るのか? 神父さん」


 それは今までに見たこともないほど凶悪な形をした――メイスだった。


「狩り、狩り――そうですね。狩りになるんですかね」


 俺は汗ばんだ手で剣の握りを掴む。


「そうそう、話が変わってしまいますが。昨日、あなたがおっしゃっていた堕騎士でしたっけ? そんな呼び名があるんですね。昨夜、あなたが部屋から出ていった後に――かなり考え込んでしまい、本日の今朝方、ようやく理解できました」

「何がだ?」

「あなたがおっしゃった堕騎士というのは教会から追放されたり逃亡した者たちでしょう? 今となっては聖地の方達がどうして名を変えたかわかりませんが、聖痕の上に二本線の魔術印を封された者たちは、堕騎士なんて不名誉な名ではないんですよ」


 神父はまるで出来の悪い生徒を相手にしているかのように首を振った。


「堕ちた騎士なんて本当――酷い言葉ですね。私たちは聖地から任命された<審問騎士>。背信者や逃亡を図った愚か者、不名誉な行いをした者、亜人に加担した者らを殺処分する――それが私たち異端審問官が務める騎士です」


 神父は目を細めて俺を笑う。


「それが俺と何と関係するんだ?」

「審問騎士になるには聖痕の上に魔術印で封印する必要があるんですよ。でなければ同胞殺しになってしまいますからね。堕騎士さん」


 堕騎士と言われた瞬間、俺の横っ腹にドデカいメイスがめり込んでいた。


「ぐああ‼︎」


 なんとか剣の鞘で受け止めはしたが、想像以上の膂力に礼拝堂の椅子をいくつも壊しながら転がる。


「おや? おやおや?」


 神父はメイスを顔に近づけ臭いを嗅いだ。


「やはりダークエルフ以外の畜生の臭いもしますね。ほら、べっとりしていますよ? 臭い臭い」


 脂汗をかきながら立ち上がると神父の顔は無表情になり、ゆっくりと歩いてくる。


「すでに聖地ではあなたは背信者として報告済みです。わかるでしょう? すでに聖騎士の力がないことに」

「クソが……化け物め」

「醜い化け物はあなたでしょう? 聖騎士になる際に教えられませんでしたか? 亜人は神の名の下に殺す義務があると。どうして血の月の亜人を殺さなかったんですか? どうしてそれ以外にもいた亜人を言わなかったんですか? もしかして――亜人ごとき畜生にでも絆されましたか?」


 神父はぶつぶつ言いながら頭を掻き毟る。

 俺はその間に魔法を唱えたが、神父はそれ以上の速度で俺の腹を蹴り飛ばした。


「背信者が――愚か者がッッ‼︎ 亜人に情でも湧いたかッッ‼︎」


 俺はそのまま教会の壁を突き破り外まで飛んでいく。


「身体能力ではなく自分に攻撃魔法をぶつけたのか――無駄に悪知恵が働く。簡単に逃げ仰ると思うなよ。汚物がッッ」


 俺は腹を抑えながら小走りで教会から離れる。


「クソッタレ……俺の腹を二回も攻撃しやがって。俺の腹に何の恨みがあんだ? 次、会ったら覚えとけよ……その少ない髪の毛、全部引きちぎってやるからな」


 腹を抑えつつ俺は丘を駆け下りながら指笛を吹く。瞬間、後方からいくつもの火魔法が飛んできた。


「ぐっ‼︎」


 なんとか横に避けたが左腕の一部に当たった。


「今ので位置まで予測するのかよ……クソ神父め」


 幸い防具をつけている場所だったが、かすっただけで左腕の籠手がおしゃかになっていた。そのせいで皮膚にくっついてしまい、俺は涙目になりながら籠手を剥ぎ取って投げ捨てる。


「ぶるる‼︎」


 衣服を破って簡単な治療をしていると愛馬の声が聞こえた。そっちを見ると猛烈な速度で泡を吹きながら走っていた。

 その後ろに常人じゃない速さで追っている神父がいた。


「本当に人間かよ? ふざけんなよ、なんで先回りして馬を追いかけてんだよ……」


 落ちていた石に魔法をかけ神父に投擲した。神父は疾走しながらメイスで弾くと石から閃光が放たれた。

 その隙をついて愛馬へ飛び乗り腹を強く蹴っ飛ばした。






「あん?」

「こんにちは」


 亜人の坊主が俺を無表情の顔のまま挨拶をした。


「あ、あぁ。こんにちは? いや、違う。どうしてこんなところにいるんだ? てっきり森に帰っていると思ったがまだ旅を続けていたのか?」


 相変わらずこいつも神父同様不気味なやつだな。


 表情筋死んでんのか?

 もう少し顔を動かせよ……


「ま、まぁ。別にとやかく言うつもりは俺も毛頭ないがな。とりあえず一緒に戦った縁もあるし、同行しても構わないか?」


 亜人の坊主は何かを考えるそぶりをする。


「私は構いませんが……亜人と一緒にいたらあまり外聞もよろしくないのでは?」

「い、いろいろあってな。大丈夫だ、うん」


 以前なら亜人相手とまともに喋ることもなかったのに、堕騎士になってからは嫌悪感が消えていた。それに疑問を覚えるが今はとにかくクソ神父から離れたい一心から俺は亜人の坊主を急かして森を進む。


 というかこいつ小汚くなってないか?

 いや、俺も人のこと言えないが……

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